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中 5

 中学二年生の冬に、涼はあることを決意した。ほのかと同じ高校に受験で合格したら、好きだと伝える。ずっと胸の中で暖めていた想いを告げる。ほのかが何と答えるかはわからない。受験で合格できるかという大きな壁だってある。高校生になった自分は笑っているか、暗い顔でいるのか考えるのは怖かった。だが、いつまでもこのままではいけないと思ったのだ。絶対に告白する。何としてでもほのかに想いを伝えたい。そして、もっと自分に自信を持てるようになりたい。ほのかに告白することができたら、もっと成長すると強く自分に言い聞かせた。

 そのため、必死に受験勉強をした。もし合格できなかったらまずい。受からなかったら意味がない。ほのかの志望校は涼にとって、何とか入れそうな学校だった。涼は頭が悪いというわけではないが、得意科目がほのかと正反対なのだ。何とかして苦手な科目を乗り越えなければいけない。ほのかよりもずっと努力するということだ。

 女子校に行くかもという不安はなかった。ほのかは女子の付き合い方が嫌いらしい。

「集団でグループ作って、違うグループの子とは目も合わせないって感じ。本当、女って怖い生き物だよ」

 以前、ほのかがしかめっ面で愚痴っていた。

「でもほのかも女じゃないか」

「だからこうやって、嫌だなあって言ってるの」

 涼は苦笑した。さすがに男に女の世界はわからない。

「あたし、男になりたいなあ」

 ため息を吐きながらほのかが言い、すぐに涼は首を横に振った。

「いや、だめだろ。お前が男になったら、俺の立場はどうなるんだ」

 きょとんとしながらほのかは言った。

「え?いい親友同士になるんじゃないの?それに、あたしが男になればこんなふうにこそこそ話さなくてよくなるし」

 基本的に涼とほのかが二人で話をする場所は、人気の少ないところや廊下の隅などだ。これは涼が頼んだことだ。

「別に何も恥ずかしくないのに」

 しかし涼は頭を下げた。

「ごめん。でもやっぱり、変な意味でとられたら嫌じゃん」

「変な意味?」

 ほのかは首を傾げて見つめてくる。

「あと、涼ちゃんって呼ぶのもやめてほしいんだけど」

「えっ?約束破るの?」

 涼はまた暗い気持ちになった。もうそろそろリョウと涼は違う人物だと気付いてほしい。もう一人のリョウの話を聞いていると、だんだん嫉妬の思いが浮かぶ。そんなにいつもいつもほのかと一緒にいたのかと考えると嫌な気分になる。早く気付いてほしい。そして、もう二度とリョウの話をしないでほしかった。

「本当、ごめん。でも苗字で呼び合ったほうが自然な感じがしないか?二人でいる時は涼ちゃんでいいからさ」

 ほのかは、むっとしながら言った。

「……わかった。じゃあいいよ。えーっと、涼くんでいいの?」

「風見の方で」

 すぐにそう言うと、ほのかは睨むような顔をしたが、仕方ないというように目をそらした。

 

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