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賢者と魔法が下手なポメラニアン  作者: 霧丈來逗
1章 賢者との生活
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12、シャルロッテとキュラスの休日 前編

『』のなかに書いてあるのはキュラスの思っていることです。


 う、ん?ここどこだっけ?ああ、治療をしてもらってからそのまま眠ったんだっけ。とりあえず眠る前に何があったかを思い出していると扉がノックされる。


「シャル先輩、起きてますか?フィナとナイラです」


「どうぞ」


 体を起こしながら返事をすると2人が入ってきた。動いても痛くはないがまだ違和感があるのは怪我の影響だろう。


「おはようございます先輩。傷はどうですか?」


「ああ、今は痛みもないかな。でもなんか違和感あるからいつもどおりではないかもね」


 でも割と動けるな。なんて呑気に考えているとナイラがため息をつく。


「しばらく、仕事は休んでください!結構傷が深かったんですから」


「ええ~仕事も休み~!?でもなんだかんだ久しぶりの休みだな。あ、私って普通に出かけても大丈夫な感じ?」


 すると二人はそろって微妙な顔をする。


「う~ん、本当はあんまり動き回ってほしくないんですけどね。足、ですから」


「できるだけ安静にしていてほしいんですけど。どうしても出かけるなら魔法陣をめっちゃ使ったらどうです?」


 難しい表情のフィナの提案に私は首を振る。


「いや、街とかで使いまくったら大騒ぎになるし。第一あんまり魔力がたまってないんだよね。いつもなら寝たら回復してるのに」


「あ、それは塗った薬のせいもありますよ。治癒魔法の効果を高めるものなんですけど、まずめちゃくちゃ痛いんですよね!あと、魔力の回復が少し遅れます。先輩の場合は疲労なんかも影響してますけど」



 そういうことかと納得して手を握ったり開いたりしながら自分の魔力の流れを確認する。どうやら傷があったところに魔力が吸収されているらしい。そりゃあ貯まるのも遅くなるよね。魔力の回復についてのことは納得したけど、まだ出かけることについては納得していない。しかしナイラとフィナにとっても安静にしていて欲しいのが本当の所のはずだ。



「納得してない顔だね」

 

 開いた扉の方から声が聞こえた。そちらを向くとゆったりとしたローブを着たキュラスが扉にもたれかかっており、微笑を浮かべてこちらを見ている。


 

「だから、あんまり動くなって言ったのに...」

 ナイラが呟く。フィナは少し不思議そうな顔をしていた。


 キュラスはそれをきれいにスルーして私に言う。


「おはようシャル、そんなに出かけたいの?」


「うん、だって休みってなかなかないじゃん!

 今、新人来て余計に休めなくなってるんだよ!

 ゆっくり買い物に行きたいんだよ!」


「は~。まあ、本当はフィナたちが言ってることを守らないとなんだけどね....

 まぁ、俺も買い物行きたいし...いいよ!手伝ってあげる!」

 そう言ってくれた。


 

「で、シャル先輩の怪我は足ですよ。あんまり、歩いてほしくないんですけど」

 フィナがそう言う。


「ん、歩かなきゃいんでしょ。いいよ羽生やしてあげる。」


「え、他の人に生やせんの?」


「うん、種族はそのままで羽だけ生やす感じ。

 まだ本調子じゃないから、龍の方にさせて。

 その方が俺と同じだからやりやすい」


 そういって、キュラスは、私の背中に手をかざしてなにかを唱えた。

 すると、背中からなにかが飛び出した感じがした。見てみると紺色の龍の翼が生えていた。


「いつもなら俺がのせていけたんだけど。

ちょうど背中に傷があるから。」

 そういって小さな龍の姿になって降り立った

よく見ると翼の間に傷があった。


 まだ、納得していないような2人にさらにキュラスは続ける。


「大丈夫だって。シャルは羽使えばいいし、俺は風魔法で羽ほとんど動かさないで飛ぶか、歩くかするから」



 すると、ついに2人がおれた。

「わかりました。無理はしないでくださいね。」

「そうですよ。ベットで過ごす暇な時間が増えるだけですから。」




 

「他にやることがあるので....」


 二人はやることがあるらしく部屋を出ていった。





 そこで私は、おそるおそるキュラスに言う。


「ねぇ、キュラス。その傷さ、私のせいでできた傷だよね...本当にごめん」


「いいや、シャルのせいじゃないよ。ああやって庇って自分が受けるっていう選択しかできなかった自分のせい。」


「だって、あそこで私が普段通りやっていたらキュ「シャルのその傷だって私の反応がおそかったからできたもの。けっきょく私の判断ミスだよ」....」


 私の言葉を遮ってキュラスが言った。

「あんまりマイナスに考えすぎない方がいいよ。

 過去は変えられないんだから。これから、どう動くかだよ」


 そうやって笑ってくれた。


「ねえ、買い物って一緒に行かない?」


 そして暗い話を打ち消すかのように言う。それは暗にこの話は終わりと言っていた。だからこそ私も笑顔で返す。


「いいね、わたしがキュラスの選ぶよ」







___________




 今、俺は図書館にいる。王宮のだ。

 だが今、俺はとても面倒くさいことになっている。


「え、ちょ、待って、これってどうなってるの?」


 目の前にいる1年の生徒たち3人である。


 たまたま、読みたい本があったので探していると知り合いに見つかったのである。


「ここわかんないから教えて~!」

 周りの生徒たちに言われている。


 目があったが、面倒くさそうと思って立ち去ろうとすると声をかけられた。


「キュラスじゃん、久しぶり!勉強一通りできたよね!教えてやってくれないかな?」


 結局、盛大に巻き込まれた。


 だが、本当にこいつらは面倒くさい。普段、あまり感情を顔や態度に出さない俺だがさすがに顔がひきつってるかもしれない。


「ねえ、ねえ、なんの本読んでるの?」

『べつなんでもよくね』


「これは魔術の研究書だよ」

「なんの仕事してるの?」

「うんとね、賢者と騎士だよ」

「え~、騎士なの~」

「なんか弱そ~」

『お前らの数千倍は強いわ!』


「今、何歳~!わたし、いま9歳!」

「へえ~、そっか。私の年は.....秘密だな」

「わかった!こいつ、絶対ばばあなんだよ!」

「あ、そっか!だから歳を言わないんだ!」

『あ?なんでお前らにばばあ呼ばわりされなきゃいけないんだよ!普通女の人に年齢聞かないでしょ!』


「ねえ、ねえ、なんでザルバ先生のこと知ってたの?」

「ああ、なんていうか....友達?」

「何で「?」ついてんの?」

「なになに、俺たちに言えない関係?」

『うっさいわ!このマセガキども!』


「っていうか、勉強しろ!」

『っていうか、勉強しろ!』


「「「は、はい」」」

『おっと、思ったことがそのまま出ちゃった』



 その後、キュラスはシャルとの約束の時間までずっと『いちいち面倒くさい、ちゃっちゃと勉強しろ!』と思っていたのであった。








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