38、恭珠とローゼの謎
お久しぶりです。
完成しました。お待たせして申し訳ありません。
「あ、姉上。オパールの賢者とはどう言うことです?」
「正確には賢者候補です。」
「あ、あり得なくない?恭珠が友人って無理があるでしょ。明らかに私と同年代じゃん」
もちろん皆納得していない、というか混乱しているらしく、とっさに言葉が出たのはシュバルツとクレナだった。
「まあ、普通に考えればそうなんだよね。私たちも違和感は感じていたよ」
「うん、ちょっとそれっぽいかなって思ってたけどやっとわかったよ。いったい何してたの?」
賢者たちも落ち着いてはいるが聞きたいことがたくさんあるようで興味津々だ。そしてやっと要因?である恭珠が口を開いた。
「いや~、みんなが言ってたこともわかるんだよね。でも、キュラスが行った通りだよ。ごめんね、騙してた訳じゃないんだけど」
「ほ、本当ですか?」
宰相も思わずと行った風に口を挟んだ。
「だがなあ、そうだとしてもなんでここまで魔法が下手なんだ?」
「そうですよね。賢者候補ならある程度は、というか使いこなせていると思ったのですが...」
「そ、それは...」
スペルディア大将軍とオルワイズ騎士団長補佐のもっともと言えばもっともの疑問に恭珠はくちごもった。
「もともと、下手だったんですよ。今よりよっぽどましですが....」
恭珠がくちごもっていた部分をイレーネが堂々と言った。恭珠も苦笑いを浮かべている。
「で、でも、騙してた訳じゃないって言うのはどう言うこと?まだ、何かあるの?」
「それは私も気になる!」
「そうだね。賢者になる就任式当日にに居なくなったからね。」
クレナの言葉でいくらか空気がましになった。それだけでなく新たな疑問に皆興味津々でイレーネでさえも恭珠に視線を送っている。
部屋のなかに沈黙が訪れた。
「い、いや~それが....」
ようやく恭珠が口を開いた。だが、どことなく居心地が悪そうだ。
「前日に薬作ってたんだよ。実験って言った方がいいかな?まあ、やってたんだよ。それで、なんか失敗しちゃったみたいで、すごいことになっちゃったんだよね……部屋の中を頑張って片付けたんだけど....だいぶ遅くなったから、そのまま寝ちゃったんだよ。」
「あはは、恭珠らしいわ」
「なんか想像つくかも」
「大変でしたね。」
ここまでの話を聞くとなにも関係無いような気がした。だが、空気がなごんだようだ。
「それで、どうなったの?」
「ああ、なんか起きたらこの体になってたんだよね。めっちゃビックリしたよ!起きたら目線が低くて、合う服がないし体の感覚が違うから大変だった」
「た、大変だったな恭珠殿」
「いえいえ、ここまでならまだいいですよ、陛下」
恭珠は苦笑いを浮かべた。
「それで、リザイナなら薬関係詳しいからなんとかなると思ったんだよ。それで、城の方に向かったんだ。けど急に知らない人に囲まれてさ捕らえられちゃったんだよね。
なんか勝手が違うからうまくいかなくて、炎と光を混ぜて吹っ飛ばそうと思ったんだけどその瞬間に意識が途切れたんだ。それで、気づいたら知らない場所にいて記憶を失ってたって訳」
「え、よくそれで生きてたね」
クレナが聞くと恭珠が苦笑いを浮かべた。
「いや、ちょっと歩いてたら村があってさ、そこで暮らしてたんだ。あの日、魔力暴走を起こさなかったら、もうみんなと会えなくなってたね。」
「魔力暴走?」
事情を知らない闇竜達は首をかしげていた。
「私たちが今の恭珠に会ったきっかけは巨大な光と炎の竜巻が現れたからなんです。」
「そうそう、あまりにも大きくてね。被害が出そうだったから私たちが向かったんだ。まさか恭珠が原因だとは思わなかったけど...」
「それは....なんだかわかる気がします。」
宰相は納得したようだった。
「ところで、本名は恭珠なのですか?」
「いいえ、これは何ていうかな?まあ、違うね。本名はローゼだよ」
「ローゼ。バラか?」
「はい、それが由来です」
みな、新たな名を受け入れているようだ。
「でも、今更ローゼって呼ぶのも違和感あるんだよね」
「ああ、確かにね~」
クレナとシャルロッテの言葉に恭珠は笑いながら答えた。
「別に恭珠でいいよ。結構好きだしね。そうだなあ、ちっちゃい時はこのまま恭珠って名乗ることにしようかな?それで、もとの姿がローゼかな。うん、これでいこう!」
恭珠ことローゼは勝手に自己完結させていたが、満足そうに頷く。
「これから、どうするつもりですか?」
「う~ん。とりあえず国王に言いに行くけどすぐに就任式はしないでしょ。それまで、というかもう一回クレナと学園生活を楽しむよ」
「恭珠、言いにくいのですがしばらく就任式はできません。事情がありまして....すみませんね」
「ううん、いいよ。ゆっくり学園生活を送れるしね」
恭珠はにっこり笑って言う。その笑顔に曇りはなかった。そして、皆納得したようで部屋の中は和やかな空気に包まれていた。