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親バカ魔王と弱勇者見習いの修行旅行譚  作者: #FF9900
第一章:赫龍
3/29

#1:夢へ、約束へ<前編>

[2019.10.24]話を分割。2話分に変更しました

[2019.12.15]改稿を行いました(修正箇所:1)

「うぐぁッ」

疾風のごとく下から襲ってきた木剣に弾き飛ばされて背中から盛大に倒れこんだ。

「まぁいいんじゃないか。最初に比べればだいぶマシにはなったな」

木剣の先端を下に向けてゆらゆらさせながら、僕の母親兼教官はそう言った。

(マジで子供の頃の僕に言ってあげたいよ。「その夢は仕舞っとけ」って・・・)

事の発端は数か月前にさかのぼる。

夕時、いつものように二人で食卓を囲んでいると向かいに座る僕の母親である、アルフレイドが突然脈絡もないことを聞いてきた。

「レキシア、お前、いくつになった?」

「ん、何でそんなことを?」

突然の質問に口の中に放り込んだ野菜を飲み込みながらそう聞き返した。

「別に理由などない。気になっただけだ」

「えーっと、歳かぁ・・・あんまり気にしてないからなぁ・・・」

そう呟くとアルフレイドは少し怪訝そうな顔をした言った

「なんだお前、まさか忘れたのか?」

「あ、いや。大丈夫。多分覚えてる。・・・18、かな?」

「そうか・・・もうそんなに経つのか」

そう言いながら少し、空中を眺めていたがすぐに僕の顔を見て・・・

「よし。明日から訓練だ、目標は魔王討伐だな」

唐突にそんなことを言った。

これが今僕がしている死ぬほど厳しい訓練の発端だ。

「ほ、ほんとになんでこんなことを・・・」

「最初に説明しただろう?お前が望んだのだ。『御伽噺の英雄みたいになりたい』とな」

それだけ聞けば、妥当に思える。しかし問題はそのあとだ。

「12年前の事だぞ。覚えてないのか?」

「覚えてるわけッ・・・」

そう、いまから12年前。僕が6歳の時の約束なのだ。いわば、子供の戯言なのだ。

(真に受けるか!?普通!)

「覚えてないのか。12年程度で忘れるとは。存外忘れっぽいのだな」

「生きすぎて、自分の年齢数えるのやめるほどの長命と同じにするなッ・・・人間の寿命はせいぜい60年なんだよ・・・」

アルフレイドは僕と同じ人族ではなく魔族である。おかげでとんでもない長命だ。

長命で有名なエルフですら寿命は400歳ほどだが、アルフレイドはその25倍、10000年は少なくとも生きているらしい、尤も今でも別に老婆というわけでもないので、まだまだ先は長いのだろう。

「というか、よくそんな昔の一幕覚えてたね。そんなことたくさんあったじゃん」

「私が自分の息子と交わした約束を忘れたことがあるか?違えてしまったことはあるが忘れたことはないぞ。もちろん今回もだ」

この律儀なところもまぁ、いいところではあるのだが、それは場合によるのだということを僕はこの数か月で嫌というほど学んだ。

毎日、武術と魔術の鍛錬鍛錬。魔術は僕の才能の問題なのか全く使えなかったせいもあり、すぐになくなったが、代わりといわんばかりに武術鍛錬が増えた。

そのおかげかたった数か月で世の中のほとんどの武具は使えるようになったが、そもそもここまでいろんな武具の鍛錬をする必要はあったのだろうか。

「よし、明日から旅に出よう」

アルフレイドは家の前の切り株に持っていた木剣を投げて突き刺すと何ともなさそうにそう言い放った。

「た、旅・・・?なんだって急に・・・?」

「このまま私と鍛錬していてもいいがそれだと飽きるし、私に勝てたところで魔王に勝てるかと言ったらそういうわけじゃないだろう?」

「いや、母さんに勝てたら多分魔王にも勝てるよ。そうなんでしょ?」

「こうした一騎打ちと魔王としてじゃ振るえる力も違うってことだ」

家のドアを開けながら、“元魔王候補”様はそう言い放った。

確かにそういうことかもしれない。物語のイメージで言えば魔王といえば、空を裂き、大地を割るみたいな、大規模戦闘に重きを置いた戦いをするイメージだ。

「ま、そういうことだ」

「自然に人の頭の中を読むのはやめてくれないかなぁ・・・」

僕もなんとなくくすぐったいような頭を掻きながら、家の中に入った。


「取り敢えず、この旅において私たち、特にお前は冒険者という職に就く必要がある」

居間の机の上に並べられた僕たちのカバンを横によけながらアルフレイドはそうはじめた。

「お前の鍛錬のためには世界各地を回ることになるだろう。そこで旅をしていても仕事に事欠かない職業に就く必要がある」

「冒険者なら、世界各地で通用する上に、戦闘系の仕事を受けることもできる?」

「まぁそういうことだ。おあつらえ向きだろう?しかし、そのためにはまずは手近な街に行く必要がある」

そこまで言うとアルフレイドは横によけたカバンの間に手に持っていた丸めた大きな羊皮紙を広げた。

「これは・・・地図?」

「そうだ。流石にこの世界において多少であっても正確な地図は貴重品だからな。仕方なく自分で描いた」

"その『多少』を実現するためには結構な技術力が必要って本で読んだ気がするんですけど"という言葉をぐっと飲みこむ。

推定数万歳の魔族にはその程度造作もないのだろう。なんせ時間は有り余るほどにあるのだから。

「で、これはこの家の近辺の地図だ。ここが家だ。ここに町があるだろう?」

「そうだね。メイシア?って町なの?」

「私がこの地図を描いたときはそういう名前の町がその辺にあった。どうやらまだあるらしい」

言葉の最後に不可解なものが聞こえたので若干察しながらも一応聞いてみる。

「・・・ちなみにそれはどうやって確認を・・・?」

「"見た"。別に造作もないことだ」

もちろん本来なら造作どころの話ではない。

僕が家で呼んだ魔導書によれば、遠見の魔術は初級ではあるが、ものすごい遠方を見ようと思うと途端に難易度が高くなるのだそうだ。

一度だけアルフレイドの作ったスクロール─魔術を発動直前で封入した羊皮紙─で10ⅿ先を見たことはあるが、それでも"酔って"しまった。

それをこの何キロも続く森の外まで一気に見通すのはとんでもない技量のはずだ。

前々から分かっていたが我が母の規格外さに改めて呆れかえる。

「やったことはないが、ギルドの普及率を見れば、おそらくこの町でも登録は可能だろう」

嘆息している僕の事は意にも介さず、アルフレイドは話を続けていく。

「そのあとは?その街で少し依頼とかをこなすの?」

「そうだな。その辺はお前に任せよう。ま、状況に応じてということだ。なんにせよある程度物資を調達したりなどが必要だろうしな」

「そうだね。あ、そういえばお金ってどうなってるの?うちじゃ使ったことないでしょ?」

「多少は手持ちがある。しかし、ずっと使い続けられるほど量はない。そのためにも冒険者という職業に就く必要があるな」

流石に考えなしだったというわけではないようだ。

「実は結構前から計画してた?」

「お前に修行をつけ始めるより前からな」

「どおりで」

アルフレイドがニヤリとしながら、カバンを背負うので、僕は地図を丸めてカバンの横に突っ込み、同じように背負いあげる。

「さて、最後だ」

「まだなんかあるの?」

「ついてこい」

アルフレイド言われるままに、家から出て、裏手に回り込む。

そこには確か・・・

「倉庫・・・そういえば入っちゃいけないって言われてたっけ」

「そうだな。だいぶ昔に入ってはならんといったか。もう大丈夫だろう」

そういいながら、アルフレイドは勢いよく倉庫の扉を押し開いた。

「これは・・・」

「私もかなり久しぶりに見たが、我ながら壮観だな」

倉庫の中には、大小さまざまな"武器"が所狭しと置かれていた。

僕の身の丈ほどもありそうな大きな鎌から、僕の手ですらも大きすぎるようなおもちゃのようなダガーまで本当にたくさんの武器が置いてあった。

「そりゃあ入っちゃいけないわ」

思わず、そんな感嘆の声が漏れた。

「でだ。この森を丸腰で抜けろというのはさすがの私でもどうかと思う」

自覚あったんだ。

「そこで、お前にはここにある武器のうちなんでも一つだけやろうと思う」

空中に舞う埃を手で払いのけながら、アルフレイドはそういった。

「一つかぁ・・・なんていうか困るなぁ」

「ちなみに中には掘り出し物があったりするぞ。どれかは教えてやらんから探してみるんだな」

そんなことを言われてもほぼすべての武器が丸ごと埃をかぶってしまっている。それに僕には鑑定眼などないのだ。

「まぁ、業物かどうかは気にしないことにするよ。変に悩むのもどうかと思うしね」

「そうか」

流石は私の子供だ。と少しうれしそうなアルフレイドには目もくれず、奥に入っていく。

先ほどあんなことを言っておきながら、散々迷った僕が選んだのは無造作に棚に立てかけられていた一振りの直剣だった。

全体的に白く、鐔の上の刃が少し膨らんでいる形状をしている。地面に立てると、僕の胸くらいまで来るので、少し大きいかもしれないが、持った感じもかなりしっくり来たのでこれにすることにした。

鞘に入れて、背中に担ぐ。意外とおさまりが良くていい心地がした。

「母さん。それは?」

アルフレイドが壁から外したのは不思議な形をした曲剣だった。

刃渡りはあまりなく、曲がっているとはいってもサーベルほど湾曲しておらず、長さはアルフレイドの胸ほどもある─僕で言えば顎くらいだ─その上刃には波のような印が刻まれた真っ白な、まさに純白の剣だった。

「これは確か、カタナというんだったか。人からの貰い物でな、昔はよく使っていたが使う必要がなくなったんで、ここにしまっていたのだ」

一緒に壁に掛けられていたこれまた白い鞘にパチンと収めると、腰の剣帯に引っ掛け吊るす。

全体的に黒い長いコートのような皮鎧を着ているのもあって、その刀だけが雰囲気的に浮いているように見える。

「じゃあ行くか」

そういうアルフレイドの顔が少しほころんでいるのは、気のせいだろうか。

どうも、#FF9900です。

だいぶ前にプロローグだけ出して、それ以降少しずつ進めていたやつがやっと一区切りついたので投稿します。

だいぶ慎重に書いているので遅筆も遅筆ですが、気長に待っていただけるとありがたいです。

なるだけ俺TUEEEEにならないように書いてはいるんですが、少しでも気を抜くと俺TUEEEE方向に話が向かう癖なんとかしたいですね。

それでも序盤は結構無双する気がしますがレキシア君の努力の賜物分のアドバンテージってことで許してください。

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