表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/35

中 3

 突然目の前が真っ白になった。何も見えない。白一色だ。この世界から色が消えてしまったようだ。

「ねえ」

 ほのかの声が聞こえた。

「涼くんの夢ってなあに?」

「えっ?」

 涼は目を大きくした。どこかで聞いたことがあるような気がした。

「あたしには夢があるよ……」

「夢?清谷の夢?」

 頭を抱えながら呟いた。

「夢っていうか……やってみたいこと」

 さらにほのかの声が耳元で聞こえる。姿はないのに声だけ聞こえてくる。

「何だこれ……」

 目を閉じ、首を横に振った。遠いような近いような場所からほのかの声が聞こえてくる。その場にしゃがみこんだ。学校の廊下のはずなのに空気が冷たい。雪の中にいるみたいだ。

「どうしたの?涼ちゃん」

 はっと我に返った。目の前に、不思議なものを見るような顔でほのかが立っていた。

「具合悪いの?」

 勢いよく涼は立ち上がり、ほのかの肩を掴んだ。

「今、お前変なこと言ってただろ」

「変なこと?」

 小さく頷き、もう一度涼は言った。

「涼くんの夢はなに?とか、あたしには夢があるよとか」

 ほのかは首を傾げた。

「そんなこと言ってないよ」

「言ってただろ。それに、周りが雪で覆われてるみたいに白くて寒くて」

 苦笑いしながらほのかは言った。

「なに言ってるの?変な夢でも見たんじゃない?」

「本当なんだよ。信じてくれよ。夢なんかじゃないよ。絶対夢じゃない」

 そういいながら心の中で思った。夢じゃないならなんだというんだ。どうして声だけ聞こえたんだ。ずっと遠くから聞こえたような気がしたが、すぐとなりで聞いているような気もした。そして、なぜ涼ちゃんではなく涼くんと呼んだのか。

 必死な涼を見つめ、ほのかが軽い口調で言った。

「疲れてるんだね。早めに寝たほうがいいよ」

「違う……。違うんだよ……」

 付き合いきれないというようにほのかは歩いていってしまった。ほのかがいなくなると不安な気持ちはなくなった。

 今のは何だったのか。しかし考えるのが怖かった。それを知ってしまったらまずいと思った。

 

 ほのかの言っているリョウは誰のことか。もう一人のリョウはどこにいるのか。もし、もう一人リョウがいたら、どうしてほのかは勘違いしているのだろう。

 あたしには夢があるよ……。

 ほのかの夢とは何だろう。もう一人のリョウは知っている気がした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ