01 プロローグ
高校の屋上。
日が傾き、夕日がまぶしい放課後。
本来ならば陸部や野球部の掛け声で騒がしい時間。
しかし、ここ屋上だけが世界から切り取られたように。どこか重苦しい空気が漂う。
そこには、2人の少年がいた。
1人は怒りをそのまま貼り付けた顔で、叫ぶ。
「お前なら! お前なら助けられたはずなのに! なんで! どうしてなんだ!」
もう1人はどうしていいか解らず、ただ『見』ることしかできない。
「・・・・・・」
少年は叫び続ける。
「どうしてミゾレが………どうしてミゾレが死ななきゃいけねえんだよ。………お前が助けなかった。………お前がミゾレを殺した……ミゾレを見殺しにしたんだ!」
殺人者と言われた少年は、やはり『見』続けることしかできない。
「・・・・・・」
叫ぶ少年は後ずさり下を向く。
声に張りはなくなっていき、震えが混じっていく。
「なんで黙ってんだよ。……ッなんで、何も言わねぇんだよ。………なあ! タケル!」
『見』続ける少年。名は、神田タケル。
この高校に通う2年生だ。
真っ黒の制服に身を包んだ彼に秋の涼しい風は意味を持たない。
背中にベットリとした汗を大量にかき、額には血と汗が張り付く。
彼は重い口を開き、乾ききった喉を鳴らし始める。
「・・・・・・じゃあ、どうすれば。……どうすりゃよかったんだ!」
少年の声は急に強くなる。
「…お前なら、ショウなら出来たのか。ショウなら助けられたのか。…なあ! なぁ……」
もう一人の少年。名は、秋場ショウ。
同じく2年だ。
ショウはタケルの言を聞き、もたれ掛かる柵を握り直す。
そして、気味悪く笑いながら返答する。
「っ俺はタケルみてぇなチカラはない。………だけど、だけど俺はお前みたいな意気地なしじゃねえ……」
ショウはタケルに背中を向け、柵を登り始める。
「お前がただの意気地なしだったら。……なら、お別れだ。……タケル」
タケルにはその時、柵を登る彼ではなく、別のーー
「ッ!」
ーー『最悪』を『見』た。
「やめるんだあああああああああああああああああああああ」
少年、タケルは何も考えなかった。
ただ、直感的に何をしたいかを考え、願い、そして実行した。
けれどーー
//異常事態は突然に、そして、無慈悲だ。//
ーー結果はタケルの全く予期しないことだった。
彼の体は眩い白の光に包まれーー
「ッ!?」
--光が消えたときにはもうそこには居なかった。
そして、タケルは。
タケルはショウを救えたのか、知る由もない。
秋の乾いた風が屋上に流れる。
風が先刻までの重苦しい空気を流していったのだろうか。
屋上はもとの世界へと戻る。
急に聞こえ出した部活動の掛け声が彼を現実へ引きずり戻す。
そして、
1人残された少年はーー