表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親バカ魔王と弱勇者見習いの修行旅行譚  作者: #FF9900
第三章:ベディシェル革命戦争
25/29

#19:ベディシェル公国、勇者の血統の国

「クッソ・・・ついてねぇな・・・」

森の中で男が一人小さくつぶやく。その右手に握られている剣からは鮮やかな赤色の液体が滴り落ちていた。

その男の周りにあるのは3人ほどの死体。そのすべてが感情のない瞳で地面に転がっている。

男は地面の死体を一瞥すると、各所に小さな傷を無数に刻まれた体で森の奥へ歩き出した。

歩きながら鎧の内側をまさぐり小さな筒を取り出す。筒は鎧の内側にありながらもすでに血がこびりつき、表面に赤い染みを形成していた。

それだけでその筒がいかなる場所を渡ってきたかがわかるだろう。

ここはベディシェル公国。『勇者の血統の国』である。


「ベディシェル?聞いたことないですね」

「そうなのか?そこそこ有名だと思うがなぁ・・・まぁいいか。ベディシェルってのはツィアロスから独立した小国でなぁ。ここが今大変なことになってんだ」

メイシアの町を後にした僕たちはツィアロス王国からイヴァン王国まで続く街道を馬車に揺られながら進んでいた。

当初の目標ではこの街道をまっすぐ進みイヴァン王国に入るつもりだったのだが・・・

「流石に戦争やってる国まで馬車はだせねぇわ。そういうわけだからほんと悪いなあんたら」

「構わん。こちらはただの客だ。そこからは何とかする」

そのベディシェル公国とやらのせいでツィアロスーイヴァン間の貿易街道が馬車では利用できないという状況になっている。

「しかし、そんな小国がなぜ急に独立なんてできたんでしょうかね?」

基本的にそのような小国が大国から独立するのは不可能に近い。国の運営がグラついているならまだ分かるのだが、ツィアロス王国は別にそういうことはない。

であるならば、そのツィアロスという国が今日にいたるまで存続しているのは理にかなっていない。

「何かしら絡繰りがあるんだとは思うんだがなぁ・・・ああ、そういえば」

御者のおじさんが何かを思い出したようにこちらを振り返る。

「風の噂で聞いただけなんだが、なんでも勇者の血統がいるんだとか?」

「勇者・・・ですか?」

勇者といえば魔王を倒して世界を戦乱から救った英雄中の英雄だ。最も親しみやすく、最も名の知れた。

さらには今の僕の目標でもある。

「まぁ噂だからな。本当かどうかは知らねぇよ?でもよ。それならなんとなく攻め込まれねぇ理由としても十分な気がするよな」

「勇者ならまぁ・・・確かに?でもそれだけで本当に攻め込まれない理由として成立するんでしょうか?」

それが本当ならいざ知らず、ただ風の噂として言われているだけではいささか理由としては弱いような気がしないでもない。

何とも釈然としない僕の気持ちをよそに、馬車はどんどん街道を進んでいった。


焚火に木の枝を投げ込みながら後ろで武器の手入れをしているアルフに問いかける。

「で、どうするよ?勇者の国だってさ」

「どうも何も、お前が決めろ。迂回するか、少し見て回るか。私はどっちでも構わんさ」

僕の声はちょっと弾んでいるだろう。何せ勇者だ。英雄を目指していた僕がそれを知らないわけがない。

対してアルフの声はあくまで平坦だ。もしかしたら魔族であるアルフは勇者に対して悪感情でもあるのかと心配したが、それほどでもないらしい。

「・・・じゃあ、ちょっと見聞を広めるってことで」

「・・・たまの休憩も必要だしな。まぁそれでいいだろう」


「事前に言った通り俺が送れるのはここまでだが、大丈夫か?」

「ええ。大丈夫です。ここからは徒歩で向かいます」

最もベディシェル国境に近い街であるリニシアで御者のおじさんに別れを告げると、準備もそこそこに貿易街道を進み始めた。

冒険者ギルドの職員によると、確かにベディシェルは『勇者の血統』が建国した国であるという噂はあるらしい。

だがそれとは別にベディシェルは立地上霊脈の集結点が国内に存在し、その影響で魔導資源が豊富に採れるのだとか。主な国家収入はそれによる貿易であるらしい。

内部にも冒険者ギルドはあるので、詳しい情報はそちらで集めてほしいとも言われた。

戦争中の国家でも冒険者ギルドが機能しているという事実に驚いて、それについて聞くと「そういう場所では戦争参加の依頼しかありませんけどね」と苦笑いしていた。


リニシアからベディシェル公国国境関所に向かう最中。

「アルフ的にはさ、勇者ってどうなの?」

「どう、とはどういう意味だ?」

隣を歩くアルフは僕の質問に僕に視線を向けてそう聞き返す。

「一応種族的には敵なわけでしょ?親玉を倒したというかさ」

「私は基本的に魔王軍とのかかわりはなかったからな。それほど何かを思ったことはないな」

「悪感情とかは?」

「全くないな」

その返答になら今回のも大丈夫だろうと思っていると、唐突に頭の上に手が置かれた。

「気にするな。たとえ悪感情があったとしても随分前の話だ。気にならんだろうさ」

それから何度か野宿をしながら進んでいくと前方に巨大な崖に挟まれた石門が見えてくる。

「あれかな?」

「ああ、“クレスペーレの(Crespele)(Ruts)(Valley)”だな」

お久しぶりでございます。

書き直し一発目です。ここだけでもわかる通り話の流れがだいぶ変わります。

設定自体は変わりませんが、それでもだいぶ変化があるので、以前とは違うんだという感じで読んでいただけるといいかと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ