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賢者と魔法が下手なポメラニアン  作者: 霧丈來逗
1章 賢者との生活
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4、三人の正体は?



「じゃあ、まず最初に賢者のことを説明するのがいいかもね」



 キュラスさんは静かに説明を始める。



()()()()()賢者というのは、魔力量が多くてほかの賢者や国王に認められた者のことを指すの。魔力量が多くてもそれをコントロールできなくては賢者にはなれない。また、反対にそんなに魔力量が多くなくてもコントロールが上手ければ賢者になれる。あと一番大事なのが、()()()()()()()()であること」


「ま、簡単にいうと、この国の中でも魔法がめちゃくちゃうまくて、尚且つ()()()()()()()人達だよ」


 シャルさんが簡単にまとめてくれる。たしかにわかりやすいがどうにも理解できないことがある。



「あの、()()()()()()()というのは?」


「実はそれが一番大事なんだよね。賢者たちはそれぞれを象徴する宝石があるんだけど、それに選ばれると光るんだよ。それが選ばれるって意味。どんなに優秀でも宝石が光らなかったら賢者にはなれない」



 まあどういう基準で宝石が選んでるのかは私たちでも分からないけどね。とシャルさんが肩をすくめる。


 そういうものか。私がふんふんと頷くとリザイナさんが続きを話始める。



「そして、すごい権力を持っている。政治とかは王族(あっち)が言わない限り、主だって動かしたりはしないけどね」


 そこで疑問がが浮かんだ。リザイナさんの言い方が曖昧だったせいもあるかもしれない。


「...えっと、どのくらいの権力を持ってるんですか?」


「う~んとね、国王と同じくらい?」


「そう。魔力とか戦闘力だったら余裕で勝つけど....持ってる権力は実は対等。あまり意識してないけどね」



 シャルロッテさんとキュラスさんが平然といってのけた言葉に私は戸惑いが隠せなかった。未だ賢者という存在はよく分からないが国王と同等の権力を持っていると言われれば嫌でもその地位の高さが分かる。


「そんな偉い人たちのことを、私はさっき歴史上の偉人って言ったんですか?」


「まあ、そうだね」


「あ、ちなみに今のところ賢者は十人いるよ」



 リザイナさんの言葉を聞いた私は冷や汗が背中を伝う。賢者が十人も…。



「じゅうにん…この国の人たちは賢者の方々がどんな人か知ってるんですよね」


「うん、知ってるよ、小さいころから聞かされるもんね」


「お、お願いします。私にも教えてください」


「ん、いいよ~」


 馬鹿にすることもなく、すぐにシャルさんが快諾してくれた。その反応にほっとする。知り合いがいる訳でもないのに一般常識を知らないのはまずいだろう。


「えっと、容姿を明確に覚えてない人もいるけど、みんなこれだけは確実に知ってる....現在の賢者は全員女性でそれぞれ…ダイヤモンド、ローズクオーツ、アンバー、カイヤナイト、アメジスト、ルビー、ラピスラズリ、エメラルド、ターコイズ、トパーズ、オパールの大きな宝石のついたペンダントをつけているの」


 続きをリザイナさんが引き継ぐ。



「賢者達が名乗っている名前は賢者名と言って本名じゃない。賢者になれるのはその個人の力。特殊な感じなんだけど本名は使わないし、ましてや名字も使わない。」


 そしてキュラスさんが説明を引き継ぐ。



「賢者名は就任式で国王にもらう。そして、賢者名の後ろに苗字みたいな感じで宝石の名前がついている。だけどオパールの賢者は今のところ、まだ()()()()()()()


「見つかってないってどういうことですか?」


「最初に言った通り、宝石に選ばれるからふさわしい人がいないと宝石が光らないんだよね。賢者になるべき人でもその時点でふさわしくないときは宝石が光らない」


「ま、あくまで()()()()()()だからその時は駄目でも賢者にふさわしくなれば宝石が光る」


「不思議ですね」


 そこで私は唐突に気づく。リザイナさんたちも大きな宝石が付いたペンダントをしてる。なにか見逃していないか?とてつもなく嫌な予感がした。



「皆さんも宝石のペンダントをしていますよね...それに名前にも宝石の名前がはいっている....」


「ん、やっと気付いたみたいだね....」


 リザイナさんはクスクス笑っている。


「そ、お察しの通り私たちが賢者だよ!あなたを介抱してくれたナイラとフィナもね!」


「え、えええええええーーーーーーー!!」



 私はこれ以上ないくらい驚いた。そのせいで城ということも、目の前に賢者がいることも忘れて大声で叫んでしまった。それと同時に驚きすぎて尻尾と耳が出てしまったことにも気づかなかった。


 私、賢者に助けられてたの?しかも気付かないでふつーに話してたの?嘘だ...夢なら早く覚めて...






_______________







 キュラスさんが冷めた紅茶を淹れ入れなおしてくれたのでそれを一口飲んでとりあえず落ち着く。確かに3人が賢者だとすれば案内してくれた男性が緊張していたのにも合点がいく。

 やっと現実を受け入れた私は意を決して口を開く。



「あの、私は、み、皆様のことを何と呼べば...」


 しどろもどろになっている私を見てリザイナさんが笑う。


「そんなに固くならないでいいよ。いっそ敬語無しでいいし、それに名前だって呼び捨てでいいよ」


「そ、それは無理です」



 さすがに畏れ多すぎるのでぶんぶんと首を振ってお断りさせていただく。こんな何も持たないような小娘がそんな大それたことはできない。


「じゃあ最低限の敬語ってことにしよっか?名前は....さん付け?あ、いっそちゃん付けでもいっか!」


 シャルロッテさんがニヤッと笑って提案する。すると今まで静かだったリザイナさんが急に目を見開く。


「いやいやいやいや、ちゃん付けは無理!ぜっっっったいに、いやだ!!」

 

 リザイナさんが即却下する。相当嫌なようでさっきまでの落ち着いたのにすごい変わりようだった。

 そんなことを考えつつも私は内心冷や汗しかないていない。現実を受け入れたくない訳じゃない。さっき受け入れたし、今は逃げたいだけだし…



「じゃ、さん付けでいいんじゃない、どう?恭珠さん」


 私はキュラスさんの言葉に頷いた。まあ、それでも十分畏れ多い。まあ、でもこれ以上断るのもそれはそれで失礼だろう。



「はい、そうします。それと私のことは呼び捨てでいいですよ。さん付けって慣れてないので...」


「わかった。じゃ改めてよろしく恭珠....それと、一ついい?」


「なんですか?キュラスさん」



 急に苦笑いを浮かべたので不思議に思って首を傾げるとキュラスさんが私の方を指さす。



「耳と尻尾が出っぱなしだよ」


 えっ?

 とりあえず頭に手をやると耳が出ていた。...いつの間に出てたんだろう?ちゃんとしまってたはずなのに…


「たぶん、さっき驚いたときに出ちゃったんだと思う」


「でもかわいいね。ちなみに恭珠は何の獣人?」


 リザイナさんは冷静に指摘してくれたがシャルロッテさんは興味があったようだ。



「ポメラニアンです。でも…狼にあこがれてます!」

 

 狼のことは言わなくても良かったかもしれないがこれは大事なことだ。するとリザイナさんが独り言のように呟く。



「ポメラニアンか...ラピスラズリの賢者は狼だったはず」


「そうなんですか?いつか会ってみたいです!」


 目をキラキラさせてリザイナさんを見ると苦笑いしながら「多分いつか会えるよ」と言ってくれた。ぜひ会ってみたいな。でも会えないのかな。



「あっ...ちなみに皆さんは何の獣人なんですか?というか獣人ですよね?」


「うん。獣人だけど...知りたい?」


「知りたいです」




 シャルロッテさんの問いに赤い目をキラキラさせながら答えると三人が同時に耳やしっぽを出してくれる。力が強くなるにつれて耳やしっぽを出さなくなるので三人がなんの獣人か分からなかった。例外として力を誇示するために獣人の特徴を出している人もいる。



「私は猫だよ~ついでに魔法属性も言っちゃおっか。氷と雷だよ~」


 猫耳と尻尾を生やしたシャルロッテさんが言った。髪色と同じ紺色の柔らかそうな毛が生えている耳と細長いしっぽが生えている。


「私は竜。属性は闇と風」


 うろこに覆われた翼と尻尾、角を生やしたキュラスさんが言う。こちらも髪色と同じ淡い紫色だ。初めて竜を見たけど鱗が光を反射してキラキラ輝いている。


「私は~、レッサーニャンダ。勝手に名前はつけたんだけどレッサーパンダと猫の混種だよ。属性は地と木」



 こちらはもっと珍しい。混種は色々いるけどレッサーニャンダとはほんとに珍しい。でも見た感じは猫で少し縞模様がある程度だ。


 それにしてもかっこいい!

 私が感激しているとコンコンと扉をノックする音が聞こえた。すると三人は瞬時に元の姿に戻る。仕方ないけどちょっと残念。



「どうぞ」


 キュラスさんの返事の後にローブを着た人が入ってくる。三人が賢者だからだろうけど深々と頭を下げている。一緒のテーブルに着いている私は一体どう思われてるんだろう。



「皆様そろそろ会議の時間です」


「わかった、今行く」


 シャルロッテさんが短く答えた。会議…やっぱり賢者ともなると忙しいんだろうな。



「恭珠、もう日は落ちたみたいだしそろそろ部屋に戻った方がいいよ。また明日会おう」


 リザイナさんがこちらに向き直って言ったあと、ローブを着ている人に指示をだす。



「部屋に案内してあげて」


「かしこまりました」

 

 ローブの人が返事をすると三人は立ち上がってテーブルから少し離れて一箇所に集まる。私も慌てて立ち上がった。


「今日はありがとうございました。楽しかったです」



 私がお礼を言うと三人が微笑む。


「久しぶりに楽しかったよ」


「こっちこそあまりちゃんと話せなくてごめんね」


「また改めて話そうね」



 私が返事をすると三人の足元に魔法陣が表れて光と一緒に消えた。でも手を振ってくれていたのは見えた。三人が扉に向かわなかった理由が分かると同時に驚いた。まさか魔法陣が間近で見られるなんて思わなかったからだ。

 その後私は魔法陣に興味が湧いたので後で聞こうとウキウキしながら案内に従って部屋に戻った。










やっと恭珠は五人が賢者だということに気が付きました。

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