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賢者と魔法が下手なポメラニアン  作者: 霧丈來逗
2章 キュラスの過去
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40、『氷結の竜』シヴァイゼル

 お久しぶりです。




「さ、寒い~」


「確かにね。コート持ってきてよかった。」


『もうすぐ着きます。最初に言ったでしょう?氷竜の国なんですから当たり前ですよ』


「王妃様は寒くないのですか?」


「私も氷竜ですからね。そこまでつらくありませんよ。むしろ帰ってきた感じがしますね」



 一行はキュラスの背中に乗って氷竜の国へ向かっていた。フロワールは最初自分で飛んでいくといったのだが急ぐからという理由でキュラスの背中に乗っていた。



「まだ、雪や風が強くないのでいい方ですよ」


「これで!?絶対ダメだわ」


「恭珠、温風で自分を包めばいいじゃん」


「ああ、それもそうか」



 シャルロッテの言葉に温風を使っていなかったことに気付いた恭珠はすぐさま実行する。


「あったか~い。あの王妃様。シヴァイゼル様ってどんな人なんですか?」


「どんな人か?」


 するとフロワールは考え始める。


「どんな人って言われても…水色の髪に水色の目で、()()()()()()?」


「「「すごく冷たい?」」」


「いや、態度が冷たいとかそういうわけじゃないのよ。ただ、オーラと言うか、空気と言うか?」


「「「オーラ?空気?」」」


『そんな感じでしたか?』


「まあ、会えばわかるわ」



 フロワールの言葉がいまいち理解できなかった三人は首をかしげている。イレーネは昔の記憶を掘り起こしているようだ。



『見えてきましたね。ここが氷竜の国です。』



 イレーネのその言葉を聞いて三人が身を乗り出す。そこは一面銀世界だった。雪や氷がいたるところにある。冬、と言う言葉がぴったりの様子だった。


 そんな白い街並みの中に水色っぽい髪の人たちが見えている。フロワールの様な水色はなかなかいないようだった。




 イレーネは一度旋回した後門の前に降り立った。四人を降ろし、人の姿になると門から一人の男性が歩いてきた。騎士の服を着ている。白地に水色で闇竜の騎士の制服とは違っている。




「イレーネ様、ようこそいらっしゃいました。フロワール様、おかえりなさいませ。私は『氷結の竜』シヴァイゼル様の使いの者です。案内をさせていただきます。」


 そこまで言うとその人物は懐から何かを取り出しイレーネに見せた。それを見たイレーネは頷いた。


「正式な使者であると確認しました。三人は私の連れです。一緒でいいですか?」


「はい、問題ありません。こちらへ」


 

 使者の人が歩き始めたのでそれについていった。すると門の近くの砦のような場所に入って行く。中には魔法陣があった。



「この魔法陣にお入りください。」


 言われた通りにして全員が入ると魔法陣が光った。騎士が魔力を流したのだ。その光は雪の様だった。




「こちらです」


 魔法陣の光が消えるとそこは城の前だった。闇竜の城とは違っているがまたきれいである。



 案内の騎士について城の中に行くとある部屋に通された。



「この部屋でお待ちください。もうすぐやってまいります」


「わかりました。案内ご苦労でした」



 イレーネがそういうと騎士は礼をして退出した。そして置いてあったソファーに座る。



「中も寒いんですね。これは、私はダメだわ」


「こんなものですよ。()()()()()()()()()()()もっと寒くなるかもしれませんけど…」


「え、それどういうこと?私も寒いのは苦手なんだけど…」


「私も、得意じゃない…」


「……なぜそれで来たんですか?氷竜の国ですよ。そりゃあ寒いですよ」


「だって、闇竜の国は暗いわけじゃないじゃん。もし、ずっと夜とか、真っ暗とかだったら警戒してるって」


「別に闇竜の国と光竜の国はそんなもんですよ。ただ、ちょっと夜が他より暗いとか、昼が明るいとかそんなものですよ。」


「「は」ってことは他は明確な違いがあるんだ」


「ええ、氷竜の国のような明確な特徴がありますよ」



 「へぇ~」と三人が感心していると扉が開いた。一気に冷気が流れ込んでくる。その冷気で三人は身をすくめ、フロワールは緊張した面持ちになり、イレーネは少し微笑んだ。



 冷気と共に入ってきたのは濃い水色の髪と目を持つ男性が入ってきた。その男性を見てイレーネは立ち上がる。それよりも少し早くフロワールが立ち上がった。そして遅れて三人も立ち上がる。



「久しぶり、イレーネ。フロワールも戻ってきたか。それとお客人か?」



 その男性は低めの声でそう話す。目を向けられた三人はフロワールが言っていたことに共感した。確かに冷たい感じだ。



「ええ、いつぶりですかねシヴァイゼル。三人は私が今いるテンバール王国の賢者と候補です。フロワールは私が来たいだろうと思って連れてきました。」


「では、最後かもしれないと…」


「断言はできません。この件は私一人の事ではありませんから…こっちはテンバール王国の賢者です。」


「地の賢者、リザイナ・アンバーです」


「氷の賢者、シャルロッテ・カイヤナイトです」


「光の賢者候補、火丸恭珠です」


 三人はそろってお辞儀をする。だが、寒さでどこかぎこちない



「『氷結の竜』シヴァイゼルだ。リーネとはだいぶ長い付き合いなのでな。それに、フロワールも久しいな」


「はい。ご無沙汰しております。」


 

 恐縮と言った感じでフロワールは頭を下げる。

 それにしても、リーネ?という呼び方に皆少し新鮮さを感じていた。




「まあ、立ち話もなんだ。座ってくれ」



 その一言で全員が座る。



「シヴァイゼル、三人がきつそうなので冷気を抑えてくれますか?」


「昔の様には呼んでくれないのか?リーネ?」


「その呼び方ですか?別に変える必要はないと思うのですが……まあ、いいでしょう。シヴィ、冷気を弱めてください」




 すると、シヴァイゼルは満足そうに頷いて冷気を抑えた。


「氷の賢者なら平気そうだがな」


「種族が猫でして、あまり寒さに強くないんです」


「リーネと一緒にいられるのなら大丈夫ではないか?」


「皆がきつそうなので私は普段から抑えています」


「ああ、どうりで闇の圧力を感じないと思った。…それで、本題に入ろうと思うのだがこの三人にも聞かせていいのか?」


「ええ、クレナ捜索にも私の処刑にも一役買ってくれた者たちです。学友ですから人となりも知っています。大丈夫ですよ」



 シヴァイゼルはイレーネの言葉に首をかしげる。


「処刑なんてあったのか?そんなことまでしようとは…あの者ら、どうするか」



 シヴァイゼルから殺気が漏れる。シャルロッテとイレーネは平気で他も大丈夫そうだがこのままでは被害が出そうだったのでイレーネが動く。



「シヴィ、殺気が漏れています。被害が出ますよ」


「ああ、それもそうだな」



 シヴァイゼルはすぐに殺気をひっこめた。そして微妙な顔でイレーネに言う。


「リーネ、そんなしゃべり方してたか?」


「いいえ、昔とは変わりましたからね。どうかしましたか?」


「…いいや、何でもない」



 どことなく残念そうなシヴァイゼルだった。



「あの、シヴァイゼル様。本題の方を…」


 フロワールがおずおずと言うとシヴァイゼルは頷いた。


「そうだな、フロワール。君の父は捕らえさせてもらった。夫人と子息は別荘の方にいてな、今回の事には関与していなかったため免れた。だが、父の方は全く反省の色が見えなくてな。良くて国外追放、最悪は死刑だろうな。」


「わかっています。私もそれ相応の覚悟は持ってきましたから。父のもとにいた、他の者たちはどうなりましたか?」


「加担した者は全て捕らえた。関与していないものは謹慎にしてあるがな。」


「家はどうなるんでしょう?」


「私が家を残すようにしよう。君の後ろ盾もなくなるわけにはいかないだろう。子息と夫人は潔白だ。子息に家を継いでもらおうと思っている。風当たりは厳しいだろうが耐えてもらう。どうだ?」


「はい、御配慮ありがとうございます。戻る前に母と弟、父にも会わせてもらえないでしょうか?」




 フロワールが頭を下げたが、シヴァイゼルは難しい顔をしている。


「シヴィ、私からもお願いします。一度くらい会ってもいいでしょう。私もその場に行きましょう」



 イレーネのその言葉にシヴァイゼルは折れたようだった。


「わかった。ただし、会うのは十分だけで私とリーネが立ち会うことが条件だ。」


「はい、本当にありがとうございます。」


「では、今から行こう。賢者殿も来るか?」


「はい、クレナを傷つけたんだもの。それ相応の覚悟はあったんだろうからね」









 すみません。最近、執筆の時間が取れず。だいぶ間が空いてしまいました。これから不定期更新で更新速度が遅くなると思いますがよろしくお願いします。

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