表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が『見』てるセカイ、君の生きるミライ  作者: 六錠鷹志
第一章 異世界転移 と 出会い
2/33

01 プロローグ


 高校の屋上。

 日が傾き、夕日がまぶしい放課後。

 本来ならば陸部や野球部の掛け声で騒がしい時間。

 しかし、ここ屋上だけが世界から切り取られたように。どこか重苦しい空気が漂う。


 そこには、2人の少年がいた。


 1人は怒りをそのまま貼り付けた顔で、叫ぶ。


「お前なら! お前なら助けられたはずなのに! なんで! どうしてなんだ!」


 もう1人はどうしていいか解らず、ただ『見』ることしかできない。


「・・・・・・」


 少年は叫び続ける。


「どうしてミゾレが………どうしてミゾレが死ななきゃいけねえんだよ。………お前が助けなかった。………お前がミゾレを殺した……ミゾレを見殺しにしたんだ!」


 殺人者と言われた少年は、やはり『見』続けることしかできない。


「・・・・・・」


 叫ぶ少年は後ずさり下を向く。

 声に張りはなくなっていき、震えが混じっていく。


「なんで黙ってんだよ。……ッなんで、何も言わねぇんだよ。………なあ! タケル!」


 『見』続ける少年。名は、神田(かんだ)タケル。

 この高校に通う2年生だ。

 真っ黒の制服に身を包んだ彼に秋の涼しい風は意味を持たない。

 背中にベットリとした汗を大量にかき、額には血と汗が張り付く。


 彼は重い口を開き、乾ききった喉を鳴らし始める。


「・・・・・・じゃあ、どうすれば。……どうすりゃよかったんだ!」


 少年の(ことば)は急に強くなる。


「…お前なら、ショウなら出来た(・・・)のか。ショウなら助けられたのか。…なあ! なぁ……」


 もう一人の少年。名は、秋場(あきば)ショウ。

 同じく2年だ。


 ショウはタケルの(げん)を聞き、もたれ掛かる柵を握り直す。


 そして、気味悪く笑いながら返答する。


「っ俺はタケルみてぇなチカラ(・・・)はない。………だけど、だけど俺はお前みたいな意気地なしじゃねえ……」


 ショウはタケルに背中を向け、柵を登り始める。


「お前がただの意気地なしだったら(・・・・)。……なら、お別れだ。……タケル」



 タケルにはその時、柵を登る彼ではなく、別のーー



「ッ!」



ーー『最悪』を『見』た。



「やめるんだあああああああああああああああああああああ」


 少年、タケルは何も考えなかった。

 ただ、直感的に何をしたいかを考え、願い、そして実行(・・)した。


 けれどーー



 //異常事態(エラー)は突然に、そして、無慈悲だ。//



 ーー結果はタケルの全く予期しないことだった。



 彼の体は(まばゆ)い白の光に包まれーー



「ッ!?」



 --光が消えたときにはもうそこには居なかった。




 そして、タケルは。


 タケルはショウを救えたのか、知る由もない。





 秋の乾いた風が屋上に流れる。

 風が先刻(さっき)までの重苦しい空気を流していったのだろうか。

 屋上はもとの世界(にちじょう)へと戻る。

 急に聞こえ出した部活動の掛け声が()を現実へ引きずり戻す。



 そして、


 1人(・・)残された(・・・・)少年はーー




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ