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ゴブリン騎馬部族 VR世界を行く  作者: 三軒真
第二章 ガルヴィくん、初めて決死の、大作戦
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ゴブリンからの贈り物

前回までのおはなし

 なぜか誕生してしまった、「中の人在中」ゴブリン、ガルヴィ。

 人間相手に略奪を行うNPCであるゴブリンなので、人を襲ってご飯を食べている彼らの中で存分にチヤホヤされて言い渡された大事な作戦。

 大規模な略奪の、おとりのような先駆け。

 その第一歩として、村を襲うガルヴィ、村の端までたどり着いて、ようやく、攻撃が始まるのだった。

――― ―――

 即席の土塁、と呼ぶのもちょっと気が引ける程度の盛り土に隠れながら、名前も知らない仲間がおおよそ揃ったのを見届けて、隊長に許可をとって、叫ぶ。

 泥団子を投げるぞ。

「泥団子うてーーい!!」

「石投げ開始!!!」

 わざわざヒントを出してやるのか、と、いくらか迷うところだが……、これはヒントでもある。これから、オレがなにをしようとしているかの。

 まあ、これで伝わるなら苦労しないか。 進めよう。

 陣地になだれ込まれ、反撃しようとすれば石と泥のつぶて。

 オレたちも泥を何発か食らってるし石も投げられてるが……今日は天気もいい。

 バリケードの代わりなのか、戸板を干し草にくくりつけたようなものまで引っ張り出してくるわ、投げるものが無くなってきたのか、向こうも知恵をこらして小瓶に小石をつめたようなのまで投げてくるが、土壁に当たったそれに持ち込んだものとか、そのへんにあった雑草とか入れて投げ返してやる。

―――

「よーし!!

 『クソ投げ班』!!用意せよ!!」

 これは現実の遊牧民やら中央アジアの方の習慣から得たヒントだが……。

 燃料というのは、生活に必要なものである。 とうぜん、オレたちゴブリンだって、寒い夜にはテント――どういう趣向かデザイナーの趣味か、いわゆるゲルって奴なんだが――にこもって火を炊くわけだ。

 なら、である。 大きな木が生えない草原で、人――ゴブリンはどうやって暖をとるのか。

 家畜のクソである。 ええ。 糞。 クソを燃やして暖をとる。

 それを利用する。 乾かした羊のクソに、油を染み込ませたのだ。 火を付ける助けにするため、細く裂いて乾かした繊維を丸めた着火剤をつくり、そこに火を付けて、投げ込む。

 スルーズが疲れた顔で、ポッと火を灯す。

「ありがとう。 おー、さすが妖精の火。 あつあつ。 早いな。」

 よいしょと身を乗り出して投げるが、ちょっと行き過ぎたか? あ、火の粉がとびちっていい具合に着火した。 ラッキー。 土壁に隠れたとたん、さっき顔があったあたりを矢が飛んでく。

「もうちょっと頑張ってくれたら、後でシャーマンのみんなに聞いて、なんかご褒美あげるからね。」

「甘い物食べたーい……。 絶対だからね。」

 隊長なんか高笑いしながら投げだした。 でも、オレ以上に派手に投げてるな。 まだ家は燃やしちゃ駄目だからねー。 マグニはホント上手いな。 さっきノーコン装って投げていた分に早速火が付いてるし、戸板と干し草に載せたのが、じわじわと燃え広がってる。

「あの干し草に上がった炎で射線ふさがったら、村の中を回り込むのも手だな。」

 お前頭いいな。

「フゴ! グルルルルル!」

 おっと、ホゴル。 迎えにきてくれたのかーい。 良い子良い子。」

―――

「うーん。 なんか、新しい魔法使えそうな気がしてきた」

「なんだぁ? 火付けに役にに立つのか?」

「役にたつか、ためしてみような」

 ぶつぶつぶつぶつ。

「妖精さん妖精さん! 土を巻き上げる風の妖精さん!! 水を枯らす火の妖精さん!!

 きこえておったら こいつを矢から守っておくれよ!!」

 隊長の肩をポンと叩く。

矢避けの呪文(ドッヂアロー)!!」

「よし! 隊長! ウンコもって突撃!!」

「はぁ!? わからんがわかった。 オラオラオラオラオラ」

 さすが隊長話が速い。

「全員! 隊長にはこれで当たらないから、投げまくれ!!」

 嘘である。 「狙ってもあたらない」し「流れ弾もあたりにくい」だけだ。

「よっしゃあ!」

 気づけばそのへんのもので作ったのか、マグニやモグテンやモージの手元に、│投石紐スリングが握られてる。

「隊長には当たるなよー!」

 ぶんぶんと振り回して、スリングで次々に投げていく。

 前からも後ろからもウンコだのバリスタのボルトだのに曝されたような隊長だが、しかし、そのすべては、当たらない。 風の精霊へ守りを頼む呪文だから。

 燃え盛るウンコが、くるくると隊長を取り囲みながら、火勢を増し、隊長がだんだん火につつまれていく。 だが、隊長が相手の陣地に飛び込めば、そのまま、包んでいた火は、ちらばり、相手の陣地を燃やしていく。

 よし、これで、2つ目。

 散り散りに逃げていく村人を横目に、隊長に向かって走りだす。

「まぐに! もぐてん! その陣地まかした!! 手柄は山分けでかんべんな!」

「おーう。 まかせとけ!!」

 今は混乱が始まって、矢も飛んでこないし、ホゴルも一緒になって、走り出す。


 隊長が、逃げずに粘ってた村人を投げ技で盛り土に叩き込んでるところに遭遇してしまった。

 おう。 これは…負けてられんが、ウンコ投げが始まると、泥団子もなあ。

 というわけで、その辺に落ちてるもので、良いものがないか探しながら、なんか盾にできるものがないかと……。 うーん。 駄目だな。 他のことしよう。 ホゴルもいるしな。


 どうも、火をつけられることまでは備えていなかったらしく、陣地の方は見事に延焼していくな。

 ファイヤーウ○コ大成功だが、遊んでもいられない。

「隊長! 指揮を返します! ブルツガたちと村の中を荒らしてきますんで!」

「おう! 行って来い行って来い! 追いついてやるからよ!」

 強気じゃないっすか。 この上なく頼りにしてますよ♪

―――

 走りながら、目星をつける。 狙うのは村の備蓄、怪我人を避難させてるだろう村長の家、あたりか。

 正直なところ、備蓄は燃やしたら損だし、女子供に用はない。 だが、怪我人を運ぶからと荷車を持っていかれるのも面倒ではあるな。 あー。 やっぱコレ、ちょっともうちょいなんかいい作戦なかったんですかね? うちの父上もやる気見せてたが、やっぱこう、ちょっとゴブリン、雑。

 とにかく、燃やしたら都合の悪い建物に向かって、スルーズの泥団子をぶつけて消火しながら、走っていく。

―――

 かくして……。 最初の村の襲撃は成功した。

 こちらは死者はでていない。 村人は三割が戦闘不能。 その三割を運んで、女子供が泣きながら逃げていった。 第一戦は、オレたちの勝利には違いないが、とにかく、今は……食料を漁る。

 クロスボウ5機を手に入れて、女子供の避難を、焦土作戦よりは優先させたらしく、村の食料、薪、その他の備蓄は、見る限りほぼ確保。 だが、休んでる暇はない。

 ただちに隊長と手分けして、村の警備のものを決める。 マグニやモーデン、モージを振り分けて、三交代で警備して、村人が火付けにくるのを防ぐことにした。 まあ、それでも、ボロはでるだろうがな。 俺らゴブリンだし。

―――

さて、次の村をどうせめるか……。 クロスボウも、俺らで使う方法はあるもんか。

よし! ウ○コ投げた! 次!!

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