43、裁きの第二幕
「それでは、続いてクーデターを起こした者たちの裁きを始める。」
クラール宰相の声が再び響くと最初にフロワールが入ってきた扉が開き数人が入ってきた。
今度はしっかり拘束されており騎士が歩かせている形だ。その集団は真ん中に来ると跪く。その後ろには騎士が控えていた。
これが一般的なのだろう。そう、考えてみるとフロワールがいかに特別だったかが伝わってくる。
シュバルツとイレーネは射貫くような厳しい視線を浴びせている。無表情だからこそ、怖い。
「この者らは特に中心にいた者たちだ。主犯はポルクラーナ侯爵だ。」
すると、貴族たちが少しざわめく。まさか、そのようなことを犯すとは思っていなかったのだろう。
「今回のクーデターを起こした者はみなポルクラーナ侯爵の派閥の者であった。王家に刃を向けあまつさえ王権をとろうなどと動いた罪は重い。......よって、この者たちを死刑とす。」
「...はっ、殺すなら殺せ。侯爵として殺されるんだ。こんな女が『漆黒の竜』なんて世も末さ。こんな国、とっくに見限っているわ」
後ろでとらえられている貴族たちは顔を青くしているが一番前にいるポルクラーナ侯爵はイレーネを睨みつけて笑っている。
まわりでみている貴族たちは顔をひきつらせている。クラール宰相も一瞬目を見開いていた。
それに比べてイレーネは特に変化がなくただ、見ている。シュバルツも眉間にしわを寄せている。
「宰相、続きを」
「はい、陛下。」
シュバルツに続きを促されクラール宰相が話し出す。
「なお、ポルクラーナ侯爵は先代宰相とそのご家族を殺害した罪もございます。」
「なっ」
その一言を言った瞬間、貴族たちはざわめきポルクラーナ侯爵はうろたえ始めた。
「しょ、証拠はあるのか?宰相一家を殺したのはあの女だろう?」
「この期に及んで、まだ私に罪を着せるのですね。いいでしょう。証拠ならありますからね。
....入りなさい」
イレーネがやっと口を開きそういうと扉が開き一人の男性が入ってきた。
「なっ」
「だ、旦那様、申し訳ございません。圧力に耐えられませんでした」
「だ、黙れ。こんな男など知らん。」
いまだに白を切るポルクラーナ侯爵にイレーネは言葉を続ける。
「あら。この者はポルクラーナ侯爵家の使用人ですが?それも、私が子供の時からのね」
そういうとポルクラーナ侯爵は悔しそうに歯を食いしばりイレーネを睨みつけた。
「ああ、そうだ。あんな男。ただ、王と仲が良かったから宰相になったんだろう?まったく、俺が変わってやろうと思ったのに邪魔しおって。
.....だが、俺はもう死刑だろう?それ以上の罪はない」
するとイレーネはふふふと笑う。
「あなたにぴったりの刑を用意しましたから安心してください。....クラール」
「はい。まずは侯爵の地位を剥奪します。そして、二年の間牢で囚人と共に過ごしていただきます。その後死刑としましょう」
「陛下、発言をお許しください」
クラール宰相の言葉の後にオルワイズ騎士団長補佐が立ち上がった。
「イレーネ殿下。クーデターを起こしたものは即刻死刑でよろしいのではないですか?」
「ふふ。私は怒っているのですよ、オルワイズ騎士団長補佐。この者と共に過ごしてもらう囚人は男性なのですが、こちらが好みなのです。その者には自由にしていいと伝えておきました」
イレーネのその言葉を聞いてそこにいる全員が顔をひきつらせた。
「うっ、やめろ!そのようなところに私をやるな!このアマめ!」
「おや。すぐにでも行きたいのですね。そこまで焦らなくても行けますよ。陛下、よろしいですか?」
「あ、ああ」
顔をひきつらせるシュバルツの返事をもらってからイレーネは立ち上がりポルクラーナ侯爵に近づいた。
「な、なんだ、来るな」
「いいえ、あなたに一つ言葉をかけようと思いまして」
イレーネは何かをつぶやく。すると、さすがのポルクラーナ侯爵も顔を青くした。
「さあ、もう連れて行っていいですよ」
イレーネが騎士にそう伝えると敬礼をしてすぐに連れていかれた。
「これで、裁きを終わる」
シュバルツの言葉で全員が立ち上がる。貴族たちは頭を下げる。すると扉が開いて王族たちが出て行った。そしてすぐに三人にも言葉が伝えられる。
「イレーネ殿下がお呼びです。」
そう伝える人物についていくとある一室に通される。
「いや、お疲れさまでした。座ってください」
「ほんとだよ。あのポル…何とかって人がキュラスと血がつながった両親を殺したの?」
「ポルクラーナ侯爵ですね。そのとおりです。やっと片が付きました」
「なんか疲れたよ。全然観光とかできなかったし」
「観光なら明日にでも案内人を用意しましょう。私はちょっと行くところがありますから」
イレーネのその言葉にみんなため息をつく。
「キュラス、こっちに来ても忙しいよね。」
「ほんと、ずっとどこかいってるもんね。」
「ちょっとは休んだら」
「明日は、仕事ではないです。ちょっと行きたい場所がありまして、だいぶかかるんです」
イレーネはそう言う。それは、一緒には行けないと言っている物だった。
「わかった。じゃあ、案内人はよろしくね。」
「ええ、楽しんでください」
その後も四人はイレーネの話を聞いたりなんなりしながら過ごした。
おまけ
シャ「ねえ、そういえばさ。あの侯爵になんていったの?」
恭「あ、私も気になってた。なんか青くなってたよね。急に黙ったし」
リ「怖いもの知らずだよね。二人とも。まあ、気になるけどもさ」
イ「そうですね。『あなたは私を怒らせたんです。楽には逝かせませんよ。よい日々を...』と言いました」
シャ、恭、リ「怖っ!」