14 暴風鳳凰シリーズ
アイテムを買い揃えている道中、フランから重要な話を聞くことができた。
まずは、このテンペストホウオウの素材が使われている装備についてだ。
何でも、テンペストホウオウは天災級モンスターと呼ばれる化け物。
その素材で作られた防具が、他の防具と異なった性質を持っていたとしてもおかしな話ではない。
物は試しにフランに尋ねてみると、予想通りの結果を得ることができた。
天災級モンスターの素材を使った防具は、アナザー個体が使う「霊装」に近いとのことだ。
「霊装」と同格のの性能とまではいかないけど、防具自体に何か特別な力が宿っているらしい。
確認の仕方は、「生霊力」の確認時と同様に表示されているようで、さっそく確かめてみると———————
生霊力〝統合〟
<<効力>>
「生霊増強」……「生霊力」の大幅な増加。
「生霊吸収」……他の「生霊力」を吸収し、己の「生霊力」を回復。
「身体強化」……全ての身体能力が大幅に増加。
「思念伝達」……該当する人物に思念を送ることができる。
「自動」……「生霊力」を消費して自動行動モードに切り替えることができる。
「再現」……触れた「生霊力」をコピーすることができる。
「破滅の呪縛」……攻撃を無効化した上で、対象の「生霊力」を削ぎ落とす。
「暴風鳳凰のコート」「暴風鳳凰のブーツ」<<セット効果発動中>>
「鳳凰の旋風」……一定の範囲に「生霊力」の付与が可能な暴風を引き起こすことができる。
何やら、とんでもない効力が備わっていた。
この効力は、テンペストホウオウが身に纏っていたあの暴風だろうか?
試してみたい気持ちはあるが、今は人通りの多い街の中である。
犠牲者が出そうな未来は容易に予想がつく。
というか、<<セット効果発動中>>ってまるでゲームみたいな表記だな。
「よし、これで一通りのアイテムは買い揃えられたな」
ジューンたちの案内の元、アルガトロフ戦に向けたアイテムを無事買い揃えることができた。
まずは戦闘の上では欠かせない「回復薬」。
この世界の生命力は「生霊力」と比例しているため、「生霊力」を回復させればどんな傷も一瞬で治せてしまう。
つまり、「回復薬」ほど必要不可欠なアイテムはこの世界にはないわけだ。
それから、今回の戦いで必要になるであろう「解炎薬」。
あらかじめ飲んでおけば、火傷のリスクを一時間ほど抑えてくれる。
万能薬である「回復薬」の使用を最小限に抑えるためには「解炎薬」の存在は欠かせないだろう。
そして最後に、「回復薬」と「解炎薬」のサポートアイテムとして「白光玉」。
敵の目くらましを目的としたアイテムだ。
備蓄として、「回復薬」二十個、「解炎薬」十個、「白光玉」五個を購入し、「回復薬」を俺とフランでそれぞれ十個ずつ、「解炎薬」は全て俺が持ち、「白光玉」はフランだけが持つようにした。
何でも、フランの「霊装」には「状態異常無効」が備わっているようで、「解炎薬」を使用しなくても火傷を負うリスクがないとのこと。
装備に汎用性の高い性能が備わっていて羨ましい限りである。
ちなみに「白光玉」をフランに持たせたのは、あくまで戦う俺を遠くからサポートするためだ。
「いいか? 俺の身が危ないと思ったらすぐに「白光玉」を投げてくれよ?」
「問題ないわ、私に任せて」
「自信に満ちたフランを見てると不安になるのはなぜだろう……」
そんなやり取りをしている間にも、俺たちは国外へと繋がる大門の前に到着した。
ジューンの話だと、大門を抜けから五キロメートルぐらい先に一本の大きな木があるから、そこを左に曲がった何キロメートルか先に「アマノサキ洞窟」があるらしい。
道のりが複雑じゃなくて本当に助かる。
「俺たちがサポートできるのはここまでだな」
「はい、アイテムもこんなに買って頂きありがとうございます」
「別に大したことしてねぇよ。それより、身の危険を感じたらすぐに逃げるんだぞ?」
「はい、分かってます」
「謝礼とは別に、帰ってきたら一緒に飯食おうぜ!」
「あ、それいいね! フランさんもいいでしょ?」
何だか、俺は一緒に食べることがすでに決定してるみたいな言い方だな……。
まあ、断る理由もないし、別にいいんだけど。
「みんなと、ご飯……」
そう呟くフランは、目を真ん丸と開いて今までに見たことがない明るい表情を浮かべていた。
これはもう、確認を取るまでもないだろう。
「それじゃあ、俺たちが無事に依頼から帰ってきたら一緒に食事でもしましょうか」
「おいおい、死亡フラグみたいなこと言ってんじゃねぇよ~! 帰ってこなかったら承知しねぇからな!」
俺の肩に腕を回して、仲睦まじく絡んでくるジューン。
それを隣で見ていたフランがゆっくりと唇を開く。
「大丈夫よ、私がメイジを守るから」
「いや、俺がフランを守るんだろ?」
フランとアルガトロフの相性は最悪なのだから、彼女はどう考えても守られる方だ。
「……私もメイジを守りたいわ」
「いや、相性的に考えてだな……」
俺の考えの何が不服なのか、フランはぷくーっと頬を膨らませている。
「……そっか、ならこういうのはどうだ?」
そこで俺は、フランにある一つの提案を持ち掛けた。
「俺がフランを守って、フランは俺を守る。足りない部分は互いに補う。それならいいだろ?」
協力し合ってどんな困難な壁も共に乗り越えていく。
フランは、膨らませていた頬を引っ込めて小さく頷いた。
「……うん、それがいい。それならメイジを死なせずに済む」
「うん、戦いに赴く前にそんな物騒なこと言わないでくれるかな?」
そんな俺とフランのやり取りを隣で見届けていたジューンが、肩に回していた腕を解いて拳を差し出してくる。
「それじゃあ、無事に帰って来いよ!」
「はい、約束します」
ジューンの差し出した拳にぶつけるようにして俺も拳を差し出す。
それから俺たちは、五キロメートル先にあるであろう大木へと足先を向けた。
「それじゃあ、行ってきます」
「おう、頑張れよ!」
「気を付けてな!」
「いってらっしゃ~い!」
三人に背中を見送られながら、俺とフランはアルガトロフを倒しに「アマノサキ洞窟」へと向かい始めた。




