懺悔ミステイク-2-
ここはとある町の、とある教会。
教会の中には長椅子が等間隔で2列に並べて設置してある。
中はそんなに広くはない。50人ほどが座れる程度である。
一番奥には質素ではあるが祭壇が用意されていた。
少し奥に進むと両側の壁が凸型に2畳ほど広くなっている空間がある。
その右側の空間に、木の板で作られた素朴な小屋があった。
ここは町の人々の懺悔ざんげを聞くために作られたものだ。
懺悔とは自らが犯した過去の過ちを誰かに告白することである。
ここで、罪人つみびとの告白を受けた司祭は、神の名ををもって、罪人に赦ゆるしを与えることが出来る。
そして、今日も1人の罪人がこの懺悔室にやってきたのだった...
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「司祭様、何卒、私の罪を聞いていただけないでしょうか。」
若い男性の声であった。
「はい。どうぞ仰ってください。」
司祭はそう言うと、隣の部屋の声に耳を傾けた。
「......」
男は酷く緊張している様だ。重たい気が壁の向こうで放たれているのを感じた。
「そう、緊張なさらなくても大丈夫ですよ。それに、ここで貴方がされた話は絶対に誰にも漏らしませんので、ご安心ください」
「......前にもそう仰られていましたが、本当に言ってないですよね?」
「言ってないです。......先日来られた方ですね......」
「はい、先日来たものです。覚えていただけてるとは......嬉しいです。」
「ええ、覚えていますとも。貴方のおかげで随分と悩み事をさせていただいたものですから」
司祭は皮肉をたっぷりと込めて男に伝えた。
「そうですか!私の事を沢山考えてくれていたということですね!」
男は大変嬉しそうな様子だ。
司祭は思わず重たいため息をついた。
「......本日はどんな御用でしょうか?」
司祭が疲れた様子で尋ねる。
「やだなぁ。懺悔をしに来たに決まってるじゃありませんか。ここにそれ以外の理由で来るはずがありません。」
「......私の記憶では先日は"懺悔"されていないように思うのですが......」
「いえ、懺悔しましたよ。一般の身でありながら神職に就かれる司祭様に恋をしてしまったことを懺悔したのです。」
「別に、恋をすることは罪ではありませんから」
「ということは......つまり......?」
「だからといって、貴方とお付き合いしようとは微塵も考えておりません」
司祭がきっぱりと言い放つと、男は黙り込んでしまった。
ちょっときつく言い過ぎてしまったことを司祭は後悔した。
「......すいません。きつく言い過ぎてしまいました。......私も色々考えはしたのですが......やはり神に仕える身としては、その......」
司祭は赤面する。
「幼い頃から憧れていた司祭になれたばかりですし、今まで男の人と恋愛をしたこともありませんし......その、ごめんなさい.....」
司祭は頭を深く下げた。男からは見えないと分かっているが。
そのまましばらく沈黙が続いたが、やがて男が静かな声で語り始めた。
懺悔ミステイク-2- -終-