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賢者と魔法が下手なポメラニアン  作者: 霧丈來逗
2章 キュラスの過去
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44、闇竜の国を観光



 先に書いておきます。


 ローゼ⇒恭珠

 ザラ⇒リザイナ

 ルク⇒シャルロッテ

 アリス⇒イレーネ(キュラス)






「キュラスって、今日は来れないんだよね?」


「なんかどこか行く言ってたよね?」



 不満げに言うシャルロッテと恭珠にリザイナが指摘する。



「いやさ、もし何もなかったとしても王族だし『漆黒の竜』だよ?そう簡単に行けないって」


「まあ、普通ならそうですね」



 リザイナにここにいないはずの人物が返した。特に気にした様子もなく悠々とこちらに歩いてくる。


「キュラスじゃん!何でいんの?」


「そうだよ!どこか行くんじゃなかったの?」


「言い方が悪いですよ?いえ、行きたい場所は夜に行った方がいいので…久しぶりに街も見に行きたいですからね」



 じゃあ何で昨日行けないって言ったんだよ…

 そんなことを心の中で突っ込みながらも本当は四人で廻れることがうれしい。



「でも、そのままだと…ばれるよね?」



 リザイナの一言にみんな頷く。


「別に、変装ぐらいしますよ?髪と目の色が違えばいいでしょう」



 イレーネはすぐさま髪を赤紫にして目を水色にする。


「こんな感じ。口調もいつものにするよ。

 一応、全員変えた方がいいと思うけど?」


「りょうかーい!」



 シャルロッテは翡翠の髪と目に、リザイナは白い髪と赤い目になった。



「あれ?恭珠は変えないの?」


「いや、迷ってる。何色にするか…」


「そこまで迷わなくてもいいと思うんだけど…」



 少し呆れた目で恭珠を見ていたが、これでは決まらないとシャルロッテが提案する。


「もう、あれでいいんじゃない?反対色で。思い切って逆の色にしちゃえばいいじゃん」


「逆の色…それもいいね」



 恭珠はすぐに色を変えた。ダークブルーにオレンジの目だ。


「うん、意外といいかもね。私の準備はオッケーだよ。一応名前も変えておこうかな。かっこいいし。」


「間違えないでね?途中でいつも通り呼んだらダメだからね」


「なんか、私が間違えそうな気がしてきた…」


 リザイナがそう言っているのとシャルロッテに心配されていることを考えて恭珠は決める。


「本名…というか、学園の時の名前でいいじゃんか。呼び方そのままでさ」


 するとみんな納得したように頷く。


「それなら、考えなくていいし楽だね」


「そんなに間違えないでしょ?ルク、ザラ、アリス、ローゼ。大丈夫でしょ」


 恭珠が順番に指さしながら名前を言う。


「私は結局アリスなの?アスでいいんだけど…」


「え~、だって男子みたいじゃん。」


「そうだよ!アリスでいいって、かわいいもん」


「なんか似たような名前の人いたし」



 三人に最もらしいと言えばそうな理由を言われてイレーネは反論をあきらめる。



「じゃ、行こうよ。時間は有限~」


 もうすでに待ちきれない様子の恭珠にせかされる。



「そんなに急ぐと転ぶよ」


 ステーン!


「ほんとにやってるよ。リザイナの言うとおりだね」


「大丈夫?」


「うん、ちょっとこけただけだから」



 恭珠はゆっくりと立ち上がる。



「まあ、行こう」



 今度は走り出さずにゆっくりと歩いて行った。












「わあ~、すごい。いっぱい人がいるね~」


「でも、真っ黒ってそんなにいないんだね」


「真っ黒は王族ぐらい。まあ、たまに真っ黒もいるけどね」



 確かに街にいる闇竜たちはメッシュが入っていたり毛先に行くにつれて色が薄くなったり変わったりしている人ばかりだ。



 

 最初は急いでいてしっかり見ることのできなかった店を見て回る。



「わあ、これ美味しそう~!」


 恭珠が露店で売っているサンドイッチに目を輝かせる。


「ほんとだ~。色々入ってるね」


「うん。美味しそうだ」


「これは、珍しいものが入ってるんだね」




 アリスことイレーネが店主に声をかける。


「おや、気づいたかいお客さん。これがいいアクセントになるんだよ。どうだ、食べてみないか?」


「そうだな。じゃあ、二つもらおうかな」


「毎度」



 アリスが二つに分けてみんなで食べる。


「ねえ、アリス何が入ってるの?さっきなんか言ってたよね」


「まあ、食べたらわかる。美味しいよ」


 そう言ってアリスが最初にサンドイッチに口を付ける。その様子をみて三人も半信半疑ながら食べはじめる。


 その瞬間三人は目を見開く。そして自らの手に持っているサンドイッチを見た。その様子は驚くほどそろっていて同じだった。


「なるほど、ソースにベリーを使ってるんだ」




 恭珠の率直な感想にアリスは首を振る。


「実は違うんだよ。そうでしょ?」


「本当に鋭い人だ。実は、ソースに使っているのはこんな果物なんだ」


 そう言いながら店主が取り出した果物は周りが毛でおおわれていた。これが果物だとは思わない気がする。


「実はね。この果物は中心の種の中にある部分だけを食べるんだ。この実からも少ししか取れない。ベリーみたいな味がする南国の果物なんだ。珍しい果物でね。まさか気付かれるとは思っていなかったぜ。気づいたのはあんたくらいだ」


「私もたまたま見たことがあったからね。本当においしいと思ったから覚えていたんだ」


「そうか、それはさすがだ」



 店主は豪快に笑う。



 三人はもう一度サンドイッチをまじまじと見つめて食べる。アリスもそんな様子をみて微笑みながら自分もサンドイッチを食べる。


 半分にしていたこともあってかそれほどの時間もかからずに食べつくした。


「うん、美味しかった。」


「次行こうか。」


「そうだね」


 四人はまた次の店を目指して歩き出す。



「なんか店多くない?」


「国王が今の代になってからだよ。商業に力を入れているんだって」


「へえ。にぎやかになるのはいい事かもね」


「頑張ってるね」



 こんなこと聞かれたらどう思われるかわからないようなことだが特に聞いている人はいないようだった。



「ねえ、この雑貨屋見たい!」


「いいよ。色々ありそうだね」


 

 四人は中に入って行った。


 中には様々なものが置いてあった。


「これいい。めっちゃ可愛いじゃん。」


「ああ、ルク好きだよね。こういうの」


「ローゼ、これなんてどう?」


「ああ、いいね…って何それ?」


 

 ルクがとったものはカチューシャだった。


「って、角付きカチューシャじゃん。なにこれ、かわいいけど似合わないしつける機会無いから!」


「ああ、竜の角だよそれ。それ、ここで売って買う人いるのかな?」


「ほかの種族の人とかじゃない?同じような気分を味わいたい…みたいな」


「ザラつける?」


「いやいや、何言ってるの!つけるわけないでしょ!そういうアリスは似合うよ」


「いや、角あるし。意味ないよ」



 ザラとアリスの押し付け合いを見ていたローゼはニヤリと笑う。


「ねえ、ザラ、アリス。ルクに付けてもらえばいいんじゃない?」


「は!?なんで私?絶対いやだよ。つけないからね!」


「いや~、ルクなら似合うんじゃないかな?かわいいよ~きっと」


「…ローゼ、それ誕生日プレゼントにしてあげようか?」



 ルクが黒い笑みを浮かべてローゼに言う。すると、目に見えてローゼが慌て始める。


「いやいや、それはいらない。ちょ、ホントにやめてよ?謝るから、ごめんって」


 ルクはその言葉を聞いてやっとそのカチューシャをもとの場所に戻した。


「マグカップがある。種類もけっこうじゃん。」


 色々と見て回っていたザラが声をかける。


「え、ホントに?」


 三人もザラのもとに向かう。


「すごい。たくさんあるね?」


「あ、これアリスいいんじゃない?」


 ルクが手に取ったのは星と月をモチーフにしたデザインが描かれたマグカップだった。


「ああ、いいね。欲しいと思ってたんだ。」


 アリスもそれを手に取る。そしていろんな角度から見ていた。


「うん、これいいね。買うよ」


「お、ホントに~?じゃあ、私も買おう」



 アリスが買うと言った瞬間からみんな商品を見始める。アリスもゆっくりと見て回っていた。



 結局、アリスとザラはマグカップをローゼは暖かそうな帽子を、ルクはマフラーを買った。


「ねえ、そろそろお昼にしない?サンドイッチは食べたけどちゃんとどこかで食べようよ?」


「そうだね。でも、何食べる?」


「う~ん、特にない」


「私もなんでもいいかな?」



 四人がう~んと唸っているとザラがあっと声を上げる。


「アリスの行きつけみたいなところはないの?」


 ザラの一言にルクとローゼもそれがあったかという表情をしてアリスの方を向く。


「う~ん、あることにはあるけど…なんでもいいんだよね?」


「うん、いいよ」


「ここら辺の事わからないし」


「おいしかったらなんでも」



 ほかの三人の言葉を聞いてからアリスは頷く。



「わかった。私が子供のころになじみがあるところに行くよ。」


「うん、いいよ~。楽しみ!」



 そして四人はアリスを先頭にしてその店に向かうことにした。





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