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天才たちのためのテンプレ作戦  作者: うちよう
テンプレ作戦① 仲間を増やそう
18/20

18 最大のやらかし

 アイラにもアルガトロフの素材回収を手伝わせ、無事素材回収を終えた俺たちは地上層へ向けて歩き出していた。

 歩き始めてから一体どのくらいの時間が経過しただろうか?

 洞窟の、しかも陽光の当たらない最深部へ来ているからどのくらい時間が経過したかまるで分からない。

 いや、それよりも問題視すべき点がそこにはあった。


 「メイジ、まだ地上に着かないの?」

 「んー、もう少しだと思うんだけど……」


 かれこれ三十分ぐらいは歩き続けている。

 それでも尚、明かりらしい明かりは見えてこない。


 「よほど、深いところまで潜ったんだな」

 「私が眠っていたところで、大体二階家屋二十五個分くらいです!」

 「つまり、五十階分……」


 そのうちの二十五階分は登っただろうけど、あと半分あると考えただけで気持ち的に負けそうになる。

 ゆっくり登れば登るほど、肉体的にも精神的にも消費が激しい。

 フランの氷で滑って降りた時みたいに、さっさと登り切ってしまう手段があればいいんだが……。


 「アルガトロフ戦の時の「身体強化」で、メイジが皆を抱えて登って行くのはどう?」

 「お前、楽したいだけだろ……。まあ、別にいいんだけどさ」


 二人を背負って一気に駆け登るとなれば、アルガトロフ戦で使った「生霊増強」からの「身体強化」を使うしかないだろう。

 だけど、誰かを背負って駆け登るには少々空間が狭すぎる。

 飛ぶようにして駆け登っていくのだから、全体的にあと数メートルぐらい広くして欲しい。


 「可能ならでいいんだけど、フランかアイラの力で、少しだけこの空間を広くできないか?」

 「私の氷じゃ、壁を削れない」

 「だよな、アイラの方はどうだ?」

 「ふふ~ん! その程度なら容易いことですよ!」


 腰に手をやり、自慢げに胸を張るアイラ。

 することが全て子供すぎて〝戦神之天才(ミカエル)〟だということをうっかり忘れてしまいそうだ。


 「〝戦神之天才(ミカエル)〟より、「聖炎」!」


 前方に手を翳しながら、技の名を高らかと叫ぶ。

 すると、アイラの手の平から光の輪が突如出現し、その円心から深紅色の光がぼんやりと浮かび上がる。

 そして次の瞬間——————


 ボゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!


 光の輪の円心から高密に圧縮された火炎が、辺りの壁を搔っ攫うようにして放射された。

 とにかく、衝撃波が尋常じゃない。

 俺は先頭に立つアイラに背を向けながら、フランを衝撃波から全力で守る。

 「生霊増強」から「身体強化」していなかったら、奈落の底へと吹き飛ばされていただろう。

 次第に火炎の線が短くなっていき、完全に見えなくなったところで光の輪が空気と同化するようにして消えていく。

 そして、アイラはその場でくるりと立ち回って俺たちに一言。


 「いかがでしたか! お二人のお役に十分立てましたよね!?」

 「あ、あぁ、十分すぎるぐらいだ……」


 アイラの後ろには、縦横二人以上並べるほどの巨大な穴。

 少し削れば良かったのに、まさかここまで大きな穴を空けて見せるとは……。

 規格外の少女に少しだけ引いた俺であった。


 「もっと、もっと褒めてくれてもいいんですよ~?」

 「いや、とりあえずそれは遠慮しておくよ」

 「少し褒めるだけなのに遠慮とか必要なんですか!」

 「フラン、ちょっと失礼するぞ」

 「無視!」


 俺はフランを抱え上げて、「生霊増強」からの「身体強化」で活かせるポテンシャルを最大限に引き出す。

 あとは、これで力任せに駆け登って行くだけだ。


 「私は? 私はフラン様みたいにお姫様抱っこしてくれないんですか?」

 「これだけ広かったら翼を使って飛んでこれるだろ?」

 「雑! この短時間で私の扱い雑になってませんか!?」

 「その短時間でお前のことを過大評価してるんだ。そう、アイラはできる子だ」

 「私だけ仲間外れみたいな感じは嫌です! みんな仲良くがいいです!」


 頬を膨らませて拗ねるようにそっぽを向くアイラ。

 これ以上駄々を捏ねられると少々面倒だ。

 俺が取るべき選択肢は、一つしかない。


 「……分かった、アイラは俺の腰を掴んでろ。それがつれてく条件だ」

 「は~い!」


 元気の良い返事を一つしてから、アイラが俺の背後に急いで回ってくる。

 随分と聞き分けが良すぎて、逆に変な事されないか不安になる。


 「それでは、失礼して……」


 アイラが俺の腰にゆっくりと手を添え、これで地上層へ向けての準備は完全に整った。

 それではさっそく向かうとしよう。と、思った次の瞬間——————


 「えいっ!」


 可愛らしい声と共に、腰に置いていたアイラの手が俺の胸元で交差する。

 そう、今まさにアイラに抱きしめられている状態だ。

 足に込めた力が力んでしまい、気が付いた頃にはすでに地上層へ向けて出発していた。


 「腰を掴むって約束はどうした!?」


 凄まじいスピードで駆け登りながら、背後にいる約束破りのアイラに問いかける。


 「これでみんな仲良しです!」

 「いや、仲良しとかじゃなくて、約束は!?」

 「大丈夫ですよ! 罰として後で私のことも抱いていいですよ!」

 「全然罰になってないんだが!? てか、人の話を聞け!」

 「……メイジ、そうなのね」


 突然不服そうに声を掛けてきたのは、腕の中にいるフランだった。


 「メイジ、楽しそうね」

 「え、いきなりどうした?」

 「アイラに抱かれて興奮して、メイジってロリコンさんだったのね?」

 「そ、そんなわけないだろ!? ったく、フランは一体何を言ってるんだか……」

 

 一体何がどうしたらそのような発想に至るのかが不思議でしょうがない。

 いや、もしかしたらこの世界では幼い子と楽しく話をするとロリコン認定されてしまうのかもしれない。

 だとしたら、アイラとの距離間を見つめ直す必要がありそうだ。


 「やっぱり、ロリコンなのね」

 「いや、なんでそうなるのかが皆目見当もつかないんだが……」

 「だって、さっきからずっとアイラに抱きつかれて興奮してる。私の胸はどうでもいいのね」

 「いや、なぜそこでフランの胸が……」


 そう言いかけたところで、フランが言いたいことがようやく理解できた。

 左手にあるマシュマロのような柔らかい感触。

 抱き上げた際、フランの腕を掴んでいたと思っていたのだが、俺の手は見事に彼女の脇をすり抜けて片方の果実をしっかりと握りしめていたのである。

 要するに、フランは「実際に脇の間からがっちり握る私の胸より、幼女であるアイラに抱きつかれる方が良いの?」と言いたかったわけで——————


 「ご、ごめんっ……! ほんっとうにごめん! すぐどけるから!」


 そう言って、俺は急停止しようと足でブレーキを掛ける。

 それから十秒も経たないうちに俺たちは完全に立ち止まり、そして一番の被害者であるフランをそっと地面に降ろしてあげた。

 ちなみに、止まってからも一向に離れようとしないアイラは顔を押して無理やり離れさせた。


 「酷い! 女の子になんてことするんですか!」

 「……」

 「そうよ、女の子になんてことするのよ」

 「あ、あの、それは……」


 触れた胸の感触が、まだ左手に残っている。

 俺は、本当に罪に問われてもおかしくないことをしてしまったのだ。

 ここは、誠心誠意謝罪しよう……。

 そして俺は膝を折って頭を深々と下げた。 


 「この度は、私の不注意で傷つけてしまい、誠に申し訳ございませんでした……」

 「うむ、苦しゅうない!」

 「……」

 「メイジ、あなたは大罪を犯したわ」

 「はい、仰る通りでございます」

 「私のこと無視しないでください!」


 プンプンと怒った様子で顔を近づけてくるが、今はフランの方を優先すべきだ。


 「……それで、俺はどのようにして罪を償えばよろしいでしょうか?」

 「無視は良くないです! 無視だけは本当に良くないですよ!」

 「……そうね、特に罪を償う必要はないわ。ただ一つだけ答えて欲しい——————」


 そう言って、フランは真剣な眼差しを俺に向けながら言葉を綴った。


 「——————私の胸を触って、興奮した?」

 「……ふぇ?」


 思いもよらぬ質問に、口から変な声が漏れた。

 「胸を触って興奮した?」って、触った本人に直接聞くか普通!

 しかも、質問が質問なだけに非常に回答に困る!

 これも加害者の責務というやつなのだろうか……なら、素直に答えるしかない。

 俺は顔を俯かせてフランの回答に答えることにした。


 「……えっと、その、こ、興奮、しました……」

 「……ふ〜ん?」


 もう、フランの顔をまともに見ることができない。

 それどころか、恥ずかしさでこのまま消えてなくなりたい……。


 「へ、変態! 今のメイジ様は変態の化身ですよ! まさか、私にも何かするつもりですか!?」

 「いや、絶対にしないから安心しろ」

 「即答は即答で、なんか腹立ちます!」

 「フラン様、勝手に興奮してすみませんでした……」

 「私の話を聞いてください!」


 額を地面に擦り付けて全身を使って誠意を示す。

 フランの返答にビクビクしながら待機していると、頭の先で足音が遠ざかっていくのが分かった。

 これは、終わった……そう確信したのだが——————


 「——————分かったわ、もう十分よ」

 「……え? いや、十分ってどういう……」

 「そのままの意味よ」


 困惑しながら顔を上げた俺に、フランは振り向き様に言葉を放つ。


 「許してあげるってことよ」


 そう言うフランの表情がどこか嬉しそうだったのは、俺の気のせいかもしれない。




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