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魔法石喜譚〜悪役令嬢役の隣でメイド服着て特攻〜  作者: 抹茶
第1章 悪役令嬢役の隣でメイド服着て特攻
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邂逅、特攻、妥協より棚ぼた 14

あの、とエンジェが挙手しながら口を開いた。

「私が今回元の性格にすぐに戻れたのはアイの魔法によるものではないのでしょうか?だから私、アイが魔力を外に出せないとは思えないのですが……」

ああ、そういえば。

エンジェが元に戻ったのが私の力って事になると、あの時私は魔法が使えてたってこと、つまりは魔力を外に出せてたってことになるもんね。

「半分はエンジェの言う通りだ。アイの持つ魔力のおかげでエンジェはあの呪縛から解き放たれた。それは合ってるよ」

コクヨウ先生は頷く。

半分、ってどういうことなんだろう?

「でも、もしアイが元々この国に居る人間みたいに自然に魔力を外に出せて魔法を使えていたならばもっと前に直っていたはずじゃないかな」

「それは――そう、ですわよね」

コクヨウ先生に指摘されエンジェははっとした表情を浮かべた後、頬に手を当て考え込んだ。

「エンジェとアイが触れあった時、アイが魔力を放つことが出来た。僕はね、エンジェ。君が魔法石の代わりとなったと思っているんだ」

エンジェが魔法石の代わり?私には何のことかさっぱりわからないけど

……でもエンジェには分かったみたいだった。

さっきまでの考え込む動作はすでに止めていた。

「私の魔力の性質ですわね……?」

「うん、その通りだ。よく出来ました」

コクヨウ先生は、教師が優等生に問題を解かせて思惑通り正解したみたいな笑顔を浮かべた。ってもうそのままその通りなんだけど。

ちんぷんかんな私にエンジェは説明してくれた。

「人それぞれに個別の魔法があるっていうのは言いましたわね?つまりは個人個人で異なる何らかの性質に特化した魔力を持つということですわ。私の場合、“繋げる”こと――それが私固有の魔力ですわ」

「繋げる、っことは……」

「何かを物理的に接続したり精神を同調させたり、そういったことが得意な魔力です。例えば最初アイに会った時に使った言語共有の魔法、あれは覚えていますか?」

私はこくりと頷いた。

「あの魔法は結構高等魔法でね。この学院でも上の学年に上がらないと習わないんだよ。でも僕が昔エンジェに教えた。彼女の魔力の性質が“繋げる”ことだったからさ。この性質とこの魔法は相性がいいんだ。この魔法はつまるところ、ここの言葉と向こうの言葉をイコールで“繋げる”魔法だからね」

なるほど。

分かったような分からないような……。

「まぁ、つまりだ。パイプ役をする事に特化した魔力、ということさ。このエンジェの魔力がアイと触れ合った時に上手く作用した、のだと思うよ」

コクヨウ先生はそこまで言って、ハーブティを口に含めてのんびりと息を吐いた。

「では私と同じ要素を持つ魔法石を所持すればアイは魔法が自由に使えると言うことでしょうか?」

そうなの?

コクヨウ先生の口ぶりじゃそんなに簡単な話じゃなさそうだったけど……。

「いや、残念だがそうはならないんだよね」

コクヨウ先生はさらりと言った。全然残念そうじゃない。

「恐らくアイの魔力は奥底に眠っていて条件を満たさない限り出すことは出来ないんだろう。ハーブや魔法石では上手く出せないと思うよ」

「なんでそんなこと分かるんですか?」

この世界の教師って人目見たらそういうの判断出来るのかな。

コクヨウ先生は私の問いににっこりと綺麗で、真意の見えない微笑みを返した。

「エンジェの魔力と似た性質のハーブをそのハーブティに混ぜてるからね。普段魔力を放出したことのない異界からの人間でも思わず魔力がこぼれ出てしまうレベルの強力なハーブをね。上手くいけば魔力が君から放出される筈だったんだけど……微量な魔力すら感知できないんだよねぇ」

「えっ何してくれてんのこの人」

「手段選ばなすぎではないですの?」

無断でよく分からないモン飲ませてんじゃないよ。

エンジェと私で非難の視線を思いっきり浴びせたけれど、コクヨウ先生は涼しげな笑顔を浮かべたままだった。

腹立つなこの人。



「ごめんごめん、説明するのが手間でね」

面倒がって今日会ったばかりの子供に変なものを盛るな。

「でも、これによってハーブや魔法石の類は効かない事が証明されただろう?魔法石も触ってみる?はい、どうぞ。握りしめてみて、何か湧き上がってくるものがあるかなーーほら、駄目だったろう?」

コクヨウ先生は私に水色の綺麗な石を手渡してくれた。親指くらいの大きさのそれを言われるがままに握りしめてみたけれど、なんの変化も起きなかった。

「じゃあ言ってた通り私の魔力は奥底にあって、出すためにはエンジェに触らなきゃ駄目ってこと?」

「なんだかその言い方嫌ですわ。手を繋がなきゃ、とかそういう表現に出来ませんの?」

コクヨウ先生にそれを返しつつ、エンジェの意見を流しつつ、私は尋ねた。


「それなんだけどね、ちょっと問題があるのさーー手を繋いでみなよ、魔力を出せるかい?」

私とエンジェは言われるがまま、顔を見合わせつつ、そっと静かに手を繋いだ。なんか照れる。

「あら?」

不思議そうな声を上げたのはエンジェだ。

「先ほどから“繋がる”ようにと魔力を使っているのですが……」

「なんの兆しも見せないだろう?」

コクヨウ先生が言った。

確かに何か変わった気もしないし、何も起こらない。

「おそらく君の魔力が作用するのも条件を満たしたときだけだ。例えば――魔力を繋ぐ相手は“アイが心を許した相手でないといけない”に加えて“双方の気持ちが一致したとき”だとかそういう条件じゃないかな。まぁ正確なものは検証してみないとわからないけれど、君の魔力はそうなっている。そういう条件の首輪をつけられ動けなくなっているのさ」

それって……なんで?

私が何かした記憶とかないし、体質なのかな……?そういう人って他にもいるのかな。

――なんてことを聞こうとしたけれどコクヨウ先生は矢継ぎ早に話始めた。


「これからこの世界で生き、エンジェや他の人々がかけられた魔法を解くための一手となるには条件を満たさないと作動できない魔力なんてあまりにも心もとない。この世界の状況を打破するためにはラピスの住人と同じように魔力を使えるようにしておきたいね。いや、しなければならない。その為の方法だけど――」

コクヨウ先生はそこまで言って、勿体ぶって口を噤んだ。私とエンジェが前のめりで話に集中するのを見て微笑んだ後、こう言った。



「アイ、エンジェと主従契約を結ぶ気は無いかな?」


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