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賢者と魔法が下手なポメラニアン  作者: 霧丈來逗
2章 キュラスの過去
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23、闇竜の王族



「私は、この国の国王シュバルツ・カウローグ・ミラルーシェ。そして、後ろにいるのが」


「陛下の護衛騎士兼側近のイギル・ローグ・オーディアと申します。どうぞイギルとお呼びください。」


 私たちはみな、驚いた。だって、普通、国王自ら出迎えに来るか?クレナとキュラスさんも驚いているようだ。キュラスさんはどっちかというと嫌そうな顔してるけど....。


「ええっと、言いたいことはあるけど...こっちも紹介するね。この子が恭珠、手紙に書いてた学園の友達。」


 私から?普通、賢者からじゃないの?と思ったけど仕方がない


「ひ、火丸恭珠です。ええと、クレナさんと仲良くさせていただいております。」


 自分でも、あ、これいらないと思った。


「それで、こっちの三人がテンバール王国の賢者達です。」


「地の賢者リザイナ・アンバーです。」


「氷の賢者シャルロッテ・カイヤナイトです。」


「......闇の賢者キュラス・アメジストです。」

 

 順番にそう言って頭を下げた。

 すると、国王はキュラスさんを面白がるように見ると言った。


「テンバール王国にいたのは知っていましたが闇の賢者になっていたのですね。()()?」


「陛下、私はキュラス・アメジストです。それに、私がテンバール王国で賢者になっていることなどとっくに知っていたのではないですか?

 だからこそクレナを行かせたのでしょう。クレナも私のことを知っていました。名前まではっきりとです。」


「いいえ、驚きです。それと、私が呼んだのはキュラス・アメジスト殿ではなく私の姉、イレーネです。.....いい加減、あきらめてはどうですか?」


 見ている私たちがハラハラしてきたときキュラスさんは一つため息をついた。


「わかりました。口がうまくなりましたね、シュバルツ」


「いいえ、まだまだですよ。姉上」


 ええっと、なんかキュラスさんが折れたっぽいけど、どういうこと?

 そう思っていたらキュラスさんが言った。


「あと二人、賢者が来るのですが忙しいのですよ。城にテンバールとつながる魔法陣を置きたいのですがどこかありますか?」


「それなら、城の地下に置きましょう。姉上、本来の色に戻ってください。皆に姉上が来ると伝えてありますから。」


「だから、お前自ら来たのですね。まったく...」

 

 キュラスさんは少し嫌そうな顔をしていたけどすぐに闇が包んだ。視界が晴れたとき、キュラスさんの目と髪は紫から黒になっていた。それもクレナや国王様、イギルさんよりも濃く深い色だ。  だが一房だけ色が抜けたように白かった。それでもあまり違和感は感じなかったけど...

 でも、いつもより冷たい印象を受ける。



 私たちは驚いて口を閉じられなかった。


「懐かしいですね。」


「この姿は賢者たちにも見せていません。」


 国王様とイギルさんは懐かしそうで私たちはまた驚いた。


「では、行きますか。」


 私たちは中へ入った。






―――――――








 いや、結果から言ってもう疲れた。

 たくさんの闇竜とかほかの種族がいたけど歓声がすごかった。なんか、すごい人気だな~。


「こっちです。」

 

 国王様の案内で城内を地下に向かって歩いているといろんな人がいた。その人たちの私たち、というかキュラスさんへの視線は二種類に分かれている。



 一つは好意的なもの、戻ってきてくださった。というような嬉しそうなもの。


 もう一つは嫌悪しているようなもの。何があったかは知らないけど、どうしてここにいる。というようなもの。あからさまで私たちまで嫌になる。


 だいぶ長く歩いてやっと地下に着いた。


 扉を開けるとそこはただっぴろい空間だった。


「さて、姉上ここでいいですよ。」


「やるのは私ではありません。」


「私がやりますよー!」


 そう言ってシャルさんが何かを取り出した。前に見たことがあるような正方形の紙だ。

 シャルさんはその紙を真ん中に置いて離れると何かを唱えた。すると、魔法陣が大きくなり光った。


「この魔法陣は転移用、同じものがテンバール王国の王城にあります。この魔法陣を使える者は両国の王族と賢者だけです。また、この魔法陣を起動できるのは賢者と両国の国王だけになっています。それ以外の人も国王か賢者から許しを得た者なら使えますよ。....そろそろ、来る頃ですね。」



 シャルさんの説明が終わると魔法陣の光が強くなった。光が収まるとそこにはナイラさんとフィナさんがいた。


「いや~、まぶしかった。でも、いいですね~これ~!」


「そこにいるのは誰ですか?あと、キュラス先輩は?」


 皆、一斉に微妙な顔をした。


「そんなにわかりませんか。私がキュラスです。 本来の色になっているだけで顔は変わっていないんですがね。」


「「えええええええええええーーーーーーーーー!!!」」


「なぜ、そこまで驚かれるかわかりませんね。」


「この国の国王シュバルツ・カウローグ・ミラルーシェです。」


「こ、これは失礼しました。私は治療の賢者ナイラ・ダイヤモンドです。」


「回復の賢者フィナ・ローズクオーツです。」


「姉上、これで全員揃いましたか?」


「ええ、みんな揃いましたよ。色々聞きたいこともあるでしょうから場所を移しませんか?」


「そうですね、私の執務室に行きましょう。」


 賢者が全員揃ったけどナイラさんとフィナさんは展開が分からなくて「あ、姉上?」と、戸惑っているみたいだった。

 まあ、私たちもそんな感じだけど…。



 執務室に行くと一人の男性がいた。黒髪黒目のメガネをかけた人だ。見た目はイギルさんよりも年上に見える。


「ああ、陛下。少し話したい事、が....」


 書類から顔を上げてこちらをというかキュラスさんを見た途端、目を見開いて驚いているようだった。


「久しぶりですね、クラール。いえ、今はクラール宰相ですね。」


「イレーネ殿下?本当にイレーネ殿下なのですか?ああ、すっかり大人になられて....」


「ク、クラール宰相、どれだけ感激してるんだ?」


「陛下、イレーネ殿下ですよ!小さいときに出て行ったきり一度もいらっしゃらなかったイレーネ殿下ですよ。ああ、もう感激です。」


「クラール宰相、後ろにいるのが私の仲間です。仲間たちに今までのことを説明するのであとで話しましょう。」


「ああ、それは申し訳ありません。.....あの、また、国の運営に協力してはいただけませんか?」


「そうですね。....もちろん、と言いたいところですが今の国王はシュバルツです。陛下の許可なしではできません。」


「わ、わかった。協力してもらおう。元からそのつもりだ。だからそんなに睨むな。」


「では、失礼します。」



 いや、なんか疲れたし、宰相キャラ濃くない?


「いや、なんだか、早々からすまない。色々説明するので座ってくれ。」


 私たちが座ると、メイドがお茶を用意してくれた。




「説明する前にまだ言ってなかったね。おかえり、クレナ、姉上。」


「ただいま、お父様」


「ただいま」


 いい感じの雰囲気だけどちょっと質問があった。


「はい!最初に聞いていいですか?さっきからイレーネって呼ばれてるのってキュラスさんで合ってますよね?」


「イレーネ・ルデアスト・ミラルーシェ、これが私の()()()()です。この名を名乗るのはいつぶりでしょうかね。キュラス・アメジストは賢者の位についたときにテンバールの国王にもらった名です。」


 あれ、イレーネっだったの?なんか違和感がある、キュラスさんの本当の名前も知らないのに....


「クレナもフルネームを言ったらどうですか?」


「クレナ・クラウロス・ミラルーシェ、これがフルネームだよ。」


「じゃあ、どっちで呼べばいいの?あと様とかつけた方がいい?」


「今更結構です。呼び捨てで構いません。それと、呼びやすい方でいいですよ。」


「話し方ずっとそれですか、先輩?違和感半端ないんですけど....」


「ええ、イレーネとしてはこれが普通なのでこれです。キュラスの時より言いますからね。他に聞いておきたいことは?」


「はい、言いたくなかったらいいけど一房だけ髪が白いのはなんで?」


「う~ん、生まれつきですよ。魔力を限界を超えて使うと髪の色だったりが抜けるんです。私はもともと欠陥があったんですかね?」


 え、それって、結構大事なことじゃない?

 

 そう言ってキュラスさんはお茶を飲んだ。話の内容にそぐわない優雅な仕草だった。ティーカップを置くとキュラスさんは続きを話した。


「ここに来る途中で分かったでしょう?私に対する評価は二つ。

 一つは私を好意的に思っている者、もう一つは私を出来損ないだと嫌悪している者です。

 前者はこの髪の事は気にせずに能力を見て判断しています。後者は能力がどうであっても見た目が出来損ないなら認めない、古い考え方ですね。 前者の考えなら国は安全に存続できますね。」


「へえ、っていうことは新しいことを取り入れられない頭の固い奴らがいるんだ。」


「まあ、嫌悪しているのはこれだけが原因では、ありませんけどね。」


「どういうこと、イレーネ伯母様?」


「.......これはシュバルツも最近知ったか知らなかったかのどちらかでしょう。

 私はシュバルツの本当の姉ではありません。」


「「「「「「えっ!?」」」」」」


「クレナも知らなかったでしょう?シュバルツは知っていましたか?」


「ほんの少し前に知りました。ですが王族の血はひいていましたね。」


「ええ、遠いですけどね。私は養女として先王陛下に引き取られました。」


「じゃ、じゃあ、先輩の本当の親はどうなったんですか?」


「亡くなりました、私が小さいときに。()()()()()んですよ。私も一緒に始末するつもりだったようですが、私は強い力を持っていました。

 まあ、使いこなせていなかったので()()()()にしてしまいました。とどめをさす前に何とか止めましたけどね。」


「先輩、なんか、すみません。」


「いいえ、気にしないでください」


 そこからキュラスはゆるゆると首を振ると話出す。


「シュバルツが知らないのも無理はありません。 私が引き取られたのはあなたがおなかにいる時でしたから。先王夫妻にはだいぶ苦労を掛けたと思いますよ。」


「姉上、なぜ、あの時ここを出て行ったのですか?」


「私があのままここにいればあなたや先王夫妻に大きな影響があるかもしれなかったからです。

 実はあの時私の両親を殺した犯人はわかっていたんですよ。あのまま宰相の地位を奪うつもりだったようですがそうはさせません。

 

 私と先王陛下とでクラールを宰相にしました。 犯人は先王陛下と相談してつぶすつもりだったのですが…タイミングがありませんでした。」


「それでお父様にあの言葉を言ったの?」


「ええ、そうです。取り入ろうとする輩は多いですからね。私はもとがこれなのと威圧感で近寄らなかったようですけどね。」


「威圧感って?」


 キュラスさんが目を閉じると魔力があふれ出た。それに目を開いたキュラスさんの威圧感が相まって絶対に無理だと思った。


「こうなるからです」


 キュラスさんはそう言って今まで通りにしたけど全員顔色がよくなかった。





 


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