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天才たちのためのテンプレ作戦  作者: うちよう
テンプレ作戦① 仲間を増やそう
15/20

15 アマノサキ洞窟の主

 「アマノサキ洞窟」に向けて「ガパゴス王国」を旅立ってから約一時間が経過した頃、俺とフランは一本の大きな木の前に辿り着いていた。

 恐らく、ジューンが言っていた大木で間違いないだろう。

 周りのどの木よりも根強く真っ直ぐに伸びる大木はどこか異質な存在感を放っている。

 「生霊力(ライフ・コア)」でも宿っているのだろうか?

 大木の周りにいるだけで、身体の奥底から癒されていくのが良く伝わってきた。


 「確か、ここを左に曲がって数キロメートル先だったよな?」

 「話が本当なら、そうね」

 「おいおい、ジューンさんが嘘吐いてるとでも言いたいのか?」

 「そうじゃない、もしかしたら右かもしれない可能性だってあるって言いたいだけ」

 「……不安を仰ぐようなことを言うなよ」

 「事実を言ったまでよ」


 多分、「ガパゴス王国」のギルドに加入しているジューンの案内は正しいと思う。

 少なくても、方向音痴のフランの言う事よりかは信憑性があるだろう。

 不安を仰ぐようなフランの言葉を無視して、俺とフランは大木から左に向かって再び歩き始める。


 本当なら、「アマノサキ洞窟」へ向かう道中にテンペストホウオウの装備に備わった「鳳凰の旋風」という能力を試しに使ってみたかったのだが、フランの一言で思い直すことにした。

 何でも、一度発動させたら三時間は効果を持続し続けるらしいのだが、その後は一時間ほど使えなくなるとのこと。

 つまり、今使えばアルガトロフと戦ってる最中に効力が一度失われてしまうという計算になるのである。

 そのような結末は、俺の望むところではない。


 「とはいっても、ぶっつけ本番ってのもいかがなものか……」

 「最善の手を尽くすのは基本中の基本よ」

 「おう、だから使ってないだろ?」

 「間違っても、使っちゃダメよ?」

 「……俺って、そんな信用ないか?」


 フランから信用を無くすようなことをした覚えはないのだが、どうしてここまで信用されていないのか?

 不平に思いながらも歩みを続けること三十分、ついに「アマノサキ洞窟」らしき洞窟に辿り着いた。

 入り口からは、形容し難い殺気に満ちた念がヒシヒシと伝わってくる。

 この得体の知れない殺気が、これまでの異様な状況を全て物語っているようだ。


 「ここへ来るまで、魔物に一匹も遭遇しなかったのはここに住み着くアルガトロフのせいで皆逃げてしまった、というわけか」


 昨日は、サーベルタイガーにニードルベアー、そして天災級モンスターであるテンペストホウオウと魔物に遭遇してばかりだったのにも関わらず、「アマノサキ洞窟」へ来るまでの道のりでは魔物と一匹も遭遇しなかったのである。


 生態の生息地域を変えてしまうほどの化け物……か。

 なるほど、確かに天災級モンスターと恐れられる存在なだけはある。

 天災級モンスターの偉大さに苦笑いをこぼしていると、隣で立っていたフランが袖口を引っ張りながら尋ねてきた。


 「洞窟に入ったら、すぐにアルガトロフと戦うことになるの?」

 「いや、そんなこと俺に聞かれても……。だけど、準備だけは一応しておいてくれ」

 「分かったわ」


 俺は装備の中に隠していた「解炎薬」一つを片手に、警戒した面持ちのフランと共に「アマノサキ洞窟」の中へと潜っていく。

 洞窟の中は酷く暗く、俺の装備とフランの「霊装(アナザーモード)」に灯った僅かな光が身辺を照らしているが、それでも辛うじて周りが見えている状況だった。


 「思ったより、暗いわ」

 「あぁ、買っておくものをちゃんと確認しておくべきだった」


 「白光玉」を売っていた店に、ランプのような商品が置かれていた。

 あのランプさえあれば、こんな真っ暗な道を恐る恐る歩かずに済んだのに、アルガトロフを倒すことしか考えていなかったせいで、洞窟内に潜り込むための必需品を買い忘れてしまったのである。


 まあ、今更あれこれ言っても状況は何一つ変わらない。

 今は、アルガトロフがいるであろう最深部へと向かうだけだ。

 この洞窟は真っ直ぐと続いているらしく、迷路のような構造になっていないのが不幸中の幸いだった。


 「にしても、最深部まで一体どのくらいの距離があるんだ?」


 傾斜が緩やかな下り坂になっていて確実に最深部へと向かっているはずなのだが、先が全く見えない。

 どのくらいの距離を下れば最深部に辿り着くことができるのだろうか?

 そんなことを考えながら下り続けていると、後ろから肩を叩かれた。


 「ん、どうした?」


 下っていた足を止めて、フランの方に振り返る。


 「良い方法を思いついたわ」

 「うん、嫌な予感しかしないからパスで」

 「むぅ」


 真っ暗で微妙にしか表情を窺えないが、きっとご機嫌斜めになっていらっしゃる。

 このままだと、不機嫌のままアルガトロフと戦うことになりそうなので、とりあえずは良い方法とやらを聞くだけ聞いてあげるとしよう。

 軽くため息を吐いてから、俺はフランに問いかける。


 「それで、良い方法って?」

 「このままだと体力を消耗してしまうわ」

 「おう」

 「だから、体力を使わずに下る必要があるわ」

 「おう」

 「滑って下った方が圧倒的に効率が良い」

 「うん、そうだけど却下で」


 何となくそんな気がしていたが、もちろんダメに決まっている。

 恐らくは、地面に氷を敷いて滑り下っていくつもりだったのだろう。

 だけど、アルガトロフ以外の魔物がいないにしろ、真っ暗な道をブレーキの利きが悪い氷で下るのはあまりにも危険すぎる。

 それに、途中で分岐があった時のことをきちんと考えなければならない。


 「さっさとアルガトロフを倒して「ガパゴス王国」に帰ろうぜ」


 そして俺が再び歩みを始めた、まさにその時だった。


 「聞き分けのない子にはお仕置きよ」


 足元に突然氷の膜が敷かれると同時に、フランが全体重を乗っけるようにして後ろから思い切り抱きついてくる。

 俺は見事に足を滑らせて尻もちをつき、そして———————


 「うおぉぉぉぉぉぉ!?」


 いくら傾斜が緩やかでも、勢いをつけて滑ればかなりのスピードになる。

 このままだとまずいと俺はブレーキを掛けようと壁に手を付けようとした。

 だが、そんな真似をフランが許すはずがない。


 「させないわ」


 そう言うと、フランは壁のみならず天井にまで氷の膜を張らせる。

 四方は氷に包まれ、進行と同時にフランが新たに氷の膜を張り巡らせていく。

 つまり、今の俺は黙って滑り落とされていくしかなかった。


 「ちょ、ちょちょちょっと! 前、見えないからマジで怖いんだけど!?」

 「怖いと思うから怖いのよ。大丈夫、死にはしないから」

 「いや、このスピードで壁にぶつかったら絶対に大怪我するから!」

 「そしたら「回復薬」使えば問題ない」

 「そんな無駄遣いはしたくねぇよ!」


 「回復薬」はあくまでアルガトロフ戦で使うために買った貴重な備品だ。

 楽をしようと滑り落ちた挙句、壁にぶつかって怪我をしたから「回復薬」を使った、なんてアホらしい理由で絶対に使いたくない。

 しかし、下るスピードが速かったおかげか、間もなくして俺とフランは開けた空間へと放り出される形で到着した。

 恐らく、ここが「アマノサキ洞窟」の最深部——————


 「イタタタ……。戦う前に腰を痛めたとか洒落にならんぞ」


 腰を摩りながらゆっくりと立ち上がる。

 辺りが暗くても、フランの「霊装(アナザーモード)」が彼女の居場所を教えてくれるから何も問題ない。

 そう思って辺りを見渡してみると、俺から少し離れた後ろの方にフランがいることを確認することができた。

 とりあえず、フランと合流しよう。


 そう思って動こうとした矢先、俺の背後からギロッと何かが動く音が聞こえた気がした。

 サーベルタイガーの時とは比べ物にならないプレッシャーが全身を駆け巡る。

 そして、ゆっくりと後ろを振り返ると…………碧眼の瞳に縦長の鋭い瞳孔が一つ。

 危険を察知するよりも先に、身体が勝手に動いていた。

 碧眼の瞳の主から距離を取るように大きく後ろに後退し、そして——————


 「グルァァァァァァァァァ!」


 けたたましい咆哮と共に、地面と壁の亀裂からマグマのような橙色の光液が四方八方に走る。

 辺りが少し明るくなったところで、その正体を拝謁することができた。

 逆立つように生えた巨大な大牙に、黒色の大鱗を纏った十メートルを悠々と超える大きな巨体。

 巨体から生える刺々しい四つの足は大地を深く抉るようにして埋まっていて、碧色の双眼が俺と少し後ろにいるフランをジッと見据えている。


 辺りの状況からして間違いない、こいつが天災級モンスターの——————


 「——————「地獄の覇王」アルガトロフか!」

 「グルァァァァァァァァァ!」


 俺の発した言葉に呼応するように、アルガトロフは勇ましく咆哮した。

 


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