15、恭珠の学園生活
クラスメイト達の質問が一段落ついたとき教室の扉が開いてルイザ先生が入ってきた。
「はい、みんな座ってー!」
先生が声をかけるとみんな自分の席に戻っていった。
最初はルイザ先生の授業なのだ。
「じゃあ、皆さん今日は初めて恭珠さんが来たので自己紹介をしましょう。
じゃあ、はじめは私から。私はルイザ・アルゲンテアよ、担当教科は地理と歴史。呼ぶときはルイザ先生って呼んでくれるとうれしいな、よろしくね」
そう言って先生は笑った。
「じゃあ次はロイ君の列」
「ええ~、俺かよ~」
そう言いながら一人の少年が立ち上がった。
「ロイ・パルシアンだ。よろしく」
「俺は…」
と、次々に自己紹介をしていき終わった後先生が
「はい、これで全員終わったわね。恭珠さん私のクラスではね全員名前で呼び合うことにしてるの、だから遠慮せずに名前で呼んでね」
「はい、ルイザ先生」
と返事をすると、にっこり笑い
「よろしい、じゃあ、えっとクレナさん休み時間にでも恭珠さんに学園のことを説明してあげてくださいね。あ、案内もお願いしますね。」
「わかりました」
そう返事をしたのはまっすぐな長い黒髪にアイスブルーの目をした少女だった。
あ、さっき質問してきた子だと思ってみていると、その子も一瞬こちらを見たがすぐに視線をそらされてしまった。少し気になったが、ルイザ先生が授業を始めたので急いでそちらを向いた。
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ルイザ先生の授業はとても面白く、わかりやすかった。もうすでに賢者たちに教えてもらっていた内容だったが教える人が違うとこんなに変化があるんだと思いながら授業を受けていた。
その後は、魔法学の授業だった。場所を変えての授業だったのでどこでやるんだろうと思っていると
「恭珠さん」
と声をかけられた、後ろを振り返るとクレナちゃんが立っていて
「一応もう一回自己紹介しとくね。私はクレナ・ミラルーシェ。クレナって呼び捨てでいいよ」
と笑いながら言ってくれた。
なので私も
「じゃあ、私も恭珠って呼び捨てでいいよ」
と言った。
「ふふ、じゃあ恭珠、講堂まで案内するね」
とクレナがにっこりとほほ笑んだ
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講堂に着くまで私たちはお互いのことなどを話していた。
「え、クレナって龍なの?」
「そうだよ、真っ黒いね」
「そうなんだ、じゃあ、属性は?」
「恭珠と同じ二属性で闇と氷」
「ほんとに!?しかも闇!闇って珍しいんじゃないの?」
私が言うとクレナは笑いながら
「それを恭珠が言う?光だって珍しいじゃん、まあ、まだ闇の力は使いこなせてなくて」
「あ、そっか、そうじゃんね、でも闇と氷ならキュラスさんとシャルさんと一緒だね」
「た、恭珠、け、賢者をさん付けって…」
「え、だって知り合いだもん、今更様なんて付けて呼ばなくていいって言われてるんだ。」
「そ、そうだったんだ‥‥まあ、私の魔力なんて賢者には程遠いよ」
「まあ、そのうちなんとかなるんじゃない?」
「そうかもね」
すっかり打ち解けて話していると前から誰かが歩いてきて
「うん?クレナさんじゃないですか?」
前からその人が来た瞬間クレナの顔がわずかにひきつった感じがした
「クレナ?」
と声をかけてみるが反応は変わらない。
「こんにちは、カトマリン先生」
と少し硬い声でクレナが言った。
「どうしたんですかこんなところで?」
「恭珠さんが講堂の場所を知らないので案内していたんです」
「そうですか、グリドック先生が探していましたよ。ゆっくり話しながら歩いていないで早く行きなさい」
と言われた。クレナは
「そうなんですね、教えていただいてありがとうございます。行こう、恭珠」
と固い声で返事をして急ぎ足で進み始めた。
しばらく歩いてさっきの先生が見えなくなると
「ああ、ホントあの先生嫌い」
と言った。
実は私もそう感じていたのだクレナは何も知らなかったのに注意されたのだ。いやな先生と思った。
「確かにね」
そう、恭珠が答えると
「実はあの人ね、私たちの気持ちも考えずに一方的に言ってくるからみんな嫌ってるんだ。
私には特に言ってくるし、人によってはこの学園からいなくなればいいのにって思ってる人もいるよ」
「なんか、さっきの接し方とか注意の内容聞いても思ったよ、こっちの事情は無視なんだなって」
そう、話していると講堂についた。
中には先生と今日来たばかりと言っていた舞風蘭夢先生がいた。
クレナは小さな声で
『あの人が、グリドック先生だよ』
と教えてくれた。その後、先生のもとへ行き
「先生、私を探していると聞きましたが?」
と言った。
「ああ、クレナさん生徒会に関してのことだから後でいいよ。それより今日の授業は舞風蘭夢先生がしてくれるそうだぞ」
「そうなんですね、どんな授業かが楽しみです」
そう言ってから私の隣に座った。ここではどこに座ってもいいらしい。
少し雑談をしていると先生が授業を始めた。
「ええと、今日は私が授業をします。舞風蘭夢です。」
と言うと周りからよろしくお願いしますという声が上がった。
「では、今日は魔力量の変化についての授業をします。まず、魔力とは皆さんも当たり前のように持っているものですね。....」
そんな風に授業が進んでいった中で一つ不思議だと思ったことがあった。
「私たちのような人や獣人は年を取るにつれて魔力量が増えていきます。成人した時が一番のピークでその後自然に増えることはありません。」
ここまで言ったときクレナが手を挙げた。
「先生、質問です。自然に増えることは無くなっても何かしらのことをして魔力量を上げることはできるんですか?」
「はい、できますよ。ですがかなり厳しい修行でもしない限り、上がりません。もともとの魔力量には個人差があります。成人して自分の持っている魔力をすべて使えている人はとても少ないです。
例えば自分の持っている魔力を10とします。そして成人して引き出せている魔力量としては大体の人が6か7くらいですかね…修行をして10まで引き出すことは可能ですがそれ以上は無理でしょう」
と、言う部分だ。
これを聞いたとき、じゃあ、賢者たちは自分の魔力をすべて引き出せているのかと疑問に思った
時間になり授業が終わるとみんなが講堂を出ていくがクレナは「ちょっと待ってて」と言うと蘭夢先生のところに行って何やら話していた。
そしてこちらに戻ってくると「おまたせ、行こっか」と言って講堂から出た。私は、あとで何を話していたのか聞こうと思っていた。
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「ねえ、キュラスあんたの‥‥なんだっけ、親戚?のクレナが私に質問してきたよ」
それを言うと驚いたようにキュラスは振り返った。
「なにについて?」
いつもと違う様子のキュラスに驚いたが
「魔力が増えれば、他の属性も使えるようになるかって」
「そう」
短く返事をした後少し考えるような仕草をしたが
「シャル、できればクレナの様子を見ていてちょっとでも気になったら私に言って」
「え、うん、いいよ」
珍しくそんなことを言ったキュラスを見ながらやっぱり血縁者の心配はするんだ、と安心していた。