表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

私の本職を知らない彼

作者: AGEHA

「みんな 今日は俺達 A Large World のLIVEに来てくれてありがとう! 最後の曲になっちゃったけど 新曲を贈ります。」


(観客の歓声が沸く)


「この曲は 俺達 A Large World の結成7周年記念として ファンのみんなと 俺達のコラボ企画から生まれた  A Large World 初のバラード曲です。 沢山応募してくれて ほんとに感謝します。 ありがとう! どれもみな 凄く良い詞ばかりで 決めるのも大変だったけど こんなに沢山の良い詞を書いてくれたファンのみんなに 納得してもらえる曲を付けるのも すげー大変だったよ! でも めちゃくちゃ良い曲になったから みんな 気に入ってくれると思います!」


(観客の歓声が沸く)


「それでは聞いてください…

  『All Of A Sudden 』 」


(静かにピアノの音が流れ出す)

(観客達はピアノの音に聞き入る)

(ボーカルが歌い出す)





あの日 人混みの中 視界の端に写り込んできたキミの横顔と

人混みの風に乗ってきたキミの香りは

紛れもなく 俺の中の何かを変えた


初めて感じる 特別な思いが

日ごとに膨らんで

脳に残る姿と香りが

会いたいと思わせる


まだ見たことの無い キミの笑顔

まだ聞いたことの無い キミの声

キミの仕草や キミの癖

その全てを知りたいと 欲で心が震える


どうかお願いだ

キミと 同じ場所に居るために

一瞬でいい 俺に

一瞬でいい 勇気をくれ


人混みの中で見付けたキミが

もし 悲しそうにしていたら きっと俺は 心配になるだろう

もし キミが泣いていたら きっと俺の心は 痛みを感じるだろう


初めて感じる 特別な思いが

日ごとに膨らんで

脳に残る姿と香りが

会いたいと思わせる


どうかお願いだ

キミと 同じ世界を見る為に

一瞬でいい 俺に

一瞬でいい 勇気をくれ


あの日 俺の中の何かを変えたキミ

一瞬でいい 俺に

一瞬でいい 気付いて…


小さな幸せを 一緒に感じる為に

一瞬でいい 俺に

一瞬でいい 勇気をくれ


All Of A Sudden

それは 俺の世界が変わった瞬間


(曲が終わり観客の歓声と拍手が沸く)


とある小さなライブハウスで行われた、ロックバンド A Large World のLIVE。

この日、このライブハウスで歌われた最後の曲『All Of A Sudden 』は、私が作詩した歌。


このコラボ企画を、隆司達に提案したのも私。

隆司達のバンド A Large World が今年、7周年を向かえるという事と他に、私にある思いがあったからだ。


コラボ企画を発表して、しばらくしたある日だった。

隆司が、この詞にしようと思う… と言って、詞を見せてくれた。 その詞を見た時

『えっ!私の!?』と 思わず声に出しかけてしまった!!

凄く驚いた! まさか私の詞を選ぶとは、思いもしなかった!

もちろん私の書いた詞だとは、隆司は知らない。 私だと分からないように、ペンネーム『YUME-KANAE』で応募したからだ。

隆司が、私に詞を見せながら

「この詞 めちゃくちゃ感情移入できるんだよな~ 俺にも同じような経験があるからかな…」

と言った。 私は少し驚いて

「えぇ! 隆司こんな経験した事あったんだ!」

と言うと

「うん、初めて言うけど 美也琵と出会った頃だよ! ここの歌詞『人混みの中 視界の端に写り混んできたキミの横顔と 人混みの風に乗ってきたキミの香りは 紛れもなく 俺の中の 何かを変えた』って所とか『初めて感じる 特別な思いが 日ごとに膨らんで 脳に残る姿と香りが 会いたいと思わせる』って所とか…

あの頃 交差点で美也琵とすれ違う度に 横目で美也琵の事見て 美也琵の香りにドキドキしてたんだよな…

それでさ… 毎回すれ違う瞬間に、心の中で強く『俺に気付けー!!』って 叫んでたんだよね!」

と言って、隆司は豪快に笑い

「あっ! ここもそうだ!『一瞬でいい 俺に 一瞬でいい 気付いて…』ここもあの頃の俺と一緒だな!!  ってか 全体的にリンクするんだよな!!  でもさ… 美也琵はいつも 下を向いたままで 俺の存在に全く気付いてくれなかったけどね! あの日までは!」

と、隆司が言った。


隆司が言う交差点とは、私の家の近くの、ちょっと込み合う交差点の事。

隆司が言う『あの日までは』の、あの日と言うのは

私はいつも、仕事に煮詰まると、交差点の向こうにあるコンビニに行ったり、公園で人間観察したり、まぁ… 気分転換をする為に外に出てたんだけど、隆司の言う通り、私はいつも下を向いて歩いていたみたいで…

ある日、いつものように、交差点を渡っていたら、誰かとぶつかって、その拍子に私は倒れてしまって、その時

「大丈夫? 歩ける?」

と、ギターケースを肩に担いだ隆司が、優しく微笑みながら手を貸してくれて、渡りきるまで付き添ってくれた事があって…

これが私と隆司の出会いで、隆司が言う「あの日」

そして、この事がきっかけで、私達は挨拶を交わすようになり、時々話すようになり、2人で会うようになって、付き合うようになって、私の家で、一緒に暮らすようになったって訳。


私も、私達が出会った交差点で、隆司が私に手を貸してくれて、その手を取って顔を上げた時、優しく笑ってる隆司の顔と香りにドキッとして…

その日から私は、気分転換をする為に出掛けるのではなく、隆司を見る為に、出掛けるようになって、隆司とすれ違ったり、話をする度に、特別な感情を感じてた。

だから、隆司と同じだったんだと思うと、凄く嬉しい!


この『All Of A Sudden 』は、私達の出会いを書いた詞。

だから隆司が、「全体的にリンクする」って言った時、バレちゃうんじゃないかって、ドキドキだった!

でもこの詞は、隆司を知った時の、私の気持ちそのもの…



隆司達は高校2年の時に

ボーカル   山下隆司(やましたりゅうじ) 愛称【隆司】

ベース    小島勇人(こじまはやと) 愛称【勇人】 《A Large World》のリーダー

キーボード  前田興二(まえだこうじ) 愛称【まえこう】

ドラム    小川拓也(おがわたくや) 愛称【拓ちゃん】

の4人で《A Large World》を結成したらしい。

バンド名の由来は、「小さく終わらず、大きな世界へ羽ばたこう」という意味を込めて付けたそうだ。

作詩作曲は、自分達でやっているのだが…  どうやら彼達は、作詞が苦手なようで…

「キミが好きだBaby」とか

「キミを想うと 俺の心は破裂しそうだ」とか…

いつの時代だよ!! と思う詞を書く。

よくこんな詞で、ファンが付いてくるな… と思う事もある。

作曲させたら4人共、最高に良い曲作れるのに! 4人が4人して作詞が苦手って…

バンドとしちゃ 致命傷じゃん!!

このままじゃ、大きな世界に羽ばたくどころか、デビューすら出来ないよ!! と 私は思っていた。


私と出会った頃は、まだストリートミュージシャンで歌っていた彼達だけど、少しずつファンも増えてきて、今では、小さいけど、ライブハウスでLIVEが出来るようにまでなった。

これも全て、ファンのお陰!

なのに!! デビューも出来なかったらファンに申し訳ない!!

だから、この企画がきっかけになって、彼達の詞への世界観が、少しでも変わってくれる事を期待して、ファンと  A Large World  のコラボ企画を提案したって訳。



私はと言うと、本名、成瀬美也琵(なるせみやび) 実は『A・GE・HA』と言う名で、自分で言うのもなんだけど… 結構有名なアイドル達のヒット曲を、何曲か持つ作詞家で、業界では知らない人はいないかもしれない…  それはなぜかと言うと

メディアには一切顔を出さない

プロフィールも一切公表していない

謎に包まれた作詞家 だからだ!

隆司達も A・GE・HA の事は知っているようだ。

でもその A・GE・HA が、まさか自分の彼女だなんて…

知ったら、驚くだろうな…


隆司と出会った頃、一度だけ、A・GE・HA だとは言わなかったけど、作詞家だと話した事はあった。 でも、隆司はどうやら勘違いしたのか、聞き違いをしたのか…  隆司の中では、私の職業は、なぜか、小説家になってしまっている! しかも、売れない小説家に…

だから私は、いつの日か…  A Large World がデビューして、世界に羽ばたいたら、私の職業は作詞家で A・GE・HA なんだということを言おう! と思っていた。

それまでは、売れない小説家のまま、隆司達のバンドを、陰ながらサポートしていこう… と決めている。


A Large World とファンのコラボ企画で、私の詞が選ばれたのは、想定外だったが…  




「美也琵~ コラボ曲出来たよ~ 聞く?」

「ほんとに~!? 聞きたい聞きた~い!」

俺は、出来たてほやほやの曲を聞かせる為、イヤホンを美也琵の耳にはめた。

美也琵は、イヤホンに手を当て、目を瞑り聞いていた。

そんな姿を見ながら俺は

(美也琵… 俺がどうして 『All Of A Sudden 』を選んだのか 知ってる?

これ 美也琵が書いた詞だよね!?   実はさ… 美也琵が俺に 飯作ってくれてる時 開きっぱなしになってたパソコン 見ちゃったんだよね…  美也琵がどんな小説書いてるのか見てみたくてさ…

でも その時はさ  (・・・ん? 何だ? よく分かんない小説の書き方するんだな…) って思っただけだった

だけど ファンから送られてきた沢山の詞の中から 見覚えのある言葉が並んだ詞を見た時 俺があの時見たのは 美也琵が書いてる小説じゃなく これだったんだって 知ったんだよ!

『YUME-KANAE』というペンネームで応募したのは 美也琵だって 俺達にバレたくなかったからだろ?

残念だけど 俺は知ってるよ!

それに あの時は少ししか見れなかった詞を 改めて全部見て すぐ分かったよ!

この詞は 俺達が出会った頃の事だってね… 

嬉しかったよ!

俺はさ… 美也琵が 俺達の為に書いてくれた詞だって思うと すっげーこの詞に曲を付けたくなってさ! それでメンバーに 「この YUME-KANAE って人の この詞にしよう!!」って 半ば強引に決めたんだよ!

この事は 美也琵はもちろん メンバーも知らないし ファンにも言えない 俺だけの秘密!

美也琵との初めてのコラボだからさ  俺 めちゃくちゃ気合い入ったよ! この曲を聞いて 喜んでくれる美也琵の笑顔を思い浮かべながらね!)

と、心で話していたら、目を瞑り、曲を聞いている美也琵の目から、涙が溢れ出した。

曲を聞き終わった美也琵が、イヤホンを外し、俺に言った。

「隆司 凄く良い! ほんとに凄く良いよ!!   こんなに素敵な曲になるなんて…」

俺は感動してくれてる美也琵を抱き締めて

「美也琵 コラボ企画を提案してくれて ほんとにありがとう。  お陰で 良い曲が出来たよ」

と、感謝の気持ちを伝えた。




隆司が出来たてほやほやの曲を聞かせてくれた。

いつも、曲が出来ると聞かせてくれる。

いつもなら、ドキドキしながら聞いているんだけど、今回は違った。

手が震えるほど緊張した。

だって、隆司と私の、初めてのコラボ曲だから!


隆司が私にイヤホンをはめてくれた。

私は目を瞑り、曲が流れるのを待った。


ピアノの音が流れ出し、私の気持ちを優しくしていく…

隆司の少しハスキーな声が、私の心を震わせる…


私が書いたはずの詞は、凄く素敵なMelodyをまとい、すでに私の物では無くなり、私の大好きなバンドグループ A Large World の物に姿を変え、私の耳に降り注ぎ、私の心を支配し、涙を流させた。

私は改めて、隆司達の才能を感じた。


曲を聞き終わった私を、隆司は優しく抱き締めてくれて、

「コラボ企画を提案してくれて ほんとにありがとう お陰で 良い曲が出来たよ」

と言ってくれた。

私は隆司に抱き締められながら

(私こそ! ありがとう  私が書いた詞を こんなに素敵な歌にしてくれて!  私の詞を選んでくれて ほんとにありがとう)

と、心の中で伝えた。



それからしばらくして、ライブハウスで、ファンの前で、このコラボ曲『All Of A Sudden 』を、披露する日を迎えた。




『All Of A Sudden 』が、ファンの前で初披露された日から、口コミが口コミを呼び、隆司達のバンド A Large World は、世間に名を知らす事になった。


それからは、ライブハウスでLIVEをするとなれば、チケットは即完売、会場は毎回 満員御礼!!

そして、『All Of A Sudden 』を歌えば、感動で涙を流すファン! といったような、今までと違う、凄い光景が見られるようになった。

隆司達は、今までもかっこよかったけど、今まで以上にかっこよく、輝いて見えた。

隆司のファンも増えて、私はちょっと嫉妬する事もあるけど、隆司の歌う姿を見て、曲を聞けば、嫉妬の心も消えて、幸せな気持ちに包まれた。



今日のLIVEも満員御礼!

その観客の中に、有名なプロダクション会社Big Cu.Entertainment のスカウトが来ていた。

そして、LIVE終了後、 Big Cu Entertainment と契約して、デビューしないかと言ってきた!

私は、やっとここまで来た! と喜びを噛み締めていたが、隆司達は、子供のようにはしゃいで、全身で喜びを表現していた。


数日後隆司達は、 Big Cu.Entertainment と契約し、デビューする為の準備に入った。


隆司達が、デビューの準備をしている中、私の本職の所に、 Big Cu Entertainment から、隆司達のバンド A Large World のデビュー曲に、詞を提供して欲しいと依頼がきた!

私は喜んで引き受けた。

隆司達の、そして、私の夢でもある A Large World のデビュー!! 

そのデビュー曲に私も携われると思うと、ほんとに嬉しくて、隆司達がスカウトされてはしゃいでいたあの日のように、私もはしゃいでしまった。


期日まで1ヶ月! 私は部屋に隠り、5作の詞を書き下ろした。

この中から隆司達が選び、曲を付けるんだと思うと、作詞家になって、初めて自分が書いた詞が採用されて、世に出た時とは違う

ヒット曲を書いた時とも違う

言葉では言い表せない、何とも言えない気持ちになった!!




数日後、Big Cu Entertainment から連絡が来た。

驚いたことに隆司達は、私が書いた5作の中から選ばず、Big Cu Entertainment の社長に

「A・GE・HA さんに詞を提供してもらえるのは 凄く光栄で有り難いのですが  俺達は 俺達をここまで支えてきてくれたファンのみんなと 俺達のコラボ曲の 『All Of A Sudden』で デビューしたいんです!  お願いします!  『All Of A Sudden』で デビューさせてください!!」

と、頼み込んだそうだ!!


この話を聞いた時、隆司達のファンへの愛と、感謝の気持ちを強く感じた。

そして私も

(そうだよね! 『All Of A Sudden』は ファンの人達の口コミのお陰で 世間に A Large World を知らす事ができた歌だし ファンの人達のお陰で A Large World もここまでこれたんだもんね!  隆司 良い選択だよ!)

と、思った。


そして、慌ただしく準備が進み


   2013年  6月13日

   《A Large World》 は

  『All Of A Sudden』 で

    デビューした。


《A Large World》 結成して7年

彼達の 1つ目の夢が 叶った日





デビューしてから毎日のように、メディアで隆司達の姿を見るようになり、近所のスーパーや、コンビニに行っても、隆司達の歌が流れていて、本当に A Large World はデビューしたんだと、実感させてくれた。


そして、A Large World の歌は、日本だけでなく、世界中の人達に称賛を受け、デビューして1年程で、ビッグアーティストに成長した。


その頃、私の本職の所に、 Big Cu Entertainment から A Large World の、ファーストアルバム製作に、詞を提供して欲しいと話があり、私は、私自身が決めていた事を叶える為に、引き受けた。

発売日は、 A Large World がデビューした日と同じ  6月13日と決定した。



ある日、忙しい合間をぬって、久々に A Large World のメンバー全員が家にやって来た。


「美也琵~ 居る~?」

と、隆司が入ってきた

「隆司! お帰り~!」

と、私は隆司を出迎えた

「ただいま~ みんな来たよ!」

と、隆司は出迎えた私を見ながら、親指を立てて、クイッと自分の後ろを指した

「美也琵ちゃ~ん 久しぶり~ お邪魔しま~す」

と言って、メンバー達が入ってきた

「わぁー みんな~ お帰り~! 久しぶり~ そして! ファーストアルバム決定 おめでとう~~!!」

と、私はメンバー達に抱きついた

「ありがと~~!!」

と、メンバー達も私を抱き締めてくれて、その場で全員で肩を組み、輪になって、ワーワー言って、跳ねながら回った。


久しぶりにみんなと食事しながら、デビューまでの話を聞き、デビューしてからの気持ちや、これからの事を話した。

そんな中、メンバーの1人、ドラムの拓ちゃんが、私に質問してきた!

「ねぇねぇ美也琵ちゃん… 聞いていい? 俺ずっと不思議に思ってる事があるんとけど… 美也琵ちゃんの職業って 小説家だよね? 隆司が言うには 売れない小説家だって…  でもさ… 成瀬美也琵って名前の小説家いないんだけど…  俺ね 美也琵ちゃんの小説を読んでみたくて 探してみたんだけど どこにもなくてさ… ペンネームかなんかで出してるの? どんな小説書いてるの? 恋愛? 推理?  SF?   それに 売れない小説家のわりには いいとこ住んでるよね?  ひょっとして どっかの令嬢? ってか ほんとに売れない小説家?」

拓ちゃんはほんとに色々疑問に思ってたようで、質問がマシンガンの弾のように飛んできた!!

私は、その質問攻めに、ポカンと口を開けたまま拓ちゃんを見ていたら

「バカだな~! 全く売れてなかったら こんな所に住めないだろがよ! 分かりきった事聞くんじゃねーよ!」

と隆司が言った。 すると拓ちゃんが

「だって不思議じゃん! ってか 隆司に聞いても (俺 よく知らない)って言うしさ!! 本人に聞くしかないじゃんよ! そもそも何で自分の彼女の職業をちゃんと分かってないんだよ 隆司は!!」

と言い返した。 すると、他のメンバー達も うんうん と頷きながら

「そうだよ! 隆司何で美也琵ちゃんの職業知らないんだよ!」

と、今度は隆司にマシンガンが向けられた! すると

「美也琵の職業に興味が無い訳じゃないよ! ただ 俺は美也琵がどんな職業でも 俺の側に居てくれればそれでいいの!!  ってかお前ら! 美也琵が煮詰まって 書けなくて苦しんでる姿を見たこと無いから そんな事言えるんだよ! あの姿見たら… どんなの書いてるんだ? とか 色々知りたくても聞けなくなるぞ!!」

と言った。  すると

「あの姿って… 想像つかないけど 何か… 分かった気がするから もういいわ…  ごめんね 美也琵ちゃん…」

と、拓ちゃんが言うと

「う、、ん そだな… 何か… ごめん…」

と他のメンバー達も言った。

(隆司のお陰で、答えずに済んだのはいいけど、隆司が言う 私の煮詰まってる姿って…  そんな酷いのかな… 

まぁ、確かに… 普通じゃないとは思うけど…  髪はボサボサだし、着てる服はジャージだし…

メンバー達は 私の煮詰まってる姿を どんな風に想像したんだろ…) と考えると、私は血の気が引いた。

だけど、改めて思っていた。

(隠すつもりは全く無かったんだけど 言うタイミングを逃してから みんなも聞かないし ズルズルときちゃって…  でも 私が決めたその時が来たら ちゃんと話すから) と…



美也琵が、拓ちゃんから質問攻めされてるのを見ながら、俺は思っていた…

(美也琵… 実は俺 美也琵が作詞家だって言った時 ちゃんと聞いてたんだよ!  でもあの時はなぜか これ以上聞いたら 俺達 今の関係にはなってなかったかもしれない…   情けないけど 俺のちっちゃなプライドと ちっちゃな器と 美也琵を失いたくないと思う気持ちが 美也琵を売れない小説家にしてしまったんだ…  ごめんな…  でもさ… 俺 探してみたんだけど 成瀬美也琵って作詞家はいなかった  だから美也琵は 名前を変えて活動してるんだと分かったよ!  何度か聞こうと思ったけど やっぱり聞けなくて…  でも 俺達がデビューした頃からかな…  何となく 美也琵ってひょっとして A·GE·HA なんじゃないかって思うようになったんだ…  もしそうなら やっぱりもう少し 売れない小説家のままでいてくれ! 俺に自信がつくまで  俺が A·GE·HA のパートナーとして A·GE·HA のファンに納得して貰えるアーティストになるまで)と…


 

そして、この日を境に、隆司達は曲作りの為、レコーディングスタジオに罐詰状態!

私も詩を書く為、仕事部屋に、ほぼほぼ罐詰状態!


こうして出来上がったアルバム!

タイトルは『The Dream Chapter』

アップテンポな曲が11曲

バラードが 『All Of A Sudden』 を入れて 2曲の 13曲が収録されている。


そして、このアルバムを引っ提げて、ツアーが決定し、約1年程かけて、ツアーのスケジュールが入っている。


隆司と会えない日が続くけど、嬉しい! ほんとに嬉しい!! 

今のこの気持ちも、書き留めておこう…


隆司と出会ってからの私は、隆司がくれる、沢山の思いや、気持ちを書き留めている。

お陰で前のように煮詰まって、詞が書けなくなる事が、ほとんど無くなっている。

そして私自身もイノベーションし、色んなジャンルに詞を提供できるようになっていた。


後は、隆司達の、そして、私の  夢! 

A Large World が世界に羽ばたいて行くだけだ!!



そしていよいよ

2014年 6月13日  A Large World のファーストアルバム 『Tha Dream Chapter』が発売され、2週間後、ツアーが始まった。


隆司が席を用意するから、LIVEに来て欲しいと言ったけど、私は A Large World のファンとして、自分でチケットを買い、LIVEに参戦したいと言って断った。

全公演には行けないけど、他のファンの人達と一緒に、感動を共有したかったからだ。


約1年程のツアーは全て、 A Large World を支えてくれているファンと、スタッフの人達のお陰で、大成功に終わった。


そして、隆司達は次の「夢」に向けて動き出した。

私もその為に、詞を提供してきた。


そして、 A Large World がデビューしてから3年目

ついに、バンド名の由来通り、大きな世界に羽ばたく、ワールドツアーが決定した!!


その頃私は、隆司達のバンドの専属作詞家と言っても過言では無い程、詞を提供していた為、隆司達が A·GE·HA に会いたいと言い出した。

会って、直接感謝の気持ちを伝えたいと…


私は、隆司達に正体を明かす時が来たと、その申し出を了承し、ワールドツアー前日、 Big Cu Entertainment の応接室で、面会する事になった。


面会当日、隆司はリハーサルの為、朝からツアー初日の会場に行った。

隆司達と私の面会は夜! 私は朝から緊張して、何も手につかなかった…

どうやって話したらいいのか…  

「黙ってて ごめんなさい」と謝罪から入った方がいいのか…

考えても、考えても答えが出ず、家の中をウロウロするばかりで、時間だけが過ぎていった。


約束の時間は夜7時、私は頭の中が真っ白のまま支度をし、タクシーに乗って Big Cu Entertainment に向かった。

タクシーの中で私は冷静になり、正体を明かす事に腹をくくった。

そして、ふと…

(そう言えば 何で隆司は 今日 A·GE·HA と会うって事を 話さなかったんだろう… いつもなら 何でも話してくれてたのに) と思っていた。


タクシーが Big Cu Entertainment に着き、私はエントランスで受付の女性に、7時に面会だと伝えた

すると、受付の女性が、内線で隆司達のマネージャーさんを呼び出し、私はしばらくロビーで待つように言われた。

私はロビーのソファーに腰を掛け、マネージャーさんが来るのを待った。

5分程待っただろうか… 隆司達のマネージャーさんが現れ、ソファーに座っている私を見て

「あれ? 美也琵さん!? どうしたんですか? 隆司と約束ですか?」

と言った。

私は首を横に降り、ソファーから立ち上がり

「マネージャーさん 信じられないかも知れないですが… 実は…   私が A·GE·HA なんです! 今まで黙っててごめんなさい!!」

と、謝罪した。

マネージャーさんは相当驚いたのか、目と口を開き、言葉も出ない感じで、呆然と立っている。  

「あの… マネージャーさん?」

私が声を掛けると

「えっ! 美也琵さんが…  えっ? マジっすか!?」

と、ようやく話した。  私は

「はい…  マジです。  驚きますよね…  まさかですよね…」

と言うと、マネージャーさんは

「確かに驚きましたけど 僕より隆司達の方が もっと驚くでしょうね!!   その時のメンバー達の顔がどんな風になるのか どんなリアクションをするのか 楽しみです!!」

とニヤリと笑い

「じゃあ 行きましょうか」

と言って、エレベーターの方に歩きだした。

私はマネージャーさんの後ろを付いて行った。


エレベーターの中でマネージャーさんが、応接室には Big Cu Entertainment の社長と、隆司達しか居ないから、緊張しなくて大丈夫ですよ! と言ってくれたけど、私はすでに、緊張がピークに達していて、腹をくくったはずなのに、逃げ出したくなっていた…


エレベーターが応接室のある階に着き、マネージャーさんが先に降り

「こっちです」

と言って手で扉を指した。  そして私を見て

「行きますよ!」

と言い、扉をノックした。



コンコン

「宮下です A·GE·HA さんをお連れしました」

すると中から

「どうぞ」

と、社長さんらしき人の声がして、マネージャーさんが扉を開けた。

私は、マネージャーさんの後ろに立ち、マネージャーさんが部屋へ入って行くと同時に一礼をし、一礼をしたまま

「A·GE·HA です」

と言って、顔を上げた。

すると、隆司達は驚いた顔をし、みんなが各々、驚きの声を発した。

私は恐る恐る隆司の表情を見た。  しばらく隆司は、目を見開き、口が少し開いていたが、すぐに、いつもの優しい笑顔を見せてくれた。

その笑顔を見た時、私にもやっと、笑顔が戻った。 そんな中一番驚きを表現していたのは拓ちゃんで

「えっ? えっ? み···  えっ!! 隆司 知ってたの?  えっ! あれっ? みんなも知ってた!?  えっ? 知らなかったの 俺だけ!?」

拓ちゃんは、隆司と私をキョロキョロ見て、また

「えっ!? うそっ!!  えーーーっ!!」

と、本気で驚いていた。

正直、私はその反応が面白くて、吹き出しそうになって、視線を拓ちゃんから外したのだが、外した視線の先にマネージャーさんがいて、マネージャーさんは拓ちゃんのリアクションにニヤニヤと笑い、楽しんでいる様子!   私は笑いを堪えるため、今度は視線を床に向けた。  

そんな様子を、 Big Cu Entertainment の社長さんが見ていて

「なんだ? お前達 知り合いだったのか?」

と聞いた。  その質問に隆司が

「はい 知り合いと言うか… 実は 僕の彼女なんです。」

と答えた。  すると社長さんが

「ほんとか!?  隆司 何でもっと早く言わないんだ!」

と言うと、隆司は

「実は… 僕らも彼女が A·GE·HA さんだと  今 知ったんです!  何となく そうかも… と思ってはいたんですけど…」

と答えた。 すると社長さんが

「そうなのか!!  彼氏にも隠してきたのに A·GE·HA さん よかったんですか?」

と聞いてきた。  私は

「はい  いいんです!  ですが…  やっぱりこれからも メディアに顔を出さず プロフィールも公表せず 今まで通り活動していきたいので ここだけの秘密とゆうことで お願いします。」

と答えた。  社長さんは

「もちろん! 口外しないよ!!」

と言ってくれたので、私は

「よろしくお願いします。」

と、深々と頭を下げた。

それからしばらく、みんなで談話し、解散となった。  私はみんなと談話しながら

(黙ってた事 みんな怒ってないみたい…  よかった) と思っていた。

帰りは、隆司達と一緒に、隆司達の送迎車で家まで送って貰った。

その道中、拓ちゃん以外のメンバーは、私が本当は小説家ではなく、作詞家で、A·GE·HAなんじゃないかと思っていた事を話してくれた。

そして、気持ちがすっきりしたとも言っていた。

私も同じく、やっと気持ちがすっきりしたと思っていた。



次の日


   いよいよワールドツアー初日



   《A Large World》は

    世界へ羽ばたいていった



隆司達の バンド結成当初からの 夢が叶った日




隆司達との面会後、私とメンバー達の関係は、今までと何の変わりもなく、みんなは私を「美也琵ちゃん」と呼んでくれている。

隆司達のマネージャーさんと、社長さんも「美也琵さん」と呼んでくれている。


お陰で私は、今まで通り

メディアには一切顔を出さない

プロフィールも一切公表しない

謎に包まれた作詞家 《A·GE·HA》 で活動できている。



変わったのは 私の本名


   成瀬美也琵 から 山下美也琵


   になった事だけ…



        ー完ー

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ