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親バカ魔王と弱勇者見習いの修行旅行譚  作者: #FF9900
第三章:ベディシェル革命戦争
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#23 西側へ

「勇者が建立したとは?」


トラウディクさんは一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐに的を得たようですこし口角を上げて口を開いた。


「そのことでしたら、話に尾ひれがついたものでございます。勇者様その人が建立したわけではありません。シヴィア様が勇者の末裔であったというだけの話でございます」

「・・・そうか。疑ってすまなかったな」

「いえいえ。確かにそうですよね。最後の勇者様がご存命だったのは数千年前であったとのことですから。勇者その人が建立したといって信じるわけはありませんな」


トラウディクさんはそういうと愉快そうに笑った。

しかし・・・


「今何と言った!?」


アルフが急に体を乗り出した。その勢いたるや、手を突かれた机からメキョっという嫌な音がしたほどだ。

トラウディクさんの言葉の中に何か逆鱗に触れるものでもあったのかと思ったが、その横顔はどちらかというと信じられないことを聞いたかのような、何かに焦っているような顔だ。

今にもつかみかかりそうなアルフの様子に怯えながらもトラウディクさんは口を開いた。


「さ、最後の勇者様がご存命のであったのは数千年前でございます・・・?」


***


屋敷から一歩出たところでアルフは細々と息を吐いた。

その後ろから近づき、横に並んで空を見上げる。太陽は中天を少し過ぎたところにある。


「まさか勇者はおろか。魔王まで今はいないとはね」


そう。あの後、アルフがトラウディクさんを質問攻めにした結果わかったのは、

・最後の勇者様が魔王を討伐し、帰還してから数千年間。魔王が復活していない。

・それに伴い、勇者もその期間生まれていない。

・その結果、共通の敵がいなくなった影響で、4王国間での衝突が起こってしまっている。

ということだった。

本来であれば、魔王は先代魔王が死亡してから数か月から一年ほどで復活し、数年間は魔大陸の統治に努め、そのあとで侵攻してくるというのが通例らしいのだが、数千年前の魔王を最後に新しい魔王が誕生していない。

何かまずいことがあったのではないかと危惧し、魔大陸の調査も計画されたらしいのだが、そもそも魔王は人間にとっては脅威でしかなく、それがいなくなったのだから別にいいのではないかということで話はまとまったらしい。

せっかく手に入れた平和の上でいがみ合うとは随分呆れた精神だとは思うが、重要なのはそこではない。


「なくなっちゃったね・・・目的」


そう。見事に旅の目的が消失してしまった。最終目標ありきの旅であったためにその最終目標など最初からなかったと言われればこの旅は無意味なものになってしまう。

正確には無意味ではないかもしれないが、少なくとも行く先を失ったのは確かだ。


「でさ。どうする?内戦の事」


これからどうするかはわからないが、少なくとも目先のことを何とかする必要があるだろう。


「・・・とりあえずそれだな」


アルフはどこか疲れたような様子で宿へ向かう道を歩き始めた。


***


「さて、改めてどうしようか」

「お前はどうしたい?」


翌日、改めて昨日保留にしてきた内戦の件を話し合うことにした。


「僕としては両方の言い分を聞きたい。相手のことはわからないけど、この街がなんかおかしいのはわかるから」


そう聞くと、アルフは静かに頷き地図を広げた。


「この国は東西に細長い形をしている。それでここは東の端だ。ほかの町に行くのならば西に行くのが正解だろう」

「西かぁ・・・」


アルフによる手書きの修正が入った地図を見ると確かに東西に長く、そして東側に首都がある構造だ。大まかな地図であるため町の場所などの情報はないが、おそらく街が首都だけとか東側だけという可能性は低いだろうから西側にも街はあるだろう。

ちなみに轍谷から首都に来るまでの間にいくつかの街を通過したが、生活に困窮している様子はなかった。


「それから、この国の主生産資源は魔導資源だろ?それは大抵の場合、霊脈の合流点、まぁ要するに「吹き溜まり」によくできる。んで、その吹き溜まりがここだ」


そう言ってアルフが指さしたのが国の真ん中あたりだった。


「多分ここに採取のための何かがある。ここまで見に行くのもありだろうな」

「吹き溜まり・・・うん。ここに行こう」


***


「ですからそういうお達しなのです」

「お前は何も知らないと?」

「申し訳ありませんが。ともかくここを通すわけにはいきません」


少し時間が経って、僕たちは首都から何個目かの関所で足止めを食らっていた。

それほど大きいわけではない国だが、何やらやけに関所の数が多い。ほとんどの町の西側には関所が設けられていて、そのたびに検査を受けることになる。

話を聞く限りどうやら中央からここから西側への通過を制限するように通達があったようだ。


「何かありそう?」

「ああ。やけに武装している兵の数が多い。何かあると思っていいだろうさ」


私たちを向こう側に渡らせたくないのか、もしくは向こう側に見せたくない何かがあるとかな。とアルフは小声で続けると、踵を返した。


「とりあえず、夜までは何もできない。それまで近くで進展があるかを見よう」

「進展がなければ?」

「そこはお前に任せるさ。諦めて戻るか、突破するか」


アルフはイタズラを思いついたような顔でそういった。

僕があきらめる選択肢をとることなんかないのがわかっているんだろう。


***


「さて、結局進展はなかったな」


結局関所の封鎖は夜になるまで解かれなかった。

とはいえそれは普通に想定内で、すでに突破するための手を考えていた。

手というか、ほぼ強行突破に近いわけだが。

アルフに渡された黒色の外套をフードまで羽織って顔をみえないようにし、例の物を両手に握りしめた。


「よし、準備完了。いいよ」

「ちゃんと口は閉じておけよ。噛んでも知らないからな」


アルフはそう言うと、僕の背中に手を当てた。

そのままの体勢から、左足を踏み出し体の回転をフルに使って僕を斜め上方に向かって()()した。

急速に流れていく視界を意識の片隅に追いやり、必死に姿勢を制御する。

そのうちに斜め下に目標の関所の屋上が見えてくる。

うまく位置を調節して関所の屋上に勢いよく着地した。

突然空から降ってきた人影に関所の守衛が目を見開くが、流石というべきか即座に敵襲を知らせるべく口を開く。

確かに正しい選択だが、この場合においては必要ない行動だった。

右手に持っていた魔封結晶を投げつける。即座に噴出する光、音、そして煙。

周囲の注目を集めるには十分すぎる演出だが、実際の威力はそれほどではない。

封入されていたのは「行き過ぎた悪戯(Confuse)」。今の状況ではまさにな名前だろう。

残りの魔封結晶も適当にポイポイ投げてひとしきり混乱が起きたのを確認するとそのまま関所の反対側に飛び降りた。

そのまま関所から離れる方向に走っていると、突如として上空からアルフが降りてきた。


「待たせたか?」

「いんや僕も今着いたとこ」


僕たちは適当な軽口を言い合いながら夜道をひた走った。

ちなみに後から聞いた話では関所はさながらお祭りのような状態になっていたらしい。

お久しぶりですぅ・・・私ですぅ・・・遅れましたぁ・・・すいませんでした・・・いやなんかもう正直リアルが忙しかったり筆が乗らなかったりして進まないんですよね。

書きたいことはいっぱいあるんですが結局そこまですっごい時間かかるんで筆乗らないんですよねぇ。

でもまぁ頑張ります。気長に待ってくれるとありがたいのでお願いします。

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