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小 3

 男の子と話をするのは涼が初めてだとほのかは言った。

「今まで女の子としかおしゃべりしたことないから、ちょっと緊張しちゃうよ」

 涼も女の子と話をするのはほのかが初めてだった。涼の近所には同い年の子が少なく、女の子なんて一人もいなかった。そのため、ほのかが言うことやすることが全て新鮮だった。

 周りからはなぜか何も言われなかった。もしかしたら誰もほのかのことを気にしていなかったからかもしれない。とりあえず冷やかしの心配はなくなった。

自分が冬生まれで、その年の初雪の日が誕生日だと言うと、ほのかは憧れの目をした。

「初雪の日に生まれたなんてロマンチックだね。すっごく素敵。涼くんが生まれたのを、雪がお祝いしてくれたんだよ。あたしは夏生まれだから羨ましい」

 こんなことを言ったのはほのかが初めてだ。

 始めは緊張していたが、だんだん緩んできたようだ。登下校はいつも一緒だし、ことあるごとに涼のもとにやってくる。涼も「お前」ではなく「ほのか」と呼ぶようになった。常に頭の中にほのかの姿があった。

「あたし、冬が大好きなんだ。ずっとここに来たいって思ってたの」

 涼は少し驚いた。冬が好きだと言ったのもほのかが初めてだ。

「なんで?冬なんて寒いし雪だって降るし」

「その雪が好きなんだよ。たくさん降ると嬉しいの」

 ほのかは首を傾げながら聞いてきた。

「涼くんは、雪好きじゃないの?」

「好きじゃないよ」

 ほのかは、どうして?というように顔を見つめてきた。

「雪って危ないだろ。どれだけ事故が起きてるか……」

「でも、雪って綺麗じゃない。すっごく綺麗じゃない。事故なんか……関係ないよ。雪は何も悪くないよ。どうしてそんなことを言うの?」

 ほのかは声を強くした。涼は洋子の顔を頭の中に思い浮かべた。洋子も同じことを言っていた。女は雪かきをしなくていいからそんなことが言えるのだ。

「俺は雪が綺麗なんて思ったことないよ」

 ほのかは寂しい目を向けてきた。

「それに、男は雪かきしなきゃいけないんだ。ほのかは女だからしなくていいけど、無理矢理やらされるんだぞ」

 ほのかは俯いた。確かに雪かきは大変だと思ったのだろう。

「雪なんか降ったって意味ないんだ」

 トドメを刺すように言うと、ほのかは歩いていってしまった。

 

 そんなことを言われても、ほのかは雪が降ると必ず外に出た。そして涼を呼ぶ。

「涼くん、雪降ってるよ。雪ダルマ作ろうよ!」

 ずっと部屋で引きこもっている涼を連れ出そうとするのだ。

「なんでだよ。寒いのに」

「でも雪降ってるよ」

「雪が降ってるから雪ダルマ作らなきゃいけない決まりなんてないだろ」

「あたし、雪ダルマ作りたいよ!」

「一人で作ればいいじゃないか」

「だめだよ。涼くんが一緒じゃなきゃ無理だよ。一人じゃ作れないよお」

「じゃあ諦めろ。俺は絶対に外になんか出ないから」

「そんなあ……」

 ああ言えばこう言って、涼が手伝ってくれるように仕向ける。だが涼は全て拒否した。雪ダルマを作りたいなんてどうして思うのか。作ったってすぐに溶けちゃうじゃないか。

 仕方なく、ほのかは一人で雪ダルマを作り始めた。涼はじっとその様子を見ていた。なかなか丸くならないので、ほのかは残念そうに俯いた。それでも涼は動かなかった。

 ほのかの健気な姿を見ながら過ごした。一人で一生懸命作っている。よく飽きないなあとある意味驚いていた。

「もう少しで完成だよ」

 ほのかは強気の顔で言った。



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