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賢者と魔法が下手なポメラニアン  作者: 霧丈來逗
1章 賢者との生活
9/62

SS 二人の誕生日パーティー、その2

前半⇒恭珠

中半⇒キュラス

後半⇒シャルロッテ


 待ち合わせ場所に行く途中にキュラスさんがなにかに気づいたように声を上げる。


「あっ。ごめん、恭珠ちょっと待ってて」


 そう言うと一人で近くの路地に消えていってしまった。一体何があったのかと思っているとすぐに路地から姿を現す。



「お待たせ、恭珠。んじゃ、いこうか」


 

 入っていったときは金色だった髪が出てきたときは黒色になっていた。しかも、髪をハーフアップにしている。一瞬戸惑ったけど、また髪色を変えたんだとすぐに気づいた。


 噴水の前に行くとリザイナさんがいた。髪は緑色だ。



「早いね、リザイナ、薬の研究会って今日じゃなかったっけ?」


「あぁ、それがさ、延期になったんだよ。だからはやく来れた」


「延期ねぇ、研究員たちがっかりしたんじゃない?せっかく用意したのにーって」


「いや、むしろ喜んでたよ、もっとギリギリまで試行錯誤できるってさ」


 その言葉で二人は笑い始めた。私にとっちゃ薬の研究会?は?なにそれおいしいの?って感じだけど....。リザイナさんがそんな私に気付いて声をかけてくれた。


「後々教えるよ」


「さ、そろそろ行こっか」


 キュラスさんの言葉でさっきと同じようにお店をまわりはじめる。いろんなものを買ったり見たりしながら進んでいた時に私は思わず口を滑らせてしまった。


「あ、さっきも行った、あの宝石のお店に行きましょうよ....」



 失敗に気づいて慌てて取り繕うとしたのだが、リザイナさんの後ろから射貫くような目でこちらを見るキュラスさんに気付き、何も言えなくなってしまった。

 

 

「え、さっき行った宝石の店?いつの事?」


 まずい。リザイナさんが聞いてきたので本気で焦った。


 どうしよう、どうしよう。さっきのこと言ったら全部ばれるから絶対ダメだし...ナイラさんたちと来たことがあるって言っても、そんな暇なかったからウソがばれるし....


「待ち合わせ場所に行く前に早く来てそこらへんを見てたんだよね」


 キュラスさんがフォローしてくれた。そ、それに合わせるしかないと思った私は付け足す。


「そ、そうなんですよ....そのお店が気になったから、ちょ、ちょっと見てたんですよ」

 

 明らかに焦っているのが伝わる私の言葉だったがリザイナさんは納得したみたいだった。


「ふーん、そうなんだ、じゃあ行ってみよっか」


 あとで、キュラスさんに謝らないと....あの視線、ほんとに怖かった....


 

 そんな感じで、危ないところもあったけど何とかキュラスさんのお陰で乗り切れた。怖かったけど。


「それじゃ」


 リザイナさんは動物に姿を変え去っていった。その様子をみながら私は、あぁ確かに猫とレッサーパンダを混ぜた感じだと現実逃避をするように考えていた。





―――――――――――――

買い物の後




「ナイラー、それとって」


「いいよー....はい。ねえ盛り付けってってこんな感じでいいかな?」


「ありがと....すごい、フィナ上手」



 二人の声が聞こえて、すすんでるかなと思い扉を開ける。


「どう?二人とも、順調?」


 すると料理をしていた二人がすっ飛んできて視界を遮る。


「ダメです、先輩は入ったら」


「そうです!みんなと一緒に楽しみにしててください!順調です!」



 私が企画したんだけどと思いつつも2人が言うことも分からなくはないのではいはいと返事をして部屋から出る。


「わかった、じゃあこれ渡しとくね」


 私は魔法陣が書いてある紙を二枚渡した。様子見もしようとは思っていたがこれが本題だ。


「なんですか?これ?」


「こっちの小さいほうが料理とかを運ぶ用。魔法陣を広げてから皿を置いてね。一応会場の机の上につながってる。もう一つがあなたたちの移動用。意外とルクールは遠いから、遠慮なく使ってね」


「わぁ、ありがとうございます!どうやって運んでいいか迷ってたんですよ。私たちの移動用もあるなんて本当に助かります。」


「私が書いたものだけど大丈夫なはず。簡単なものだから....料理頑張ってね」


 そう言って私は背中を向ける。二人の元気な返事が聞こえたのできっと上手くいっているのだろう。私は外に出てルクールの広場へと飛び立った。








――――――――――――――

買い物から数時間後







 さーて、あと少しで約束の時間か、そろそろ行こうかな?

 自分の執務室を出てキュラスの執務室の前へ行くとリザイナと恭珠がいた。


 早くない?でもまぁ、私がみんなを連れてかないといけないもんね。


「みんな、早いね」


「えーでも、もう少しで時間になりますよ」


「まぁ、間に合ってるからいいんじゃない」


 なんだか私が遅刻してきたような言い方でイラっとするな~と思いつつもきっとそんなつもりはないのですが深くは気にしない。


「うん、時間だ」


 リザイナの一言で私は我に返る。私はキュラスに言われた通り3回ノックしてから扉を開けようとした。

 すると急に何か扉の向こうになにかの魔力を感じた。私は扉を開けるのをためらった。

 


「どうしたんですかシャルさん?開けないんですか?じゃあ私が開けますよ?」


 私が静止する間もなく恭珠が扉を開けた。キュラスが言っていたので危険なことではないと思うが、心配だったので恭珠の後ろから様子を伺う。




「「「なにこれ?どういうこと?」」」


 三人の言葉が被った。そこには空が広がっていたのだ。恭珠が身を乗り出して下を覗きながら言う。


「あ、でも下に何かクッションみたいなのが.....あ、やば!」


「そんなに身を乗り出すと落ち....遅かったね」


「うん」


 私とリザイナは、はぁとため息をついた。すると下から楽しそうな声が聞こえてくる。


「シャルさーん!リザイナさーん!下になんか飛び跳ねるものありますよー!」



 下を見ると恭珠は楽しそうになにかの上で飛び跳ねている。とりあえず怪我はしていなかったようなので安心した。リザイナと顔を見合わせる。


「あー、行く?」


「はぁ、いくか」



 そのまま扉からジャンプする。割と高さはあるようだったが特に問題は無い。私たちは近くの地面のようなところに着地する。

 

 恭珠は...ずっと変な飛び跳ね方をしている。


「ちょ、助けてください。戻れないんですけど」



 すると、リザイナが無言でその跳ねるものに登る。そしてスイスイと飛び跳ねながら恭珠を助け戻って来た。


「いや、助か、りました、よ、リザ、イナ、さん」


「めっちゃ息きれてんじゃん。あと、なんか下手すぎじゃない?」


 笑いながら言うとリザイナも加わった。軽く言い合いをしていると、急に声が聞こえてきた。


「みんな、いるね」



 姿は見えないがそれは確かにキュラスの声だった。周りを探すと目の前に姿を現す。それを見つけると三人が一斉に話し出す。




「待って、あの扉ってルクールにつながってるんじゃなかったの?」


「そうだよ。それに何?この大掛かりな仕掛け?」


「ていうか、居たなら助けてくださいよ…」

 


 口々に文句を言い募る私たちにキュラスは苦笑していた。

 

「わかった、順番に応えるから。まずシャル....最初はそのつもりだったけどこっちの方が楽しそうだったからこれにした。

 はい、次、リザイナ。これは魔法陣と空間転移魔法と私の魔力を混ぜて作った仕掛け。

 最後、恭珠。助けるのは無理...みんなが見ているのは私の幻影、触れられないの。以上」


 キュラスは淡々と私たちの疑問に答えると、ここのルールを説明し始める。

 要するに、ルクールに行くには三つの空間をクリアしなくてはならないらしい。で、ここの空間は飛び跳ねながら向こう側に行けばいいみたい。


「じゃ、頑張ってー」


 そう言い残してキュラス、正しくは幻影が消える。ルールを聞く限り、やらないとルクールには行けなそうなので諦めて飛び跳ねる物の上に登る。


 やってみた結果を簡単に言うと私たちはスイスイ行けたけど恭珠が下手すぎて二人で大爆笑をしていた。

 ほんと、おなか痛い....


「な、んで、二人、と、も、そんな、簡、単に、行っちゃ、うんですか」


「いや、恭珠がド下手なだけじゃない?」


「あー、確かにやばかった。ほんとにおなか痛くなりそう」

 

 涙を拭いながら笑っていると、またキュラスが現れた。恐らくまた幻影なのだろう。


「お、キュラスが来たってことはこの空間はクリアってこと?」


「うん、クリアだよ」


 キュラスはおめでとう、軽く拍手をしながら答える。



「さぁて、次のステージはシャルと恭珠は嫌がるかもね~」


 嫌がる…。それを聞いてなんとなく想像がついてしまった。


「まぁ、行ってからのお楽しみだよ、次はフィナが説明してくれるはずだよ。じゃ、頑張って~」



 キュラスは聞く暇もなく消えてしまった。

 私たちが苦手なものね…真っ暗闇じゃないといいな。

 













今回で番外編終わるつもりだったんですが、もう一つ入れてから、番外編終了にします。

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