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Sound of Magic ~カエルが鳴くから歌いましょっ!~  作者: ブルー・タン
第2章 3歳児お披露目珍道中編
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94 サジックスの行く末

今回も主に親父殿と爺さんのターン


「もうあるまいな。今日はただの爺さんとしてロックとの時間を楽しみにしておったのじゃ」

「次で最後です。サジックスについてですが、それほど重い話にはならないかと」


特に聞いてないがサジックスについてなんか王様と相談するようなことがあるのか?

親父殿が重い話じゃないって言ってるし、事前に俺に話されてない程度ならあんまり気にすることでもないのか?


「おお!あれもロックの魔法で作ったものかのう?」

「その通りです」

「で、サジックスに関する話とはどんなことじゃろうな?」

「先日、お披露目にて演奏をいたしましたが、ロックと私の演奏の違いについてはお気づきでしょうか?」

「だいたいじゃが、ロックは一音ずつ演奏していたのに対し、ディーンはいくつかの音を同時に出したりしていたのう」


親父殿と俺では音楽に対する才能も経験も雲泥の差だから聞けば一発で違いは分かるだろうけどさ。


「そうです。そのためには指ごとに魔力を別々に放出することが出来ねばならず、それに加えて放出する魔力の強弱によって音の大きさも調整できるので、魔力操作が精緻になればなるほど複雑な曲を演奏することが出来るようになります」


お~。

親父殿が和音で演奏してるのは気が付いてたけど、強弱までつけてたのか~。

ずっと練習に付き合ってもらってたのに気が付かなかった。


「相変わらずお主の魔力操作の精度は驚異的じゃのう」

「それほどでもございません。あの程度であれば修練により誰でもできるでしょう」


王様から見ても親父殿は驚異的なのか。

あれだけの事が出来る親父殿が謙遜してもイヤミにしか聞こえんな。

決してイヤミを言うタイプではないけど、その辺りの部分は天然なのか?

このまま練習を続けても俺にあのレベルの演奏が出来るとはとても思えないんだが。


「それで何が言いたいのじゃ?」

「まず、前提の認識としてサジックスを使うと操作した魔力が音になって発現します」

「それは魔法を使った楽器じゃし、そうなんじゃろうな」

「手本となる演奏を用意し、使用者がそれを模倣することによって、魔力操作の練度を上げる修練となります」


なるほど、魔力を操作する練習用の魔道具として使うって言うことか。


「ほほう」

「今までの漠然とした修練や経験則による運用と違い、修練の結果が演奏として聞こえるためどれだけ魔力操作の熟練度が上がったか一目瞭然です」

「なるほど。魔法兵や騎士学校の教練として取り入れることによって、国の魔法使いの練度を底上げすると言うことじゃな?」

「はい。また、子どもがあれだけ楽しめると言うことは、教育開始前の幼年期から子供の遊びの一環として魔力の修練を開始できるのも利点と言えるでしょう」


幼稚園の先生が子どもと一緒に歌を歌ってる横で先生の演奏を邪魔するいたずらっ子のイメージしか湧かないな。


「重い話ではないと言いつつ、何年、いや何十年計画の壮大な話題じゃのう」

「申し訳ありません」

「ロックよ、ひとまず、王都に居る間の空いている時間にサジックスの魔石は何台分くらい作成可能じゃ?」

「うーん。音程の調整をしながら作るからな~。頑張れば夕食前と後に1台分ずつかな?」

「……結構早いのう」

「呪文唱えたりするわけじゃなくて、魔力を込めるだけだからね~。まだ2台しか作ったことないし、量が増えて作業に慣れてくればもう少し作業が早くなるんじゃないかな」

「ひとまず王都に居る間に10台分作成してみてくれんか?もちろんただとは言わん。お爺ちゃん価格で買い取るつもりじゃ」

「お金は当面は使い道が無いから親父殿にでも渡してくれればいいや」


家族思いの親父殿が俺のお金をピンハネするわけがないしな。

税金は取られるかもしれないけど。

でも、お爺ちゃん価格って、色を付けてくれるってことだよな。


「でも、まだ出来たばっかりの楽器で同じ音程の魔石を作っても、木管の影響で音が変わっちゃったりしないかな?」

「どういうことじゃ?」

「前の世界の聞きかじりの知識なんだけど、楽器って使用する材料の硬さや形状による音の反響で聞こえ方が変わると思うんだよね」

「ふむ。それで?」

「たぶん爺さんが欲しいのは訓練用として同じ音が鳴る必要があると思うんだけど、木製の楽器だと特にそれぞれ癖が出たりするから、作ったサジックスが全部同じ音になるとは限らないんじゃないかな?」

「いや、楽師が演奏する楽器であれば精緻な調節も必要じゃろうが、魔法兵の訓練用じゃからそこまでの精度は求めておらんよ」


あ、そっか。

別にそれで練習する人たちは別に人に聞かせるための練習をするわけじゃなくて、あくまで魔力操作の訓練の一環だからそこまでの完成度は求めないってことか。


「それなら10台分なら出来ると思うよ。作った魔石はどうやって引き渡せばいいの?」

「次に王都に来るのが何時になるかわからんのじゃから、王都を出る前に顔を見せにくればいいじゃろ。儂も孫の姿が見れた方が嬉しいしのう」

「わかったよ爺さん。献上したサジックスの木管部分を作ったのは、シェード侯爵に紹介してもらった王都の貴族ご用達の家具屋さんだから、同じものを作るように頼めば大丈夫だと思うよ」

「ほっほっほ、了解じゃ。ディーンよ、もう重要な話は終わりじゃな?」

「はい」


親父殿の返事を聞くと、爺さんはテーブルの上に置いてあるベルを鳴らして人払いしていた人たちを呼び戻した。


「お茶を入れなおしてくれ、全員分じゃぞ。では、お茶でも飲みながらロックやミアスの話を聞かせてくれんかのう?」


その後、俺たちは夕食の時間まで取り留めもない話をした。


自宅で編集中に、王様のセリフの語尾を「~じゃのう」とタイプすると「~邪脳」と変換されます。

なんだか悪魔的な悪巧みをしそうで、編集をしながら一人でニヤリとしてました。


話は変わりますが、昔つかってたツイッターのアカウントの表示を作者名に変更して復活させました。

小説に関すること以外にも日々思ったことを呟くつもりなので、良かったらそっちも覗いてみてください。


次は9月16日(火)10:00を予定しています。

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