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賢者と魔法が下手なポメラニアン  作者: 霧丈來逗
2章 キュラスの過去
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32、クレナと恭珠の捜索



 ここは、どこ、だろう?

 あれ、なんでこんなところにいるんだっけ?確か、図書室に行って、そこで....

 そうだ!クレナが触った本に直感が働いて....それで、どうなった?クレナは?クレナはどこに行ったの?


「恭珠」


 横から、小さな声が聞こえたのでそちらを向くとクレナがいた。私もクレナも同じように手を拘束されている。


「クレ!「シッ!」....ごめん、無事なんだね。」


「うん、恭珠も…大丈夫そうだね」


「もちろん。クレナ、なんで私たちがここにいるかわかる?」

 

 するとクレナは首を振った。


「私も、気づいたらここにいたの。....捕らえられているみたいだけどね。」


 クレナがそう言った後、足音が聞こえてきた。


「だんだん近づいてくる」


 私たちは扉の方を睨みつけていた。


「目が覚めたようだな」


 ちびで太ったおっさんと眼光が鋭い人が入ってきた。


「クレナ・クラウロス・ミラルーシェと火丸恭珠だな。まさか、こんなに簡単につかまるとはな」


 おっさんが下品な笑い声をあげた。


「ここは、どこ?早く返してちょうだい!」


「おっと、それはできないな~、お前たちを利用するためにここに連れてきたんだからな。大変だったぞ~!

 あそこに転移の魔法陣を設置するのはな」


 転移の魔法陣?まさか、それでここまで連れてこられたの?


「口が過ぎるぞ。少し黙れ」

 今まで黙っていた眼光が鋭い人が口を開いた。


「も、申し訳、ありません。」

 おっさんがすぐに謝っているところを見るとたぶん眼光が鋭い人の方が立場が上らしい。


「お前たちは、我らに捕らわれ利用されるのだ。せいぜいおとなしくしていろ。」


「な、何なんですかあなたたちは!?私たちは何も知りませんって!」


 すると、おっさんがこっちに来て私を蹴り上げた。

「ウッ....クッ!」

「恭珠!」


「おとなしくしてろと言ったろ!黙って言うとおりにしてればいいんだよ!」


「黙れと言ったはずだぞ。そいつらに構っている暇はない、さっさと来い」


 眼光が鋭い人にそう言われておっさんは謝りながらついていった。


「恭珠!」


 扉が閉まった瞬間にクレナがこちらに寄ってきた。


「ちょっと待ってね。今、回復魔法をかけるから」


 そういって意識を集中させたクレナだけど鎖の音がしただけだった。


「くっ、魔法が使えない!」


「どう、いう、こと?」


「魔法を使おうとすると集めた魔力が鎖に集まって重くなるの!…ごめん恭珠、今は治せない」


「だい、じょうぶだよ。ごめんちょっと休むね」


 そこまで言って私の意識は遠のいた。







_________________________


≪???視点≫











 なんでだ、最近、頭が働かない。....とりあえずみんなのところへ行かないと。



 私が扉を開けるともうすでに全員揃っていた。


「遅かったね、ルカ」


「うん、ごめん、なんかぼーっとしちゃって」


「それわかる!僕も最近頭が働かなくて....」


「いや、ミラはいつも通りじゃね」


「いやー、そんなに変わんないと思うよ」


「はぁ~!どういうことさ!」


「あーもう、時間ないんだからやめなって」


 その一言でみんな静かになった。


「なーんか、日に日にひどくなってるんだよね、これ。頭が働かない」


「あの~、突然なんだけど、言わないといけないことがあって.....

 あの子たちが襲撃に来た時の事なんだけど…」


「あー、あのタディオンとグローリアが追撃してけがを負わせたやつね」


「その言い方やめてくんね!」


「え、だって、そうじゃん」





「あ~ハイハイ。グローリア続きを話して」


「その時は少し傷を負わせて返すつもりだったんだ。....でも、なんか追いついたときに

『殺せ!あいつらは他国のスパイだ!処理しなければ!』って言うのが頭に響いて何も考えられなくなったんだ」


「それ、私もだわ。なんか自分の意思はあるんだけど操られてる感じ?あの子たちが念話で話しかけてきても一切変わらなかった。ギリギリ、意志の力で打ち勝ったけどあの子たちを殺る寸前だったんだ。

 あの時はギリギリ致命傷にならない位置にずらすしかなかった。それも一か八かで..…」


「よけていたからよかったけど.....本当に危なかった」


「私も、グローリアとタディオンと似たようなことになったことがある。王の前に行った時なんだけどなんだか『自分は、テンバール王国のスパイです。ですが、ここで改めて貴方に忠誠を誓いたく存じます。』って言いそうになって押しとどめたんだけど…やばかった」


「え、みんな大丈夫?」


「ルカは何ともないの?」


「うん、そんなことになったことは無いな。」


「でも、これは危ないね。気を付けないとすべてが水の泡になる。」


「もし、どうしてもだめそうなら、最悪一度ここから出ることも考えておいて」


「「「「了解」」」」









_________________________










 これほどまでに証拠がないとは…..随分と用意周到ですね。


 私は今、図書室に向かっている。『漆黒の龍』だけができる記録の書の使い方をしてあの二人がどうやってここからいなくなったのか調べるつもりだからだ。


 この方法は王族でさえも知らない。書物にも書いていないのだ。『漆黒の龍』など各種族の最強の龍には生まれたときから持っている記憶がある。記録の書の使い方もその一つだ。そしてその記憶は誰にも教えてはいけないと本能で分かっているので『漆黒の龍』以外誰も知らない。





「記録の書を見せていただきたいのですが?」

 カウンターに行き確認する。


「は、はい。では、こちらにどうぞ」


 頼りなさそうな司書ですね。と思いながらもついていった。そして記録の書がある部屋にたどり着いた。



「私が一人で入ります。扉の前で待っていてください。入ったら、その時は....()()していてくださいね。」


「ひゃい!」


 少し威圧を込めすぎたようですね。まあ、いいでしょうこれで絶対に入ってこないでしょうから。


 私は部屋の真ん中に置いてある一冊の大きな本の表紙に手を置いた。


「我に開示せよ」


 そして目を閉じて魔力を込めた。


 するとたくさんの情報が頭の中に入ってきた。二人がいなくなったことをイメージするとその瞬間の映像が浮かんだ。


 二人は図書室に入って机の近くに来た。そしてクレナが机の上にあったきれいな本に触れた。そして恭珠がそれを止めようと腕をつかんだ瞬間、本が開き魔法陣が展開されて本も二人も消えた。


 この魔法陣は転移ですね。それもだいぶ距離が長い…これは少々面倒ですね…..


 次にこの本が置かれたところをイメージした。


 王妃(フロワール)が図書室に入ってきた。いろんな本を見ながら歩いて机の上にあの本を置いていった。そして何事もなかったように出て行った。


 王妃(フロワール)が関連しているのですか?確かに同じ本でしたが....考えたくはありませんが()()()()()()かもしれませんね。ですが、これは()()()()()()()()()()()調べるとしましょう。


 本から手を放し目を開けると私はすぐにそこを出てシュバルツの執務室に行った。





 中にはすでに(シュバルツ)宰相(クラール)、シャルロッテとリザイナが揃っていた。


「皆さんすでにそろっていたのですね。では始めましょうか。」


「姉上、事情の説明は?」


「これからです。」


「キュラス、事情って?」


「......驚かずに聞いてください。クレナと恭珠が消えました。」


「「は?」」


「ですから、()()()()()()んです。二人とも」


 シャルとリザイナの魔力が鋭くなった。


「なんで、教えてくれなかったの?」


「教えたところで大した情報もない、ただ消えたという事実だけでは何もできないでしょう。下手に動かれても困りますからね」


「それで、姉上。今現在分かったことは?」


「先ほど記録の書を確認してきました。クレナと恭珠は転移の魔法陣によって連れ去られてようです。本に仕組まれていたようでその本も一緒に消える仕組みになっていました」


「距離は?」


「だいぶ長いようです。はっきりとはわかりません。」


「陛下、何か心当たりは?」


「私も王だ。私が即位するのに反対だった勢力もいる。それかもしれないな」


「このことを知っているのはどのくらいいるんですか?」


「ここにいる人だけです。陛下とイレーネ殿下のお考えで知らせてはいません」


「その事なんですが、民にも知らせてしまいましょう。何か嫌な予感がするのです」


「あ、それ私もだわ」


「私も」


「....わかりました。明日全体に向かって知らせることにしましょう。」


「シャル、私はここの『影』を動かすのであちらをお願いしますね。」


「了解」









 こうしてこの出来事は翌日に国中に知られることとなった。

 だが、それが正しかったのかは誰にもわからない。














≪おまけ≫




「にしてもさすが王様だよね。自分の娘がいなくなっても冷静に対処してるもん」


「ほんと、私たちはここまで冷静にはできないわ~」

「.....それは、そうでもない」


「「え?」」


「当初はだいぶ取り乱して魔力も漏れていたんですが…...イレーネ殿下が」


「「イレーネ殿下が?」」


「壁にたたきつけられるくらいの威力で蹴り飛ばして」


「「はあああああああ!?」」


「『お前は王だろう』と叱りました。」



「「マジか!?」」



「「「大マジ」です」」








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