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魔法石喜譚〜悪役令嬢役の隣でメイド服着て特攻〜  作者: 抹茶
第1章 悪役令嬢役の隣でメイド服着て特攻
9/21

邂逅、特攻、妥協より棚ぼた 4

 食堂は広く、この学院にぴったりの豪華さだった。

 艶やかな色をしたテーブルが等間隔に並び、同じ色の椅子が揃えられている。


 休暇中だから満席とまではいかないが、丁度お昼時だからか中々の人数が食堂に集まっていた。

 生徒達も感じの悪い噂話よりも食事の方が優先なのか、エンジェを見て何か言う人も殆ど居ない。



「ほら、ここの食事は美味しいんですのよ」

 先程までの通りすがりの生徒の態度に腹を立てていた私を宥めるようにエンジェが言う。

 ずっと私だけ怒ってるのもエンジェは困るだろうし、とりあえずは置いておくことにしよう。お昼ご飯の美味しそうな匂いが漂ってきてお腹が空いてきたというのもある。

 コクヨウ先生の所でケーキとかお菓子を食べたけど、甘いものを食べるとしょっぱいものも食べたくなる。

 生理現象(?)というやつだ。あと普通に育ち盛りだから。


 食事はバイキング形式だった。

 椅子の数から見て相当生徒が居そうだし、そっちの方がA定食、B定食って決めるより楽なんだろうな。

 それでもこの量と種類を作るのは大変そうだ。



 私たちはとりあえずそれぞれ好き勝手食べたいものだけを皿に取っていく。

 小さめのハンバーグ、プチトマトのマリネ、チキンライス、スクランブルエッグ、コロッケ。あと野菜少ないなーと思い、野菜ジュースも添えておく。

 うん、完璧。

 2人とも選び終えたのを確認してから、空いていた席で1番日当たりの良さそうな窓際の1番隅っこのテーブルに座った。


「何取った?」「オムレツとパスタと……」と2人で内容を見せ合ったけどエンジェはちゃんとサラダを添えていた。

 えらい。

「あっ苦い草。あげますわ」

 と思ったら私の皿に謎の香草のような青野菜を添えてきた。あんまりえらくない。

 っていうかエンジェの取ってたマッシュポテトにトマトソースがとチーズがたっぷりかかったやつ美味しそうだな、私もとってこようかな。なんて悩んでたらエンジェがスッパリ希望を断ち切ってくる。

「これもう無くなってましたわよ」

 なんでも基本的に人気メニューとかメイン料理以外は一度無くなったらその日はもう出てこないそうだ。

 まぁどれが無くなるか分からないんだから予測して大目に仕入れたり作ったりって面倒だし、仕方ない。

 うーん、悲しい。

 エンジェにちょうだいって言ったけど「美味しいから嫌ですわ、それと交換ならいいですけど」とコロッケを一つ要求されそうになったのでこの取引は不成立だった。


 ちなみに、ルリは私のチキンライスの中のお米を選り好んで食べていた。

 この鳥、なんで自ら共食いエリアに……?と思っていたら「なんだか恐ろしいからお止めなさいな」とエンジェからストップが入った。

 エンジェのくるみパンを分けてもらってルリはご機嫌みたいだ。



「そういや、食堂に来てみたけどなんにも起こらないね」

ぱきっといい音のなるウインナーを噛みしめながら私は尋ねた。

「恐らく起きるのはもう少し後ですわ……といってもそんな気がする、というのと単純に12時になったばかりの頃合いが1番食堂が混むので“あの方“達は避けてくるかと思いまして」

エンジェはパスタをフォークで上手く絡め取りながら答えた。


「まずお腹が空いているのもあったのですが、“あの方”達がここに来る前にアイに渡しておきたいものがあったのですわ」

そう言ってエンジェは着ていたワンピースのポケットから小瓶を取り出した。

「なにこれ?」

「聖水ですわ」

 せいすい、と私が復唱しながら受け取った小瓶を目の前で揺らしてみる。

 小瓶は透明なガラスで大きさは私の親指より少し大きいくらい。そこに満タン、液体が入っている。この色も透明。透き通っていて向こう側の景色が確認できた。

「聖なる水、と書いて聖水。といっても正規の手順を追って作ったものではありませんが」

「え、そうなの。裏ルートのヤバい聖水ってこと?」

 それって聖なるって言えるのかな。

 荒れた町の路地裏でグラサンかけたピアスをばこばこ開けたガラの悪そうな人からエレガントに聖水を買い付けるエンジェの図を想像してしまう。

 なんとなくシュールだ。

「何か変な想像してませんこと?そうじゃなくって、私が独自で作り上げたものですわ」

「ほへぇ、優秀。そんなの作れるんだ」

「作れませんわ」

 スパッとエンジェが言ってのける。

 えっ矛盾するじゃんこのご令嬢。なんなんだ。

 わけわからん、みたいな顔を私がしていたんだろう。エンジェが説明してくれる。

「というより、作れたかどうかは分からないのです。とりあえず必要なものと必要そうなものとなんとなく入れたいものを混ぜた謎の液体を便宜上聖水と呼んでいるのですわ」

「やばいやつじゃん」

「緑色の葉っぱや赤色の果実、虹色に輝く謎のハーブなど混ぜたんですが何故か色が打ち消しあって透明になりましたわ」

「本当にやばいヤツじゃん」

飲んで大丈夫なやつ?


「でもこれは気付け薬と言いますか、正気に戻る為に不可欠なのですわ」

「正気?」

「これをね」

私の質問は流してエンジェは言う。

「うん」

とりあえず私も相槌を打つ。

「私の様子がおかしくなったら適当に此処から連れ出して私に飲ませてください。私は嫌がるかと思いますが頑張って」

「えっハードル高くない?」

嫌がって抵抗する人に飲ませるの難しくない?

「頑張って、このお肉一切れ上げますわよ」

「ええーっ……こっちのジャガイモも頂戴。ここがいい」

「あっいっぱいチーズかかってるところを!……まぁいいですわ」

やったーこれ美味しいね。



私たちの食事が終わり、ひと息ついた、そんな時。


悲鳴が聞こえた。

異世界なのにトマトとか何故か存在してる理由かけたらいずれ書きたいです

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