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散文の後/東風  作者: 新辺守久/小珠久武
第一章 15歳 春休み<帰らずの森グランゼ>-工事中-
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第033話 彼女と彼女の物語

我が妄想……続きです。

 一面に広がる白を基調とした灰色の空間。周囲が全て白く地平線の彼方まで続き、空と地面の間を表す様に灰色のグラデーションを引かれ、その線が天と地の境界線となっているのが見て取れる。


 遙か遠くに何処までも高く延びる白い線が7つ見えた。その幾つかは空に向かう途中で切れている。


「人はあれらを世界樹、賢者の搭、叡智に至る昇降機、破滅の道標、大罪の杭柱。と、様々に呼んでいた」

「君は誰だ?ここは何処なんだ?」

「<コンロン>、<アショーカ>、<エルディア>、<ドーラ>、<ゼーレム>、<マーヤ>、<アトランティカ>。そして<ホーライ>。総称して<ユグドラシル>と言う」

「魔素は厳しい世界環境に適応し、生物に進化を促す触媒。それは規定数に達するまで無限増殖を繰り返す。知恵を持つ者はそれらを戦や争いに使い、皮肉にもそれが進化と発展の糧となる」


 俺は虚空に向かって訊ねてみたが、声の主は返事をする訳でもなく、そんな事はお構い無しとばかりに、少女の声で淡々と支離滅裂な内容の話を続ける。しばらく黙って聞くしかない様だ。


「管理者が居た。個にして全、全にして個。意思を持った一つの歯車が世界は均衡を崩し、気付いた時には既に手遅れで、大地に星が墜ち、光の柱が降り注ぎ、それを機に緩やかに崩壊を始め、最終的に当事者も含め、ただそれを眺めるだった」

「太古の時代より本能からくる生存競争に因って人々が争いを止めぬ様、管理者もまた、狂った歯車の影響を受け意志を持ち、自己保存の為に争いを始める。人に可能性にくみす者、或いは、己の駒とする為に生を搾取する者、傍観する者、初めての自意識に戸惑う者、状況にああがなう者、そして、全てを諦め隔離世界に閉じこもる者」

「大崩壊直前。<ホーライ>の管理者もまた、憧れを抱いていた世界が徐々に崩れ逝く姿を目の当たりにし、世界と共に消える事を選び、ただの観測者となっていた。世代交代の為に用意された器も有ったが、その意思に因って使用を拒否され、そのまま封印された。ただ、代替品として搭の経験、知識は器へと蓄積されていく」


 不意に後ろから気配を感じ振り向く。何時の間にか少女が立っていた。……シャウラ、か?いや、髪の色が赤じゃない、違う。白色に近いブラウン系、後ろで結ぶタイプの白い検査着を羽織った少女は薄く目を開き感情無く話し続ける。話の中に出て来た管理者の器と言われた少女かもしれない。


「<ホーライ>が管理者を失ってから747周期が過ぎる。今から58周期前、冒険者の少年が厳重な警備警戒の管理区域を越えて中枢へと至る。偶然、搭の機能を一部解放され、器の封印が解かれる」

「目覚めた器は、僅かに残されていた自我を以って、かつて管理者が夢見た搭の外へ自由を求め、冒険者の少年に請い、その肉体を生のかせとして歩む事を選択する」

「搭より解放された器は、管理者の鍵を手に、その膨大な経験と知識を抱えたまま、冒険者の少年と共に世界を渡り歩く。その後の管理者の動向を確認するが為、<ユグドラシル>を巡る旅をする。そして初めて成長と云う老いを経験する」


 少女の周りに幾つかの画面が展開される。そこに映し出される映像は、昔の記録……記憶か?その言葉を裏付ける光景や風景が流れている。誰かの面影をした少年が少女を共に歩む。穏やかな街並み、貧しい農村、美しい大地、厳しい自然環境、激しい肉弾戦、行使される魔法の数々。それは彼等の冒険譚。


「旅先である様々な国や地域、多種多様な人種と交流し、人々の感情の豊かさと複雑さを知る。過ぎ行く日々の合間に感情が育ち始め、やがて喜怒哀楽を享受する様になる」

「冒険の途中で偶然に立ち寄った東大陸の中央に位置する<エルディア>。その近郊でエルフ族の信仰対象として世界樹の名の下、聖域を守護するたエルフ族と、領有権と資源を求める帝国を名乗る軍隊の争いに遭遇した」

「帝国はその豊富な物量と人海戦術でエルフ族の土地を切り取り、蹂躙、収奪していく。聖域と多数の仲間を失ったエルフ族の生き残りは同胞を頼り、世界各地へ散っていく。そこで孤児となったエルフの少女を保護をし、二人はその場から離脱した」


 映像に映し出されたのは、戦乱に巻き込まれたのであろう陰惨な光景も幾つか流れて、その中に保護されたエルフの少女の姿も有った。そして何時の間にか目の前に居たシャウラに似た少女は成人の女性になっている。少女の声は大人に変わり、そのまま記憶の映像は続く。


「<ホーライ>から旅立ってから10周期を越えて、少年は青年となり、器も感情を得て人の生を謳歌する。その間、保護したエルフの少女と三人は冒険者として共に過ごす。幾つかの<ユグドラシル>を巡り、その間に活動した数々の冒険の依頼で功績を得て名が売れ始めた。それにより世界が薄暗い影に覆われている事を知る」

「唯一、大崩壊からまぬがれ、稼動していた<ドーラ>はその長い歳月を使い、何処かに在ると言う約束の地<セラエノ>を探していた。手がかりを求め他の<ユグドラシル>に蓄えられた知識を得る為に、神聖教国を建国して、器を乗り換えながら、自己を神の御子と称し、神託を下し、人族の信仰を利用して、それらを手中に収め為に暗躍している事を、旅先の<アトラン>で聞かされた」

「始めに、海を越えた西の大陸に在る<ゼーレム>の地を押さえ、そこに教国の息の掛かった傀儡国家を誕生させた。以前、エルフ族の聖域<エール>を襲った帝国も<ドーラ>の意を受けての行動だった。その地を押さえながら、今だ、管理者の器は確保に至らず、有益な情報や探索結果が得られないまま調査が続けられている」


 映像の中にいる青年とシャウラに似た女性。そして保護されたエルフ。明らかにその3人は俺が世話になった人物、爺さんと婆さん、そしてシルヴィアさんが砂塵舞い、うねる大地を外套はためかせながら旅をする姿だった。


「<アトランティカ>の管理者は地下に潜り、残された機能を使って器を乗り換え、世代を重ね、細々と接続された一方通行の回線を用い、世界を傍観し記録をしていた。彼の者に曰く、聖戦の名の下、隣接する<アトランティカ>、<マーヤ>に対し、幾度も遠征が繰り返され、その都度、当地に存在する国家群と戦が行われた。3人も他の仲間と共に強制冒険依頼として介入や戦闘へ巻き込まれ、く闘争に加担する」

「繰り返された闘争の果て、器の繰り出す魔法資質が飛び抜けていた所為もあり、敵とは云え神聖教国に保護されるべき聖者と認定され、確保される対象となった。資質ありと目された人物は聖者認定され保護と言う名目の元、神聖教国へ送られているのが実情。玉石混合ではあるが<ユグドラシル>の知識を得るには、管理者の器から仕入れた方が早いからだ」

「<アトラン>管理者の器は<ホーライ>以外の管理者に関する様々な情報を仕入れていた。<アショーカ><コンロン>は調査団が派遣されている。<ホーライ>に至っては東の大海に在り、人員を派遣するにも長期にわたる計画を立て、入念な準備を行う必要が有って簡単に手が出せないのだと言う。その為、大陸の東にある国家群に食指を伸ばし傀儡とし海への進出を模索しているとの事」


 この段階にきて、たまに見た事のある人達が幾度か出て来た。向こうの世界で<ふじの湯>に訪れていた外国の人達。爺さんと一緒に鍛えてくれた怪しげな米国人のジョンも居た。と言うか、爺さんと婆さんの話がちょっと見聞きしただけでも壮大過ぎて困る……。


「その後、3人は神聖教国の影響の少ない大陸の東へ移動し、その間も延びてくる神聖教国の魔手から逃れ、隠れ、やがて東の小国、ローウェン王国に至る。そこで珍しい道具を販売する商人の親子と出会う。父親は異世界からの迷い人。その知識を持って道具を開発していると言う。辺境の帰らずの森に構築、破棄された城砦跡地より抜け出てきた話を聞く。迷い人の案内を元にそこへ辿り着き、活動拠点とする」

「城砦跡地からダンジョンと表層にある遺跡群で迷い人が抜けてくる岩扉が発見する。迷い人の見識と照らし合わせ、異世界を約束の地<セラエノ>と想定し、器に蓄えられた経験と知識を元に研究調査が行われる。同時期にダンジョンの攻略も開始され、そこから出た発掘品と魔物から手に入れた素材や魔石を、商人親子を介し、帰らずの森外界との交易を担って貰う。旅の途中で出合った仲間達も連絡を付け呼び寄せる」

「<ホーライ>よりでて14周期、安住の地とした帰らずの森で、長い旅の果て、心の内に愛情が芽生え、かつて少年だった男と愛をはぐくみ一人の子を成す。子が一人で歩ける程に成長したある月夜の晩、館に一匹の猫が迷い込む。似た動物はいるがこの世界に存在しない動物。子は興味を引かれ楽しそうに猫を追う。父親も母親もそれを追う。行き着いた先は月明かりで薄く発光している遺跡群にある岩扉の前」


 そして三人は何度も振り返った猫に導かれる様に扉へと入っていく映像。扉の表面には七つの星が描かれていた。我が家の家紋。今までの映像記録は俺の知っている人の記憶、だ。そう、眼鏡を掛けにこやかに微笑みながら横に立つ人物。


 ……そろそろいいかな、婆さん?


「なんだい、孫よ。これから始まる爺さんとの惚気話のろけばなしは嫌かい?」


 ……ふむ、如何やら俺は死んでしまった様だ。さっきまでの体験と見せられた記憶映像は、死の直前に見るという生に対する願望めいた走馬灯だったのかもしれない。そして、婆さんの姿をした女神様に召還されたっぽいからこのまま異世界転生のプロセスを歩んで便利スキルを貰って、チート能力を使い放題で俺TUEEEE!!!を体現するんだ。よし、くぞ、ビバ異世界!レッツ、ゴー、女神様っ!!


「お前は、なにをアホな事を抜かしておるのだ、たすく。それにその願望は大半が達成しているだろう」


 俺の思考は読まれ、素気無すげなたしなめられた。願望も既に達成していた模様。取り合えず、……状況説明を求む。確か、イーエヌ・デーの下僕、使い魔のガーゴイルに後ろから殴り飛ばされ絶賛、地面を耕している最中だった筈だが?


「ふむ。一度、幽体離脱の臨死まで体験すると死にひんしても動じなくなるものなのか。……まぁ、いい。輔、お前は今、私の施した催眠取り説の緊急プログラムを発動した所だね」


 そのプログラムとやらに、婆さんの生い立ちから続く爺さんとの惚気話は、何か関係が有ったのか?


「はっはっはっ。孫に恥かしい過去を知られてしまったか。まぁ、記憶はその身体を使いこなす為の概念として見せただけだ。所々戦闘シーンがあっただろう。手本だよ。その気になれば世界を相手に出来る。……かもね」


 ……かもね。って、しかも戦闘シーンより冒険譚のほうが長かったけれど……それに、もしかして母さんや姉さんも器の能力を引き継いでいるのか?


「たまに、自分語りしたい時も有るだろう?そうだな。だが、お前は魔眼<龍の瞳>を宿してしまったからな。約束の地<セラエノ>に至る道はお前にしるされてしまった様だ。まぁ、頑張れ。正直、羨ましい、がな」


 羨ましがられても身体はやらないぞ。で、緊急プログラムが発動って事は現状を打破する方法は有るのか?


「お前の身体を少々操らせて貰うだけだ。なぁに、悪い様にはしない」


 その言葉遣いはいい話の様でよくない結果を生み出しそうな含みがあるな。俺に何か望みでも有るのか?


「何も望まない。いて言えば、娘の、孫達が限りある生を全うして欲しい。かな」


 ……限りある生を全う出来そうも無い状態で言われても困るなぁ。


「その為の緊急プログラムなのさ。一向に、弊社への問い合わせが無かったから、ちらから出向いたのさ。押しかけカスタマーサービスみたいなもんかね。キーワードを唱えれば全てが始まる」


 押しかけたって……ところで、キーワードって、なんだ?


「こっちに来る前に改めて半分聞かせただろう。……仕方がない。『ガフの小部屋、魂の器』に続く言葉だ」


 交通事故に遭った時に死に掛けの病室の枕元で聞いた婆さんの言葉。そして春休み初日、<ふじの湯>の昼飯時に婆さんと母さんの口から出た言葉の一つ。後に続くのは「ガフの小部屋、魂の器。雀がさえずり、やがて人の形を成す」だったか。


「―――キーワードを受理。緊急プログラムの発動を承認」


 その言葉に反応し、白を基調とした灰色の空間が赤く染まり、幾つもの魔法文字が空を覆い回転しながら浮かんでいる。


「ここで体験した事は全て刹那の時間だ、外では一瞬の出来事になる。意識が覚醒したらちょいとばかし身体を借りるぞ。お前は観ているだけでいい。アイ、ハブ、コントロール」


 っ?!ちょっ!……え、えー、それって。……俺も返した方がいいの?何時から俺の身体は副座式の機体になったの?!んー、あー、えー、……ユ、ユー、ハブ、コントロール?




 再び俺の意識は覚醒を始める―――。

読んで頂き有り難うございます。

構成を考えず直感で自己満足しながら楽しんで書いているので他の人が面白く読めるかは判りません。

読み手に対する時間泥棒な作文です。読み辛い部分が多々有ると思いますが、そこは平にご容赦を。

120%の適当ないい加減さに、勢いと妄想をブレンドして雰囲気で以って誤魔化そうとしています。

……次の更新は気分的に、です。

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