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俺が『見』てるセカイ、君の生きるミライ  作者: 六錠鷹志
第一章 異世界転移 と 出会い
9/33

R1 いつもの

今回は『金髪君/土下座君』目線の話です.

タケル目線とかぶっている部分の説明は少し端折っていることもあります.

 若い男は焦っていた。


(やっちまった。絶対やばいって)


 目の前の奴は俺の攻撃を避けた。近くの少女をかばいながら、それも、


 ーー俺の『矢』が出現する前にだ。


「*******! ****!」


(予知か? 予測か? 予感か? なんだなんだ。()(かく)、絶対コイツ、ただ者じゃねえな。服装も黒ずくめの見たことないもんだし。………ってか、なんて言ってんだ?)


 (オレ)は、そんな相手にイキナリ攻撃したのだ(ぶっぱなした)


あいつら(・・・・)だと思ったんだが………これは、マジでやらかしたな………)


 そのことを理解した彼の選択肢はーー


「すみませんでしたあぁぁぁぁぁぁぁぁ! くっそヤロウどもとまちが……いえ、許してくださあぁぁぁい」


 --土下座一択(オンリー)だった。



 俺は顔をあげて、黒ずくめ(そいつ)の顔を覗き見ると男の()は何故か、光っているように見えた。

 そいつは体を起こすと、そこから少女の姿が見えた。

 大体1歳半(・・・)くらいだろうか。

 今更(いまさら)だが、両方とも泥だらけだ。


「***。***、***。****」


「****、**、****。**、***」


「**。****、**」



(やばい。一切わからん)


 俺は一字一句? か分からないが、そいつらの言葉で理解できる(わかる)部分(フレーズ)を、あるかわからないが探す。


(来いコイこい…………)


 そして。


「*****。***、ヴァルト***。**」


(おっ。今、バルトって言ったよな。そうだよな。バルトって『止まり木』のバルトしかいねぇよな)


 若い男は焦っていた。

 だから、自分がそのバルトとマズイ(・・・)こと(・・)になっていることなんて忘れているのだ。

 さらに、バルトのところに連れていけば、いいのかと短絡的に考えてしまったことは仕方のないことだった。


 少女の言葉(・・)を受け、若い男は転移の魔法を事も無げに(・・・・・)使い、3人は負荷の少ない地点(ポイント)へ移動した。




 若い男は焦っていた。


「おい、バレル! てめえ、もう帰ってきたのか?」


 脳天目掛けて一直線に来た、魔力のこもったナイフを避けーー


(やべぇ。バルトのこと忘れてた)


 --そのことに気が付いたからだ。


「いっ、いや。こいつら見てくれって。バルトに用があるそんなんだ。『森』に居たから連れてきたんだって」


 若い男こと、バレルは『働こ(かせご)うとした』ことを強調しながら弁解を続ける。


「決して、仕事したくないとかそんなんじゃねえからな。やろうとは思った、思ったんだよ! でも、壱の(・・)、それも、陽の下刻(・・・・)じゃねぇか。だから、森に『獲物』なんて……」


時期が時期(・・・・・)だし………それくらいは考慮してほしい………ダメモトだが)


「……お前ら、そんな姿で。取り敢えず、風呂に入れ。こっち来い」


 バルトの興味は泥んこの2人に向いたようだ。


(今のうちに……)


「バレル、分かってるよな」


 逃げることなんて許されなかった。



 2人を風呂に連れて行ったバルトはバレルの正面の席に座り口を開く。


「お前が、あいつらを連れてきたのは別に構わねえ。お前が人助けをすることも、いいと思うし、俺に多少厄介ごとを持ってくるのも目を(つむ)ってやる」


 バルトは「だがな」と一言おいて続ける。


「ただ、今日中に少しでもツケ(・・)返してくれねぇと、面倒は見れ……いや、見ないからな」


(なんて、残酷なことを言うのだろうか!)


 ピンチになったバレルはどうしようどうしようと考える。

 ーーピンチはピンチ、チャンスも彼にとってはピンチである。


 2人は今、客席に座って会話をしている。

 時折、怒声が店内にこだまするが文句を言う客はいない。

 これが、この店の、『旅人の止まり木』日常(いつも)なのだ。


「なに、まぁった何かやらかしたの。バレルは?」


 そして、そこに店に新たに入った空色の少女が1人加わることもしばしあった。

 少女は両手を皿にして、やれやれのポーズをしながら体と首を揺らす。少女の透き通るような空色の髪は短くそろえられているので、あまり揺れず、そのつつましやかな胸は揺れるどころか、服の上からではほどんど視認できない。

 バレルはバルトに反撃できない代わりに、少女、ラウラにあたる。


「なんだよ、ラウラ。田舎っこの学生にはわかんねえよ。お・と・な・の問題なんだよ。一向に成長しないお子ちゃまサイズには無理な、お・と・な・の………すまんすまんって、いいすぎたぁぁ」


 ラウラにバレルが()められ、バルトがやれやれとその様子を眺めるまでが『いつもの』セットだった。


 昼間からいる常連(ひまじん)の一人は『止まり木』の日常(そのようす)(さかな)に新たな酒を、この店のもう一人の従業員を奥から呼ぶ。


「はいはい、これでいい?」


 この状況(ながれ)を、店の奥にいた筈の従業員(かのじょ)は声で察して客に『いつも』の酒を渡す。


「さすが、レイカ殿わかってらっしゃる」

「いえいえ、そんなことねぇですよ!」


 彼女(レイカ)は腰のあたりまで伸ばしたきめ細かい金色の髪をパサっと(ひるがえ)すとラウラに声をかける。


「ラウラー、あー、えーっと。………なんだっけなー」

「忘れないでよ、言いかけたなら最後まで言ってよー」


 ラウラの返答(かえし)にレイカはうーん、とすると。


「う~ん。………あっ、クリス先生ぇが、なにかだせぇーって言って………」

「それを早く言ってよぉぉぉぉおおおおお」


ガタン! と大きな音を立てて、ラウラは先刻(さっき)ちょうど帰ってきたのに、すぐに出て行った。


 常連はその様子をにまーっとした顔で見てーー


「スゥゥゥ」


 --単に酒で酔ってぐっすりと寝ているだけだった。


「ラウラちゃん、どうしたのかな~」

「お前はいつも通りだな」

「私はいつも通りだよ~」


 レイカはのほほ~ん、と『いつも』の調子で店の奥に戻っていった。

 そしてーー


「あっ、いねえ。バレル! どこ行った!」


 --金髪君(バレル)はコッソリと消えたのだった。


「………くっそが」


 バルトはそう毒を吐きながら、気持ちを切り替え2人(・・)がいる風呂場に向かった。



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