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魔法石喜譚〜悪役令嬢役の隣でメイド服着て特攻〜  作者: 抹茶
第1章 悪役令嬢役の隣でメイド服着て特攻
16/21

邂逅、特攻、妥協より棚ぼた 11

息を吸い込んで深呼吸。

手を硬く握りしめて私たちは曲がり角の先に向かった。


その先には、やはり、一人称俺様の生徒会長にしてエンジェの許嫁、アルヴィンが居た。

それ以外の人は居ない。

たった1人だけで、廊下をきょろきょろと見まわし誰かを探しているみたいだった。

走ってきたみたいで、少し髪の毛が乱れている。

私たちに気付いたアルヴィンは一瞬だけはっとした表情を浮かべてから、そのままズンズンと私たちの方に大股で近寄ってくる。

「お前はーー」

「あのっアルヴィン様、先ほどは申し訳ーー」

「君はちょっと黙っていてくれないか」

ピシャリ。

そんな音が似合うような、突き放した物言い。

謝罪しようとした口のまま、エンジェはびくりと肩を震わせた。

アルヴィンは嫌悪感を隠さない表情でエンジェを睨め付ける。

「――前から言おうと思っていたが君と私は親が決めた許嫁というだけだ。君と必要以上に親しくするつもりは無い」

エンジェも、私も、口を挟む隙間が無かった。

アルヴィンは畳みかけるように言った。

「迷惑しているんだ。まぁ君のような“悪役令嬢”には言っても無駄だろうが――」

ぼそりと呟かれた言葉。

それが何なのか私には分からないけど、エンジェを馬鹿にした言葉だということだけは分かる。

「そんなことよりもだ、そこのお前。お前を探していたんだ」

アルヴィンはそこまで言うと私の方に向き直った。

――そんなことよりも?

エンジェの謝罪がそんなこと?コイツはエンジェのことを馬鹿にして蔑んで、雑に扱っているのに、エンジェはそんな奴に“自分がしたことだから”と謝ろうとしていたのに。

なのにそんなエンジェの謝罪は、気持ちは、そんなことなの?

私の体の中で、熱く、どす黒い感情が

そんな姿を見た時、もう私の気持ちは決まっていた。


「……私に用ですか」

高圧的な物言いにうつむいてしまったエンジェの傍にこの男を近付けたくなくて、一歩エンジェより前に出る。

エンジェと繋いでいた手はさらにぎゅっ、と固く握りしめると同じ強さでエンジェも握り返してくる。

「ああ、お前のそのピアス――」

相手が、アルヴィンがそう口を開いた、そのタイミングだ。

「えいっ」

「ぐっ!?」

「ちょっと、アイッ!?」

私は思いきり瓶の中身を口の中に突っ込んだ。

瓶の中身――つまりはあのクソ不味い聖水のようなもの――はアルヴィンの口の中にそのまま注ぎ込まれた。

急なことで思わずアルヴィンはその中身をごくり、と飲み込み、そしてーー

「えっうそ、やばい頭打つ」

「何やってるんですの貴方は!!」

アルヴィンは白目を向いて後ろに倒れーーそうになったのでエンジェと2人で慌ててその体を支えた。



「そーっとそーっと下ろしますわよ」

「おっっっも」

そりゃそうか私の頭何個分もあっちの方が背が高い。

私やエンジェが割と小柄な方ということを考えてもかなり高身長だ。しかも筋肉もしっかり付いているみたいだし。

本当に重い。

本当は直ぐにでも手を離したかったけど、さすがに頭とか打ったりしたら、寝覚めが悪い。

2人でひいひい言いながら時間をかけて、やっと廊下の壁にもたれかからせる事が出来た。

「そういえば私も最初飲んだ時あまりのまずさに昏倒しましたわ……」

汗が滲んだ額をハンカチで拭いながらエンジェが凄いこと言っていたので、この気絶はつまりはそういう事なんだろう。

私ちょっと舐めただけで良かった……。



うん、よし。

「先生のところに、急ごう」

「これ謝った方ががいいのではないかしら!?」

私は切り替えてこ!って気分だったけどエンジェ的にはダメだったらしい。

「だってエンジェのこと酷いこと言うしヤなんだもん」

「もん、ってちょっと可愛く言ったって駄目ですわよ。まぁこのままいつ目覚めるか分からないのを待っていても面倒ですし置いていきますが」

「置いてくんじゃん」

「だって元は私が悪いといってもあんなに酷いこと言われてはヤなんですわもん」

「語尾が混雑してるけどかわいい」


というわけで厳密かつ正確かつ公平な話し合いの末、アルヴィンはそのまま寝かしておくことにした。

おやすみ、生徒会長。いい夢を。


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