表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『TLS外伝 ~君に捧ぐ詩~』  作者: 黒田純能介
13/14

追憶


…その後、駆け付けた燈子の仲間に俺は保護された。俺は彼女の亡骸を抱き締めながら泣き続けていた。


保護された先で聞かされる。彼女が『CROW』という組織に属していたという事。その組織は闘いの無い世界を作ろうとしている事。



その話を聞き、俺の心は既にどうするか決めていた。


責任者の男に問われる。またも聞き慣れた言葉があった。


『全てを忘れろ』


しかしその後に続く言葉があった。


『もしくは、平穏の為に闘うか』


是非も無かった。俺は今までの全てをかなぐり捨て、訓練の日々に没入する事になった。まるで哀しみを癒すように。




………閉じていた瞼を開く。目の前には墓石。紛れも無くそこには、


『桐山 燈子』


と彫られていた。


…ふと、腕時計に目をやる。もう夕方だ。


「また来るよ」


踵を返し、帰路に付く。


夏の終わりを告げる様に、ひぐらしが合唱を始めていた。


―――俺は、それを聞きたくなくて。持っていた音楽プレーヤーを再生する。軽快なリズムを刻む曲が流れ始める。


…忘れないから。


確かそんな曲名だった。


そうだ。俺は忘れない。哀しみからも逃げない。


生きていく事こそが、彼女、燈子の為になると思ったから。




--------------------------------------------------------------------------------




ガチャッ。


「ただいま~」


皇が事務所へ戻ってきた。それを月野が出迎える。


「あ。おかえりなさーい!」


「うおを!裏葉ちゃ~ん!愛する俺の帰りを待っててくれたんだね!!さぁ!お帰りのキオゴフッ!?」


すかさず繰り出されたボディブロウに皇はもんどりうって倒れる。


「ナ…ナイスブロウ……GJ(グッジョブ)…」


皇は親指を立てると白目を剥いた。そこへ…


ガチャッ。ドスッ!


「フギャッ!」


戻ってきた布津が倒れていた皇を踏んづける。


「……?…皇か。こんな所で寝るな。通行の邪魔だ」


「お、おういえ」


皇は転がってから立ち上がると、腹を押さえながら椅子に座る。布津はそれを見ると、


「トイレか?行けよ」


皇は冷や汗を浮かべる。


「いや、違うんだ。これはその、愛の鞭というか。ね、裏葉ちゃん?」


月野はジト目で皇を睨む。


「いえ、何でも無いです」


皇は視線を反らす。


「………?」


布津は困惑した様子だったが、やがて興味を無くしたのか、ソファに転がった。そこへ月野が声を掛ける。


「布津さん、用事は終わったんですか??」


「あぁ。あっさりとな」


「はい。了解です~。それじゃ、私は帰りますね。失礼しました~」


「バイバ~イ」


皇が手を振る。月野はニコリとすると、出入り口へと消えていった。


「…Zzz…」


いつの間にか布津が眠りこけていた。ご丁寧にアイマスクまで付けて。皇は苦笑いすると、暮れゆく夕日を遮る様に、カーテンを閉めた。


…外ではまだ、ひぐらしの大合唱が続いていた。


8月31日。今年の夏も、もう終わる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ