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魔法石喜譚〜悪役令嬢役の隣でメイド服着て特攻〜  作者: 抹茶
第1章 悪役令嬢役の隣でメイド服着て特攻
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邂逅、特攻、妥協より棚ぼた 5

悲鳴といってもトラブルではないとすぐに分かった。

先ほどのような食堂中を震わすレベルの大きな悲鳴こそないが、断続的に興奮の色が滲んだ声が響く。

そこに悪い感情は乗っていない。

むしろ歓喜に打ち震え、思わず口から出てしまったような――


いわゆる、黄色い悲鳴というやつだ。


声の上がっている方に目を向けると、食堂の入口に人だかりが出来ていた。

「ねぇエンジェ」

あれって何かな?と訊こうとしたけど出来なかった。

エンジェがいない。

きょろきょろと辺りを見回していると、ちちちとまた声がした。

見ると、ルリがテーブルの上でぽつん、と佇んでいた。

「あれルリ、置いてかれたの?」

いっつもエンジェの傍に居たのに。着いていかなかったのかな。

私の声に応えているつもりなのかまた、ちちちと鳴いた。


「……一緒にエンジェ探す?」

ちちち。

よし、探そう。


エンジェは直ぐに見つかった。

人だかりに向かっていく後姿を見つけたのだ。

私とルリも慌てて追うけれど、この人だかりと黄色い悲鳴を気にする人々は沢山居る様で、集まる人の規模は目を離した隙にどんどん大きくなっていく。

別に背が高い方でもないし屈強なわけでもない私は人込みの中に埋もれて人だかりの一番外側に追い立てられてしまう。

同じような体格のエンジェも外側に流れてくれば楽だったのに、人だかりなんて無いみたいにさくさくと最前列に進んでいく。


仕方ない。せめて、人だかりの原因くらい突き止めよう。

エンジェの様子はおかしくなっていたし、おそらくこれが言っていた魔法なのだろう。

でも、どういう魔法なんだろう。

人だかりが出来てたら突き止めたくなる魔法?野次馬じゃん。なんだかピンと来ない。

もしかしたら原因が分かればこの魔法(仮)についても分かるかもしれないし。


とりあえずもっとよく見えるところを――と考えて私はあるものに目を止めた。

階段。

バイキング形式の食事が並べられていたテーブルの直ぐ傍の壁に階段がある。

地下へではなく、上へ。

私は何となく天井を見上げた。

「あ」

そして思わず声を漏らした。

ここって2階席もあるんだね。しかも普通の2階じゃなくって、1階を覗き込めるような形になっている。こういうの、吹き抜け構造でいいんだっけ。

なんとなく中学校の体育館の2階に似ている。

食堂に入ったときはご飯に夢中で気付かなかった。席も足りてたし。

人の多そうな学校だし、食事スペースはいっぱいあった方がいいもんね。


ともかく、上から見れば人だかりの原因も確認できるはずだ。

そう思って駆け足で階段を登っていった。


私と同じように考える人はわりといるらしい。

数人の生徒たちが2階の柵から乗り出すように下を覗き込んでいる。

でもその人数は1階ほどではない。

私はその生徒たちと同じように身を乗り出して下を覗き込んだ。


人だかりの中央。

其処には5人の人物が立っていた。

周囲の人々は彼らに押しかけているわけじゃない。むしろ一定の距離をとり、彼らの動向を見守っているようだった。

そんな人ばかりなのでまるでその5人専用の花道が作られているみたいだ。

ならさっさとバイキング取りに行って食事してけばいいのに。と私の脳みその冷静な部分が訴えたけど無視だ。なんかきっと事情とかあるんだろうね。知らんけど。

とにかく、そんな状況なので黄色い悲鳴が向けられていた相手は彼らなのだろうと直ぐに分かる。



「まさか新生徒会の方々を拝見できるなんて!」

私と隣の女子生徒が呟いた。

感激!と今にも叫び出しそうなうっとりした声色だ。

「……生徒会?」

あ、そうなの。

そういえば中学にも生徒会あったなぁ。こんなにめちゃくちゃ目立つ感じでもなかったけど。この世界だと生徒会ってこういうものなの?

そんな私の不思議そうな声が耳に入ったのだろう。

隣の生徒はばっと、勢いよくこちらを向いた。怖い。

明るい茶髪を高い位置でくくった――いわゆるツインテール―――女の子でくりくりと大きい目が子リスみたいで可愛いけれど、勢いがすごい。怖い(2回目)。

「生徒会の皆様をご存じないなんてあなたモグリ!?」

モグリて。日常会話であんまり言わないでしょ。モグリて。

「いい!?生徒会とはこの学園で最も権力あるといわれる集団、しかも、今年の4月からは今までとは段違いの豪華メンバーなのよ!」

「ほはぁ」

よくわからない声で頷いてしまう。

なんでそんな細かく説明してくれるんだろう、この人。

「なんていったって5大貴族のうち4貴族の方々が生徒会に揃うのですから!しかも生徒会顧問のコクヨウ様を加えれば全員が揃う、こんな機会またと無いのよ!?あ~私去年入学してよかった……!」

去年入学。あ、年上なんですね。先輩。

「ごだいきぞく」

復唱して思い至る。

そういえば昨日あのクソダサ冊子読みながら覚えたなぁ。

学院を囲むようにして領地を持つ力のある貴族だとかなんとか。っていうかコクヨウ先生そうなの。

どおりであの部屋で食べたお菓子は上質でいいもん使ってるなーみたいな高そうな味してたわけだ。

「では、私が説明するからちゃんと聞くのよ!」


私がぼんやりしていたら、隣の女の子(あるいは先輩)は手で彼らを示しながら説明し始めた。

親切ではあることには違いないんだけど、何か芝居がかっているというか、わざとらしいというか。

まるで、漫画の説明口調の脇役みたいだ。と、かなり失礼なことを考えてしまう。

なんかおかしいんだよな……?

っていうかなんで急にぼんやり横にいただけの私に説明を……?


でも理由なんて今考えても分からないし、助かることは助かるので、とりあえず私は示した先を見た。

勉強になります、先輩。

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