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魔法石喜譚〜悪役令嬢役の隣でメイド服着て特攻〜  作者: 抹茶
第1章 悪役令嬢役の隣でメイド服着て特攻
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邂逅、特攻、妥協より棚ぼた 16

冷たい視線ご冷たい言葉に私たちはーー

「出たな、コクヨウ先生だけどコクヨウ先生じゃ無いやつ」

「出ましたわね、コクヨウお兄様だけどコクヨウお兄様じゃない方!」

と言いつつエンジェは、最初にキツイことを言われたせいか苦手意識があるみたいで一歩下がって私の背中に張り付いた。

この人なんて呼べばいいのか分からないんだもん。

そのコクヨウ先生だけどコクヨウ先生じゃない謎の人は、鬱陶しそうに私達を交互に見て、から口を開いた。

「ーーうるさい奴らだな……クロでいい。イチイチそんな野暮ったい呼ばれ方してちゃ敵わねぇしなーーそれよりエンジェ・ハイドライト」

冷たくて暗い色の瞳がエンジェを見据えた。私の背中に隠れていたエンジェの身体が目に見えて硬直するのが分かった。

「何故、主従契約に抗う?他人とのくだらない仲良しこよしごっこに満足して目の前の重要な問題を見て見ぬフリをするつもりか?ようやく君が“悪役令嬢”から脱する機会だというのに随分と呑気なものだな。俯いて哀れっぽい顔をしていれば誰か助けてくれるとでも思っているのか。可哀想だからと誰かが助けてくれると思っているのか?今まで一度もそんなことありはしなかったのにか?」

クロと名乗る、コクヨウ先生の中に居る別人はつらつらと、いやに攻撃的な言葉を投げつけてくる。エンジェが私の服の裾をきゅっと掴んだのを感じた。ちらりとエンジェの方を見ると俯いていて表情が見えなかった。

クロの言葉の全てはキツいものだったし食ってかかってその意地悪げな顔を殴っておこうかとも思ったけれど、私はそれをしなかった。

だってーー


まぁそれよりも。

このまま言われっぱなしにしていたらクロはまたキツい言葉をかけ続けるかもしれない。

そんな気持ちと、純粋に気になったから私はクロに疑問を投げかけた。

「……悪役令嬢って?」

ここに来てからあちらこちらで聞く言葉だ。

私がそれを口のにすると傍に居たエンジェがびくりと肩を揺らした。でも何も言わなかった。

「このお嬢さんの渾名さ。学院を見て回ったなら君も聞いただろう」

その言葉に私は頷いた。ひそひそと小声で、あるいはこちらに聞こえるようにわざとらしく。

どちらにしろ良い意味とは思えない。“悪役”ってついてるしね。クロはそんな私を見ながら言葉を続けた。

「エンジェ・ハイドライトがその渾名を背負うようになったのは産まれてすぐの事だ」



クロは落ち着いたトーンで説明をしていく。

「領家に子供が産まれると御披露目の為の宴が行われる。まぁ領土の規模や領主の嗜好によって細部は変わってくるが、たった一つどの領家、どんな御披露目の宴であったって行う事がある。予言だ」

「予言……?」

現代の日本じゃあんまり聞かないしなんだかピンと来ない。

「ああ、そうだ。予言師と呼ばれる、それを生業とする者を呼んでね、その者が魔力を使って生まれた子の将来を占うのさ。まぁ普通はなんて事ない無難な予言だ。将来誰からも愛される優しい子になるでしょう、この子の未来は光溢れる輝かしいものになるでしょう、のような感じで悪いことなんて一つも言わないものだ。例外と言えばこの子は5歳の時に足を怪我するかもしれません、気をつけなさい、とか回避できるレベルの予言しかしないんだよ、宴の時の預言師っていうのは」

クロはそこで言葉を区切った。

その説明を聞きながら私は頷いていた。確かに祝いの席で悪いことばっかりは言えないもんね。

隣のエンジェを見ると俯きながら視線を床から床へと彷徨わせていた。

――何も考えずに聞き始めちゃったけど、この話って私が聞いてよかったものだったのかな。

そんな不安のせいかじい、っとエンジェを見つめていた。その視線はかなり分かりやすかったのだろう。

エンジェは俯いていた顔をあげると、「大丈夫ですわ」と小さく微笑んだ。

そしてクロのほうに視線を向けた。“続けて”という意味だったようで、クロは「普通であれば、だ」と言った。

――そういえば、この先も一気に説明しても良かったのに、クロは何で一回止めたんだろう。エンジェのことを気にしてたのかな。

なんてことを少し思った。まぁ本当のことなんて分からないけど。


「だが、エンジェ・ハイドライト。彼女の予言は他の者と明らかに異なっていた。他の領家でも予言をしたことのある名の知れた預言師で、ハイドライト領とは何の因縁もない者だったにも関らず、ソイツはその予言をつらつらと、その場に居た領民の脳に刻み込むような大きく響き渡る声で告げた……まるで、何かにとり憑かれたようにね」

クロの声は先ほどまでの説明よりもずっとゆっくりしていて、冷たくて低い、体中を駆け巡って寒気を呼び起こすような声だった。



「――この者は破滅の運命を辿るだろう。恋した男は光の巫女を愛し、この者は悪心に取り憑かれ、悪逆の限りを尽くし領地に災厄を運ぶ悪魔となる。だが光の巫女と彼女を守る男の手によって彼女の命は絶たれ、この者は死を以て罪を償うであろう」

クロは芝居がかった、でも真に迫ったような口調で言葉を連ねた。

きっとこれがその時の予言そのままなんだろう。私はその時、その場でその予言を実際聞いていたかのような気分に襲われた。

「これが、エンジェ・ハイドライトに与えられた予言だ。その予言が領地中で噂になり、隣の領地に広がり、またその隣の領地に広がり……そうして広まっていくうちにその予言を簡潔に表す為の呼び名が出来た……これってまるで物語の悪役みたいだろう?だから『悪役令嬢』。あの噂聞いた?ほらあの『悪役令嬢の』なんて使われていたものが今では彼女自身を指して言われるようになった、ということさ」

身体中からす、っと温度が奪われたみたいに冷えていくのが分かった。

何、それ。思わず口に出していたかもしれない。


なんで。エンジェは何も悪くないじゃん。

なんで関りもない、エンジェのこと知りもしない人からそんな言葉を投げられなきゃいけないんだろう。

私はそんな言葉を使った人全員殴って回りたい気分だった。

私の殺気立った表情に気付いたクロがほんの少し、表情を和らげて呟いた。


「最悪だよ、人ってやつは」

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