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賢者と魔法が下手なポメラニアン  作者: 霧丈來逗
2章 キュラスの過去
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31、シュバルツの怒り

 



 イレーネはの城の一室で書類仕事をしていた。だが、皆デスクワークが苦手なため量は冗談ではないほど多い。


「イレーネ殿下。書類終わりそうか?」


 王姉であり『漆黒の竜』である私にこんなに軽く話すのは一人しかいません。

 イレーネは顔すら上げずに返事をした。


「どうしたらここまでたまるんでしょう?スペルディア大将軍」


「いや~、俺はこういうのがどうもダメでな、頼む!」


「今日までの書類がこれですよ。なぜ、ここまで貯めるんですか?」


 そう言ってイレーネが指さした先には書類で山ができていた。


「ささっと書いて出せばいいんですよ。私だって他にやることがあるのですが?」


 私は書類にサインしながら言った。


「まあ、いいじゃねえか。お前も将軍になったんだから」


 それを聞いた私は反論すべく顔を上げた。


「あなたが言ったのではありませんか、スペルディア大将軍。何が『イレーネ殿下を将軍にしないなら俺はお前に従わない』ですか。意味が分かりません」


「いいじゃねえか、殿下になら書類も任せられるしな。」


「それが理由、ですか?」


「ああ、殿下に国の軍事力が集まるようにすれば尻尾を出す馬鹿な輩がいるからな」


 まったく……私はまた書類に顔を向けた。


「きっと書類仕事を終わらせてるから摸擬戦でもしようかと思ってきたんだがな」


「残念ですね、終わりませんよ。そこら辺の軍人の訓練もかねて一対多数でやったらどうです?」


「それは、楽しくないんだよ」


 「何が楽しくないですか」と私は言おうとしたがそれは結局言わずじまいになってしまった。


「し、失礼します!」

 だいぶ慌てた様子の王の側近が入ってくる。


「おい、どうした。ノックも忘れて部屋に飛び込んでくるとは?」


「も、申し訳ありません。イレーネ殿下に陛下からの伝言です。」


「陛下から?」


「はい、『大至急執務室に来るように』ということです。」

 

 私はスペルディア将軍と一瞬視線を交差させ立ち上がった。


「そうですか。......何があったは知りませんがいつも通りに振る舞いなさい。皆に知られてしまいますよ」


「も、申し訳ありません。」


 側近はいくらか冷静になったようだった。


「いいですよ。さあ、行きましょう」


 私は側近に声をかけ執務室に向かった。

















 執務室に向かうにつれて闇の魔力が強くなっていく。シュバルツの魔力だとイレーネはすぐに気づいた。それと同時に、ここまでの魔力が満ちていることを不思議に思っていた。


 執務室の前に行くと理由が分かった。


 一応結界が張られていますが緩いですね。(シュバルツ)の魔力がこれでおさえられるとでも思っているのでしょうか?


 ノックをし中に入るとそこには国王と宰相がいた。


「ああ、姉上。急にお呼び立てしてしまいすみません。」


 いつものシュバルツを知っていたら想像できないほどの無感情な声だった。顔をこちらに向けさえせずじっと一点を見ている。


 私はシュバルツの魔力が漏れないほどの強力な結界を張った。


「まったく、この結界を張ったのは誰ですか?まるで意味をなしていませんが…」


「わ、私です」


 私を呼びに来た側近が言った。


「あなたは、あとで魔術結界の訓練をした方がいいですね」


 その側近は小さくなった。

 まあ、国王の側近ですからね、これも何とかしなくては…


「それで、私を呼びつけたのはどうしてですか?」


 するとまた一気に空気が重くなった。


「下がれ」


 シュバルツが短く言った。すると先ほどの側近は一礼して出て行った。



「クレナが、消えた。」


 私は目を見開く。


「消えた、ですか。いなくなったではなく?」


「....それだけではありません。…恭珠殿もです」


 一気にイレーネの魔力が鋭いものとなり威圧感も放たれる。


「それは、消えたではなく連れ去られたということではないのですか?」


「…わからないのです。王城の図書室に入ったことは確認されているのですが出たことが確認されていません。」


「あそこならば、記録の書に載っているでしょう?」


「確認しました。ですがそこには転移の術式が使われたことが書かれていたのです…..」


「おかしいですね。王族には最低一人『影』の護衛がついているはずです。それはどうしたんですか?」


「それが....気絶させられていました。」


「何という、処理しますか?」


「いや、いいですよ姉上。」


「.....シュバルツ、落ち着きなさい。クレナは大丈夫ですよ。」


「なにが....何がですか!....姉上!あの子たちは自分で転移したのか連れ去られたのかもわからない!どう落ち着けというのですか!」


 次の瞬間シュバルツは壁にたたきつけられていた。いや、正確にはイレーネに蹴り飛ばされた。


「カ八ッ」


「い、イレーネ殿下!陛下、大丈夫ですか?」


 宰相が立ち上がりシュバルツのもとへ向かう。


「少し黙りなさい。シュバルツ、私は落ち着けと言ったんです。取り乱せとは言っていません。」


「に、しても、これは…」


「手加減しただけ感謝しなさい。まったく、もしクレナと恭珠が一緒なら二人とも大丈夫です。それとたぶんですが、二人は転移の術式を使っていません。」


「なぜ、言い切れるのですか?」


「あの子たちなら正直に言いますよ。それに恭珠には私があるものを渡しています。それが反応していないので大丈夫です。もう少し、信じたらどうですか?」


「.....ですが、私も親です。心配なものは、心配ですよ。」


「…もう一度、蹴り飛ばされたいんですか?

 確かにあなたは親ですが、同時に国王です。冷静に構え配下のものを信じるのも上に立つ者のやるべきことだと思いますが?」


「....ふう、そうですね。冷静さを欠いていました。....では、賢者殿の力を借りたいのですがいいですか?」


 私は少し微笑む。


「ええ、いいですよ。私から言っておきます。

 私は『影』と『黒梟』を総動員して探しましょう。その都度報告に来ます。」


「はい、わかりました。…..ところで、姉上は怒っていないのですか?いつも通りに見えるのですが?」


「…そんなわけがないでしょう?今すぐに関係者全員を処理したいくらい怒っていますが?」


 そう答えたイレーネの目はわかりづらいが据わっており感じる魔力も鋭利なものになっていた。











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