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3 白魔法使いの訓練

 僕は、今日も魔法の訓練を行うために動物病院に来た。この病院の勝山先生とは昔からの知り合いである。僕のお祖父さんによれば昔は美人だったらしいが70歳になった今となっては美人だったかどうかはどうでもいい情報だ。僕の家系は代々白魔法使いであるが、なぜか回復魔法が苦手である。魔法使いとなった初代の先祖はさまざまな回復魔法が使えたらしい。それが二代目には半分程度になり、三代目は魔法がステータスの魔法しか使えなくなった。三代目は僕のお祖父さんだ。父もステータスの魔法までしか使えない。


 ちなみに、現在僕が使える魔法は5つである。

 ステータス(能力値確認)

 ペインキラー(痛み止め)

 リカバリー(疲労回復)

 クリーン(汚れ取り)

 ドローシネス(眠気覚まし)


 毎晩リカバリーを使い、毎朝ドローシネスを使っている。これが健康にいいか悪いかはわからない。お風呂に毎日入るが、歯磨きはクリーンで済ませてしまう。結構便利である。虐めにあったクラスメイトの机の上の落書きを消すのもクリーンでOK。また、転んで痛がっている人にはペインキラー。魔法はとにかく便利である。これで回復魔法のヒールが使えたらどんなにいいかと思う。


 それで、僕は回復魔法を復元させるために動物病院にいるのだ。もし、この魔法が使えるようになれば、経験値を積みやすくなる。僕は右前足を怪我した猫の治療を行うべく、呪文を唱える。


「ヒール」

 何もおこらない。でも、少し体内の魔力が移動したのを感じる。初めてヒールを唱えた時に比べると、上達しているように思う。ヒールを唱えると疲れるので、今のところ一日に5回が限度だ。そして呪文を唱える際に回復するイメージを鮮明に持つことが大切だと知っている。僕は、5回までヒールを唱えた。今日もまた回復するには至らない。


「英知君、今日はもう終わりなのかい?」


「ああ、今日もダメだった。でも以前に比べて魔力操作ができているように感じるから、ちょっと上達してるんだと思う」


「そうかいそうかい。まあ、もし回復魔法が使えるようになったらその時はよろしく頼むよ」


 僕は、回復魔法の練習を始めて3カ月目だった。初めてここで魔法の練習をさせて欲しいと言った時には、断られるかと思ったが、勝山先生は優しく許可してくれた。実は僕の父も30年前に魔法の練習をしたと聞いた。だから勝山先生は簡単に許可してくれたんだと思う。父が以前に練習させてもらった時には、3回断ったそうだ。しかし、熱心にお願いされて仕方なく折れたらしい。結局父は魔法を覚えられずに終わってしまったが、父のおかげで僕が練習できているとも言える。父には感謝である。


 家に帰って、家族そろって食事をした。父もお祖父さんもまだ元気である。一般の人に比べてステータスは高いので、病気にもなりにくいようだ。お祖母さんは既に亡くなっているが、お母さんはまだ40代で元気である。確か46歳だったかな。あと、僕には小学校4年生の妹がいる。魔法はステータスの魔法しか使えないが、勉強やスポーツで優秀らしい。それに僕と違い人気者で友達が多い。兄の僕から見ても可愛い。


 僕は、家に帰ると妹テレビを見ているところだった。「宿題なら終わったよ」と言っている。


「美樹、お母さんはまだ帰ってないの?」


「夕食の材料を買いに行っているところだよ。」


「そうなんだ。お腹すいたな。とりあえずお手伝いでもしようか。美樹、お手伝い今日は何ができる?」


「お母さんの料理の手伝いぐらいかなあ? 掃除はお兄ちゃんしてくれるでしょう? クリーンの魔法で」


「まあ、そうだね。クリーンの魔法を覚えて結構上達してきたしね。今、ヒールに挑戦しているんだけど、なかなか上手くいかないんだよね」


「魔法、私も覚えたいなあ。一生ステータスの魔法しか使えないなんて魔法使いとしてはもったいないしね。なんて、おじいちゃんやお父さんに聞かれたらショックを受けるから大きな声では言えないけど、やっぱり人助けとかしないとレベル上がらないよね?」


「白魔法使いだから……。まあ、お母さんの手伝いとかでも経験値稼げるし、少しずつやってみたらいいよね」


「まあ、そうしてるけど、ステータスオープン」


 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 □氏名 畠山美樹

 □職業 白魔法使い

 □LV 12

 □力の強さ  57

 □体力    43

 □知力    71

 □魔力    33

 □素早さ   22

 □運の良さ  31

 □経験値   40

 次のレベルまで

 14

 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「クラスの子たちに比べればステータスは3倍以上なんだけど、お兄ちゃんのステータス見ると桁が違うからなあ。お父さんのステータスはもう少しで追い越せそうだけど」


「美樹のステータスも小学校4年生にしては凄いと思うよ。僕が小学校4年生の時と比べてもそんなに悪くない」


「本当? じゃあ、私も頑張ろうかな?あっ……お母さん帰ってきた。お母さん料理手伝うよ」


「ただいま、お腹すいたよね。美樹、お手伝い助かるわ。お願いね」


 夕食の準備は一時間で整い、お父さんやお祖父さんも一緒に食事をする。うちの家族は基本的に仲が良い。白魔法を使う家族だから、基本的に悪人はいない。食事をしながらいろいろ会話をした。美樹はクリーンの魔法を覚えたいと言っている。僕は、クリーンの魔法を覚えたのはレベルが30の時だから、まずはレベルを上げる必要があると思うと言うと、経験値稼ぎ頑張らないとなあと言っている。僕はヒールも経験値を稼いでレベルを上げないとダメかなと思うのだった。


 翌日


 朝、学校に行った。約束通りに僕は加奈子さんに会い、大井田君が実は加奈子さんを好意的に思っていることを遠回しに伝えるのだ。僕はいつもより30分早く登校して加奈子さんを待った。すると思ったより早く加奈子さんが登校してきた。慌てて僕は声をかけた。


「加奈子さん、ちょっといいかな」


「あ、うん。いいよ」


「実は昨日大井田君と話をしたんだ」


 加奈子さんは、驚いている様子だった。まさか昨日の今日でそんな話になるとは思っていなかったのだろう。かなり心配そうな表情をしている。


「いや、実は大井田君は加奈子さんが嫌いなんじゃなくて、……ええと……なんだ。説明が難しいけどその逆なんだ。だから、もう絶対加奈子さんのことは虐めないから安心して欲しい」


「嫌いじゃなくて、その逆って……。ええ? 無関心?」


 確かに、好きの反対は嫌いじゃなくて無関心だと聞いたことがあるが、嫌いの反対が無関心は初めてだ。


「いや、その……ごめん。これ以上は言えないけど、とにかく反省していて加奈子さんに謝りたいそうだ。今までのことを許してやってくれないかな? 僕も大井田君の謝罪に付き添うから」


「まあ、畠山君がそう言うなら。大井田君と二人きりは恐いから」


「安心して欲しい。大井田君がもう加奈子さんを虐めないのは保障する」


 伝えるべきこと伝えた僕は、次に大井田君を待つ。15分後ぐらいに彼は来た。


「おはよう。大井田君。早速加奈子さんに会いに行こうか。もう、加奈子さんには伝えてある」


「ええっ? ……早いな。あ、ありがとう……よろしく頼む」


 大井田君は、なぜかもう伝えてあったことに驚いている。タイミングとしては朝が一番いいと思うんだけど。


 僕は、再度加奈子さんを呼び出し、人気のない廊下で大井田君と会わせた。大井田君はすぐに加奈子さんに謝った。


「加奈子さんごめんなさい。今まで大越さんが……あの……か、可愛かったので悪戯していました。もう絶対にしないので許して下さい」


 大井田君は謝りながら顔が赤い。告白は厳禁だぞ。もうほとんど告白みたいになっているけど。


「本当に? ……もういじめない?」


「絶対に虐めない。約束する。むしろ、虐める人がいたら大越さんを守る」


「じゃあ、もう許すね。もうしないでね?」


 大井田君は、絶対に虐めないと約束して安心したのか、加奈子さんは笑顔になった。僕はレベルが上がったのを感じた。僕はトイレに行くから先に教室に行ってねと二人に伝え、ステータスを確認した。


 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 □氏名 畠山英知

 □職業 白魔法使い

 □LV 45

 □力の強さ 227

 □体力   123

 □知力   138

 □魔力   236

 □素早さ  225

 □運の良さ 133

 □経験値 4547

 次のレベルまで

 695

 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 今日こそヒールが使えるようになるかもしれない。僕は、動物病院でヒールを試したくなり早く学校が終わらないかなと思うのだった。


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