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賢者と魔法が下手なポメラニアン  作者: 霧丈來逗
2章 キュラスの過去
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42、フロワールの裁き




 お風呂で十分に温まった恭珠、シャルロッテ、リザイナは話をすると言ってどこかに行っていたイレーネとシヴァイゼルと合流してフロワールがいる部屋に向かっていた。



 戻ってきたシヴァイゼルとイレーネはどこかピリピリした気をまとっていた。


 それに三人も気づいているが『普段そう言った気配を感じさせないイレーネがそうならば今は聞かない方がいい』ということになり誰もそこに口を出さなかった。





 フロワールがいる部屋に着くとまだ話をしていた。五人が入ってきたことに気付くと残念そうな顔をしていた。



「シヴァイゼル様、お時間なのですね?」


「ああ、すまないな。」


「謝る必要なんてありません。すべて私がやったことの代償なのです。

 こうして時間をとっていただいたことに感謝しています。ありがとうございます。」


「では、行きましょう。夫人殿に子息殿そこまで残念に思わなくとも私はそこまで残酷なことはしません。どうか、お待ちになってください」


「はい。ありがとうございます。『漆黒の竜』様」


「私のことはイレーネで結構ですよ」


「はい。イレーネ様。姉の事よろしくお願いします」


「はい」






 イレーネの最後の言葉で全員が部屋の外に出た。



「では、闇竜の国へ帰りますよ」


「しばらくいるのか?」


「いいえ。そんなにしないうちにテンバール王国まで帰りますよ。私は賢者ですから」


「そうか」



 


 少し残念そうなシヴァイゼルにイレーネは苦笑していた。



「別に会えないわけではありません。闇竜の国にテンバール王国とつながる魔法陣を用意しました。それを使うこともできますよ。

 ちゃんとシュバルツの許可をとらないと使えませんからね?」


「そうなのか。では、そのうち行こう」


「ええ」



 そう答えるイレーネもどこか嬉しそうであった。



 それを見て二人がニヤニヤしていることに気付いたイレーネは顔をしかめる。


「何をニヤニヤしているんですか?さあ、乗ってください」


「「は~い」」


「もう」


「「ふふふ」」



 それぞれが違う様子を見せながらドラゴンになったイレーネの背に乗る。



『処罰は頼みましたよ』


「ああ、気をつけろ」



 そう声をかけるシヴァイゼルを一瞥するとイレーネは舞い上がった。どんどん速度を上げていく。

 

 遠ざかる氷竜の国にフロワールがさみしそうな視線を向けているのは皆わかっていたことだが何も言わなかった。













 あっという間に時間が過ぎ闇竜の国ミラルーシェに着く。



「あ~、やっぱりこっちの方がいいよ。寒かった~」


「私も寒いのはダメだからここがいいな。炎竜の国なら行ってみたいかな?」


「炎竜の国は暖かいというより、暑いですよ」


「私は暑いのは嫌だ。木竜の国当たりがいいかな?」


「あそこは木々が生い茂っていて気持ちがいいですね」


「皆さん、いろんなところへ行ってみたいんですね。竜の国なんて怖いっていう人もいますよ?」




 フロワールの言葉に皆が驚いているとクレナがやってくる。



「おかえりなさい。お母様、さっそくだけどお父様が裁きを下すから玉座の間に来いって。貴族たちもそろってる。」


「もうですか?だいぶ早いんですね。」


「うん。なんか犯人が捕らわれたのなら早く処罰しろってうるさいらしいんだ。伯母様と賢者の皆さんは王族側にいてください。もちろん恭珠もね」


「わかった。このままで大丈夫?」


「うん、いいと思う。じゃあ、お母様は騎士について行って。

 ごめんなさい。私が案内できなくて…」



 するとフロワールは優しい笑みを浮かべる。


「クレナ。あなたは王女よ。誇りをもって毅然としていて、私は見てるから。」


「…はい、お母様」



 クレナは覚悟を決めたようにしっかりと前を向いた。

 それを見たフロワールは微笑むと近くにいた騎士についていく。そして残りはクレナと共に王族側の位置へと移動を始めた。






 賢者たちに用意されていた席は客人用に作られた王族の席から少し離れた左側にあった。

 イレーネとクレナは王族なので国王と共に入ってくるという。他の貴族たちが用意された席に座り周りと話をしている中それが急に静まった。



「国王陛下、並びに王族の方々の御入場です。」



 よく通るその声が響くと全員立ち上がり頭を下げる。三人もそれに従うと扉が開き入ってきた。



「面を上げよ」


 まだ若い国王の声が響く。その言葉にならい全員が頭を上げる。

 そこにいたのは国王シュバルツとイレーネ、クレナだった。三人しかいないがそこに椅子は四つあった。



「これより裁きを行う。皆座れ」


 国王が座るのを見てから全員が座る。王族の三人も座ったが国王とクレナの間がやはり一つ空いていた。



「罪人をここへ」



 宰相クラールの重みのある声が響く。すると王族が入ってきたのとはべつの扉が開きフロワールが入ってきた。


 騎士が後ろに二人いるが特に拘束されている様子はなかった。それに何人かは眉をひそめていたがほとんどは驚いているようで表情が変わっていた。


 そんなことなど気にする様子もなくフロワールと騎士は玉座の間の真ん中まで行く。するとフロワールは跪き騎士たちは下がっていった。


 これもあり得ないことなのだろうがここでそれを口にするものはいなかった。

 否、いなくなっていたのだ。口を出しそうなものたちはクーデターを行ったことにより地下牢に閉じ込められている。





「罪人フロワール・ルート・ミラルーシェ。その者はクレナ殿下を誘拐することに協力をし、実行に移した。わかっていながらそれを行った罪は重い。だが、脅されていたという証言もあった。  よってその点も考慮し沙汰を下す。この者が今後一切王城の敷地内から出ることを禁ずる。そしてこれより先の政治にかかわる権利を一切剥奪する。…以上」



 その沙汰を聞いた途端貴族たちがざわめいた。脅されていたとはいえ、実行したのだ。

 その罪がこれでは軽いと思ったのだろう。実際フロワールも目を見開いていた。



「陛下、発言をお許しください」


「よい、許そう」



 すると壮年の貴族が立ち上がり声を上げる。


「王族の誘拐に関わったものがこれほどの罪で許されてもいいのでしょうか?

 その後にも何か起きていたやもしれません?これでは後に同じようなことが起こるでしょう。王妃だからと言うことではないのでしょう。どうかお答えを」


「うむ。確かにフロワールは誘拐に加担した。だが、直接手引きしたわけではない。転移用の魔法陣を指示されたように置いただけだ。

 そして、だ。其方、『その後に何かが起きたかも』と言ったな。そのような不確定なことで罪を重くすることはできん。誘拐に会った本人も許している。それをとやかく言う筋合いはなかろう? 今より罪を重くするとしても処刑くらいか?…


 私から番を奪うようなら全力をもって対抗するがどうだ?」



 シュバルツの目が鋭くその貴族を射抜く。


「そうですね。申し訳ありません。そのようなつもり毛頭ありません。私も番がいる身。思いは同じです」



 そういうと一礼して座った。



 ほかの貴族にも目を向けたが特に何もな言わなかった。



「では、これで罪人フロワールの裁きを終わる。」


「フロワール、其方は此処へ来い」



 そう言ってシュバルツが指し示したのは自らとクレナの間の空白の席だった。


「恐れながら、陛下。私は罪人です。そのような場所に座ることは許されないでしょう。」


「いいや、私がいいと言っているのだから。…それでも、と言うのならば命令だ」



 そこまで言うとフロワールも観念したようで壇上に登りあいている席に座る。クレナは幾分か表情を緩めていたがシュバルツとイレーネの表情はより厳しくなっていた。

 特にイレーネは無表情だが、威圧と魔力がいつもより強くなっており目もただ一点。真正面の先ほどフロワールが入ってきた方を見ていた。



 


 賢者たちはこれからのことを聞いていなかったのでただ、イレーネの様子に怪訝そうにしていたがその理由はすぐに明らかになった。




 これから、裁きの第二幕が始まろうとしていた。





 次に裁きを受けるのはクーデター関連でイレーネがあんな感じの態度をとる相手です。

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