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魔法石喜譚〜悪役令嬢役の隣でメイド服着て特攻〜  作者: 抹茶
第1章 悪役令嬢役の隣でメイド服着て特攻
20/21

邂逅、特攻、妥協より棚ぼた 15

「おことわりしますわっ」

その言葉に即座に反応したのはエンジェだった。


主従契約ーーエンジェから教えてもらった力を得られるけど主人の言いなりになる契約のことだ。

エンジェが友達と対等じゃなくなるのは嫌って伝えてくれたからやる気は無いーーけど。

エンジェの激しい拒絶にもコクヨウ先生は涼しげだ。

「でもねぇ、必要な事なんだよエンジェ。理由や原因には言及するつもりは無いが、アイ君の魔力は今奥底に沈んでいるーーちょうどこの花弁みたいにね」

そう言いながら何処からともなく出してきたピンク色の花びらをカップに落とした。

殆ど飲み干していたティーカップの底に花弁が貼りつく。

「これが今のアイの魔力。これを外に出してやるにはどうすればいい、という話だが答えは簡単だ。人間が内側に溜めておける魔力容量には限りがある。量は人それぞれ違うが、それでも有限だ。だからーー」

コクヨウ先生はそのカップにお茶を注ぎ足した。

適量も超えてコップの縁までお茶が達してもまだ注ぐ。

「アイ以外の魔力を注いでやればいい。たくさんたくさん注ぎ込んでやるとアイ自身の魔力はアイの中から出てくるのさ」

コップの縁からお茶があふれたところで、コクヨウ先生はお茶を注ぐ手を止めた。

ソーサーに溜まったお茶の上には、花弁が浮かんでいた。

「つまり他者の増大な魔力を注ぎ込む。これには主従契約が1番手っ取り早いよーーエンジェも理解しているだろう?僕が代わってもいいがやはり能力的に見ても関係性を見てもエンジェの方がいいだろう」

エンジェはその言葉に抗うようにゆっくりと、それでも理解はしているのを示すために、小さく頷いた。

確かに、どうしてもしなければならないなら私もエンジェの方がいい。

でもーー

私はエンジェの横顔を見た。

これが絶対に嫌!と癇癪を起こしていたり抗う姿勢を見せていたら私も一緒に騒いでいたけどそんな様子は無い。

ただしゅんとした表情で俯いていた。

きっとこれが一番良い方法だとエンジェにも分かっているんだろう。私だってこれが一番手っ取り早い方法だって分かっている。

このまま主従契約を結んでいいのかな。

私は、エンジェに悲しんでいて欲しくない。。

でも、どうすればいいのか分からなくて自分の力の無さが悔しくって悲しくって、私はそっとエンジェの手に自分の手を重ねた。


「ーーそれじゃあ、いいね?」

しんみりとした空間を払うようにコクヨウ先生は尋ねた。

私は小さく頷いた。隣でエンジェも同じように肯く気配がした。

「では主従契約の準備をしよう……ボクとしてはそれを叶えてあげたいけれどーーあ、」

「「あ?」」

私たちを気遣った優しく残念そうな声で話していたコクヨウ先生が突然ぴしり、と止まった。

そして困った顔で

「ボクのもう1人ーーもう1人のボク…いやこの言い方は止めておこうーーとりあえずもう一つが言いたそうだから変わるよ」

ぺらぺらと捲し立てた。

「いや待って待って急」

「あのきつい人がですか!?コクヨウお兄様なんとか押し留めてっ!」

エンジェは最初の出会いですっかりもう1人の人格が苦手になったようで必死でコクヨウ先生を止めている。

「ごめんねーせり上がってきてるからもう無理」

迫り上がるもんなんだもう一つの人格って。

コクヨウ先生がそう言った後、彼の瞳はちかり、と光った。

最初に変わった時は急だったし何も分からなかったけれど、人格が変わる時にはこんな風に光るのかな。

目の前の人物はぱちぱちと瞬きを数回繰り返し、そしてーー


「で、何を躊躇してるんだ君は?」

開口一番。その男は挨拶ひとつせず、冷たい声と視線を私たちに投げつけた。


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