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俺が『見』てるセカイ、君の生きるミライ  作者: 六錠鷹志
第一章 異世界転移 と 出会い
13/33

11 すっぱい

 目の前には欧州の歴史マニアが見たら、全裸で町を叫びながら走りだしそうな建造物(たてもの)が目に入る。

 その町を馬車が通り、腰に剣を携えた人や杖を握った人もいる。


「おお~、すげえ」


 俺は思わずそんな声を出していた。

 今、俺とミーシシャは昨日宿に来た道を逆に歩いて町まで降りてきた。

 なぜ、(ここ)に降りてきたのかは、端的に言うと『観光』だ。


 折角(せっかく)異世界に来たんだ。調査を含めた観光(・・)をしてもバチは当たらんだろう。

 それに、と俺はすぐ隣を歩くミーシャを見る。


(あのまま、部屋に戻ってもな)


 ミーシャは『落ち着い』ても、時々グズッっとしてーーたぶん、『ジン』関連のことだろうーーしまっていたので、外に出て気分を変えようとしたのだ。

 ミーシャはあまりこの様な町ーースレッドと言うらしいーーには来たことがないらしく、辺りをきょろきょろと目を輝かせる。

 しかし、「あれなに?」「~だよ」ってのが出来ないのが悩ましい。


 俺たちはさらに町を歩くと、段々と騒がしくなっていき、露店などが立ち並ぶところに出た。


「たけりゅ、たけりゅ」


 ミーシャもその光景に驚いた様で、俺の学ランの裾をクイクイっと引っ張る。


 今朝、町に出ることをバルトに伝えると、俺の学ランは洗っており、ズボンの穴も縫われていた。

 ミーシャの方の服はボロボロで修復出来なかったからと、バルトは新しく服を買ってきてくれたそうだ。

 俺たちは出されたサラダーーシャキッとしておらず、新鮮とはいい難いものだったーーと柔らかい丸パンを食べてから、着替えた。

 もうその頃には日は登っていて、観光(さんぽ)には丁度いい時間だった。


(マジでいい人すぎだろ、バルトさん)



 俺はポケットからバルトに貰ったお小遣い(コイン)を触りながら、ミーシャの頭を撫でる。

 ミーシャは長袖長ズボンのあまり、『可愛らしくない服』を着ているーー


(……ミーシャ(そざい)が良いから、マジ可愛いけどな)


 ーーバルトの服の選び方(センス)は置いて、腕や首回りはまだ肉付きが悪いことを知る俺は、撫でる手も自然と力が弱くなる。


(流石に2食でよくなるわけないか……)


 軽い朝食を食べてから、少し経ったのでミーシャに何か食べたいものはないか聞いてみる。


「ミーシャ。何か、食べたいものあるか?」


 ミーシャは、俺の言葉を受けどうしようかと悩んでいるようだ。


(まあ、バルトの金だし自由に使わせてもらおう)


 俺の人としてどうかと思う(そんな)考えなどつゆ知らず、ミーシャのツンツンで足を止めた俺は彼女が指さす方向を見る。


「あれ食べたいのか?」

「うん」


 頭を縦に振り、ミーシャは肯定する。

 ミーシャが指さしたのは、果物のようだったがーー


(なんで、乾燥させたもんバッカなんだ?)


 --先刻(さっき)から気になっていた事だが、どこの店も乾燥させたものや、液体を満たしたビンに詰めたものが大半を占める。

 俺は手早く買い物を済ませようとしてーー


(………なんて言えばいいんだっけ…な……)


 --その店の前で一時停止(フリーズ)した。


(やべ、どうしよ。どうしよ)


 焦ると頭はうまく回転しない。

 そこでミーシャに頼ろうと彼女の方を見るが、男のプライドでそれはやめる。

 う~んとしていると、心配したらしいミーシャがクイクイっとしてきた所であの紙(じしょ)のことを思い出し取り出す。


(スミマセン。甘く見てました。……外国や異世界では、まず『買い物』ができないといけませんでしたね)


 俺はジンさんの顔を想像しながら、ありがたやー、ありがたやーと心の中で感謝を伝える。

 ポケットからバルトのお金(コイン)を取り出しながら口を開く。


「****、***、*****」

≪訳:これいくらですか?≫


 その後の会話はほぼ(じしょ)をなぞるだけだったので簡単だった。

 俺は買った干したイチゴっぽいものがいくつか入った袋をミーシャに渡すとミーシャはウキウキとした様子で食べ始めた。

 俺も一つもらって食べてみるとーー


(すっぱぃ)


 --クエン酸を直になめた時のような強めの酸っぱさだった。

 急いでミーシャの方を見てみると、ミーシャは顔を


o{{>.<}}o

>>こんな風にしていた。


 しかしーー


「ミーシャ。それ好きなのか?」


 ーー口に食べ物が入ってるからか、首だけの肯定だったがミーシャは酸っぱいものが好きらしい。

 袋から一つずつ取り出して、小さい口でちびちびと食べていく姿はとてもとてもーー


(かわゆぃ、マジかわゆす)


 --可愛らしく、少年(タケル)はデレッデレだった。


 そんな至福の時間を強制終了させた(ジャマした)のはーー


「*********!」

「***! ********!」


 --金髪君、もとい、何やら細長い剣を持った若い男に追いかけられているくすんだ(・・・・)金髪(・・)君だった。


「?!」


 ミーシャは近くを高速で走った2人(そいつら)に驚いて果物が入った袋を落としてしまう。


「こんやろぉぉ」


 それに少年(タケル)がマジギレしたのはコンマ数秒で。


「***!」


 少年(タケル)を見た青年(バレル)がUターンして少年(タケル)を巻き込んだのは数秒だった。


 少年(タケル)は驚いた顔の彼女(ミーシャ)を抱きかかえて、青年(バレル)に連れていかれるのだった。



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