翌日
………。
暑くて目が覚めた。時計を見ると丁度正午。夏真っ盛り、真っ昼間のこの時間はやはり暑い…。身体を起こすとシャワーを浴びに行った。
シャァァァァ…
冷水を浴びながら昨日の事を思い出す。
『隠れてッ!』『忘れなさい』
あの人の事を思い出す。誰かに追われていたみたいだけど…。
ありありとあの場での出来事が思い起こされる。彼女は一体何に追われていたのだろうか?まさか隠れんぼでもあるまいし…。
つらつらと考えていたが、今ふと気付く。
「あー…。惚れたな…」
皇は苦笑いしながら風呂場を出た。手早く着替えると、外に出て自転車に跨がった。
「また会えるって訳じゃねーのにな~」
皇は一人ごちると、駅へと自転車を漕ぎだした。
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「ヤァァァッ!」
ズガシャァァ!
気合と共に投げ飛ばした男が転がっていく。即座に駆け寄り、二度と外す事が出来ないくらいに腕を極める。…男は既に気絶していた。携帯を取り出す。数度のコール音の後、相手が出た。
「こちらロイヤルローズ。目標を確保」
『目標確保了解。応援を寄越す。後はこっちに任せろ。お疲れ』
「ロイヤルローズ了解」
私は携帯を切ると、その場に立ち上がった。男が目を覚ます気配は無い。…が、ほったらかしにするわけにもいくまい。
…数分後、二人の同僚がやってきた。
「お疲れ様です。桐山さん」
同僚の一人が声を掛けてきた。私は気怠そうに手を振る。同僚は苦笑いし、もう一人の同僚と私が倒した男の回収作業に向かっていった。
桐山 燈子。それが私の名前だ。この仕事を始めてからしばらく経つ。危険な事は多々あったが、何とかやってきていた。
「平穏ってのも、タダでは手に入らないものね…」
二日がかりで終わった任務に私は溜息を吐く。ミスは無かったが…。ふと昨日の事に想いを巡らせる。あの青年の事だ。少年と言っても差し支えないだろう。緊急措置とは言え、一般人を巻込んでしまった。結果何も無かったから良かったものの…。
ハァ。と一つ溜息をまた吐く。考えていても仕方ない。もう二度と会う事も無いだろう。
私は帰途についた。