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賢者と魔法が下手なポメラニアン  作者: 霧丈來逗
1章 賢者との生活
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3、助けてくれた人達は....

 







 次に目が覚めるた時にはもう朝になっていた。

 ここはどこだっけ?と寝ぼけていた私のもとにナイラさんともう一人、薄ピンクの髪を二つ結びにしている人が入ってきた。

 寝ぼけた頭でナイラさん今日は耳出てないんだーなんて考える。そういえば城にいるんだった。

 

 その人はナイラさんと同じ装いでローズクオーツのペンダントをつけている。昨日から思ってたけど二人ともやたらと高そうなペンダントだ。一体誰だろう?と思っているとナイラさんがニッコリ微笑む。


「おはようございます。恭珠さん」


「あ、おはようございます。あのこちらの方は....」


「こっちは私の同僚で...」


 ナイラさんが軽く目配せするとその女性が一歩前に出る。


「初めまして、恭珠さんだよね。私はフィナです」


「フィナさんですね。改めまして、火丸恭珠です」


 フィナさんは柔らかい雰囲気で私に笑いかけてくれた。城にいるとはいえ昨日と今日でナイラさんとフィナさんにしか会っていないので実感が湧かない。二人とも医療関係の人のようでテキパキと私の体調を確認する。

 完全にされるがままなのでぼーっとしていると助けてくれた人にお礼を言っていなかったことに気づく。城にいるとは言っていたが早いうちに行った方がいいだろう。



「あの…私を助けてくださった方って今も城にいるんですか?もし可能なら早いうちにお礼を言いに行きたいんですが…」


「今日も城にいますよ。そうですね。体調もいいみたいなので朝食を食べたら会いに行きますか?」


 ナイラさんは私を気遣いながら提案してくれる。私はまさかすぐに申し出が受け入れられるとは思わなかったので驚くがうんうんと頷く。するとフィナさんがすすっとナイラさんに近づいて声をかける。


「ちょっと待って〜ナイラ。もう会わせるの?早くない?」


「え、いいんじゃない?いつでもいいって言ってたし」


「う〜ん。まあそれもそっか〜」


 

 こそこそと話していたようだが私も犬の獣人なので耳は良い。何となく聞こえた会話から二人の仲の良さが伺えてほっこりした。ナイラさんは割とハキハキしてるけどフィナさんは間延びした喋り方をするのでかわいい。髪の長さもフィナさんが二つ結びにするほど長いのに対してナイラさんは肩上で切りそろえられている。どうにも対照的だ。

 相談が終わったのか改めてこちらに向き直り今日のうちに会いに行けるということを教えてくれた。フィナさんが奥からトレーに乗った朝食を運んでくる。



「じゃあまずは朝食を食べましょうか」


 二人が持ってきてくれた朝食はとてもおいしかった。さすが城の料理ということだろうか。食べやすいものが揃えられており栄養バランスもいい。まさに至れり尽くせりだ。


 食事を終えるとナイラさんが食器を片付けてくれた。なんだか申し訳ないが自分でやろうとした時に止められたので大人しく従うことにしている。まるで貴族にでもなった気分。

 フィナさんが着心地の良いシャツとスカートを用意してくれたのでそれに着替える。シンプルだが作りがよく、デザインも可愛い。フィナさんが軽く身だしなみを整えてくれて髪もとかしてくれる。ついでにヘアアレンジも提案されたがさすがに断った。さすがに気恥しい。



「うん!いい感じだね〜!よく似合ってるよ恭珠さん」


「ありがとうございます。でもあんまり自分ではこういう服着ないのでちょっと違和感ありますね…」


「大丈夫だよ!ちゃーんと似合ってるから〜!じゃあ準備もできたし、そろそろ行こっか〜」



 フィナさんと一緒に行こうとした時にちょうどナイラさんが部屋に戻ってきた。私の装いを見てナイラさんも褒めてくれた。嬉しいけど恥ずかしいな。



「恭珠さん、申し訳ないんだけどどうやら私たちは一緒に行けないみたいなの」


「え〜!嘘でしょ〜!」


 ナイラさんは私に申し訳なさそうな顔を向ける。フィナさんの反応を見る限り知らなかったようだし突然決まったのかもしれない。



「ごめんね、一緒に行けたら良かったんだけど…でも代わりにあの人が案内してくれるから」



 扉のほうを向くと黒いマントのようなものを着た男性が立っていた。二人と一緒に行けないのは残念だが、まあ事情があるのだろうから仕方ないと思いその人に頭を下げる。


「わかりました。よろしくお願いします」


 その男性は「はい」と柔らかい表情で返事を返してくれた。どうやらいい人そうだ。

 後ろを振り返るとナイラさんとフィナさんが並んで手を振ってくれていた。なんだか小さい子供の見送りのようで恥ずかしいが軽く会釈だけは返しておく。そして改めて案内役の男性に着いて行った。












 恭珠が部屋を出るなりフィナがナイラに詰め寄る。


「私たちに来るな〜って言ったのは先輩?」


「うん、そう。なんか賢者のことを話すらしいんだよね...本題はオパールの賢者のことらしいけど」


「あぁ、それがどうしたの〜?」


 はっきり言いたがらないナイラが珍しいのかフィナが首を傾げる。


「もしかしたら見つかるかもしれないらしい…」


「え?ってことは…あの子に何かあるの?」


「その辺は分からない....先輩は来るなって言ってたしね」


 ナイラにもよくわかっていないようで明確な答えは出せないが一気に二人の表情が真剣なものとなる。あの子は一体なんなんだろう?














______________











 案内役の男性についていくとある部屋の前で立ち止まった。

 男性がノックをして中に声をかける。最初部屋に来てくれた時から思っていたけど、この男性はどこか緊張しているように見える。なにかあったのだろうか…


「恭珠様をお連れしました」


「どうぞ」


 女性の声がした。『様』付けになれないので居心地の悪さを感じながら男性が開けてくれた部屋に入る。そこには三人の女性がいた。



「案内ありがとう。助かったよ」



 カイヤナイトのペンダントをつけた女性が男性に声をかけると男性派ますます緊張したようで肩に力が入っていた。なんか大変そうだな…。そんなに偉い人なのかな?それか怖い人とか?

 その様子が不思議でたまらなかったが男性は丁寧に礼をして部屋を出ていってしまった。


 何故ここに案内されたかも、女性たちが誰なのかも分からず、どうしていいか分からない私はただ扉の前に立っていた。困っていると女性の一人がクスッと笑う。


「こんにちは恭珠さん。私はリザイナ・アンバー。リザイナでいいよ」


 最初に黒と茶色とオレンジが混じった髪のショートカットの人…リザイナさんが自己紹介をしてくれる。目は黄色だ。

 真っ白で清潔感のある白衣を羽織っていてポケットにはメガネがかけられている。全体的に華やかさよりは実用性を重視しているような服装だ。首からはアンバーのペンダントを下げている。

 私の主観だから分からないけど、真面目な研究者というような雰囲気がある。



「で、こっちが...」


「こんにちは恭珠さん。シャルロッテ・カイヤナイトだよ。名前長いしシャルでいいからね!よろしく!」


 次に紺色ストレートの長い髪の人が自己紹介をする。目は透き通った水色だ。

 薄い水色から青のグラデーションになっていて雪の結晶の刺繍が入った長い羽織のようなものを着ている。袖口や裾にも同じような刺繍の縁どりがされているようだ。首からは同じようにカイヤナイトのペンダントを下げている。

 この人はスカートを履いており、そのせいか分からないがリザイナさんとは違い少しラフな印象をうける。



「最後が....」


「こんにちは、恭珠さん。キュラス・アメジストです」


 最後に淡い紫色の長い髪の人が自己紹介をする。目は髪よりも濃い色の紫色だ。

 シャルロッテさんと似ている形のものを着ていて白ベースで裾の方に行くにつれて青から紫、紫紺になっている。月と星の刺繍と縁どりが裾や袖口になされているようで、首からは同じようにアメジストのペンダントを下げていた。

 キュラスさんだけは剣を携えていて、その様子から凛々しい印象をうける。分からないけど多分騎士とかそちら側なのだろうか。

 元々背が高いのだろうが、ヒール履いてるから余計に高く見える。凛々しい女性だ。


 どうやら三人とも私の名前は知っているようだったけど改めて自己紹介をする。緊張もあって随分拙かったとは思うが三人とも嫌な顔ひとつせず優しく微笑んでくれた。


 そこで助けてくれた人に会ってお礼をするという本来の目的を思い出す。案内してくれたことからも分かるがきっとこの人たちが助けてくれたんだろう。


「もしかして助けてくれた方っていうのは.....」


「うん。私たちがここまで連れてきたの」


「魔力暴走で倒れてたみたいだけど大丈夫?」


「ありがとうございます。体調はもう大丈夫です」


「よかった…まだ無理はしないでね」

 


 リザイナさんとシャルロッテさんが優しく気遣う言葉をかけてくれた。助けてくれたことだけでもありがたいのに体調まで気にしてくれるなんてなんて優しい人たちなんだろう。


「実は私たちもあなたに話しておきたいことがあったの」


 暖かな気持ちにひたっているとそれまでなにも言わなかったキュラスさんが口を開く。穏やかな笑みを浮かべているから怖くはないけど…なんというかなー…。なんとなく警戒心が働く。



「まあその前に一回座ろうよ!このまま立ちっぱなしじゃ疲れるでしょ?ほら恭珠さんこっちにおいで。キュラスも早く座って!」



 シャルロッテさんが自分が座っている所の近くの椅子を手で示して手招きする。リザイナさんはどこからかポットとカップを持ってきてみんなに紅茶を淹れてくれた。いい香りが漂い始めて自然と緊張も解けてきた。手招きされるままに椅子に座る。今まで立っていたキュラスさんも席に着いた。

 リザイナさんがカップに紅茶を注ぎ一人ずつに配る。やっと全員が席に着いた。それを確認してからキュラスさんが口を開く。


「先に聞いていい?あなた、もしかしてこことは違う国に住んでたんじゃない?」


 キュラスさんに言い当てられたので私は驚きを露わにする。フィナさんとナイラさんにも話してなかったはずなのに、どうして?


「ど、どうしてわかったんですか?」


「だって私たちに会っても、名前を聞いても驚かなかったから」


 キュラスさんは対して難しいことじゃないとクスクス笑いながら答えてくれた。その様子を見ているとどこか警戒していた心が緩んでいく。



「確かにあれ?って思ったけどそういうことね.....もしかして賢者のことも知らない?」


「賢者ですか....歴史上の偉人の事ですか?」



 私が首をかしげて答えると三人とも一斉に吹き出した。誰も紅茶を飲んでいなくて良かったと思う。飲んでいたら確実に大変なことになっていた。でもなぜ笑っているのか私にはわからない。


 キュラスさんはカップを持ちながら顔を背けて笑っていて、そのせいでカップが震えているのでいつこぼれるかこちらの方が気が気じゃない。

 シャルロッテさんも俯いて顔に手を当てていた。でも肩が震えているので笑っているのはよくわかる。

 そんな二人よりさらに笑っていたのはリザイナさんだった。固そうな印象を抱いていたのだが一番笑っている。本当に…机に掴まっているけど椅子から転げ落ちそうだ。比喩じゃなくて…どうやらツボに入ったらしい。


 一番最初に笑いが収まり冷静になったキュラスさんが紅茶を一口飲んで落ち着く。私は正直キュラスさんがカップを置いてくれて安心した。こぼすことは無かったけど気になって仕方なかった。



「ごめんなさい。知らなくて当然だし、他国ではそれが普通だと思うんだけど...久しぶりにそんなこと言われたから」


 それから少したってみんなの…主にリザイナさんの笑いが収まると改めてキュラスさんが話し始めた。



「じゃあ、まず最初に賢者のことを説明するのがいいかもね」

 








恭珠ちゃんは賢者のことを知りません。

なので気が付きませんでしたがキュラス、シャルロッテ、リザイナ、この三人は賢者です。

ちなみにナイラとフィナが言っていた先輩というのはこの三人の事です。

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