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Sound of Magic ~カエルが鳴くから歌いましょっ!~  作者: ブルー・タン
第2章 3歳児お披露目珍道中編
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91 プイスッ!

「王よ、あまりからかわんでやっていただきたい」

「ちょっと調子に乗りすぎたようじゃのう。ロック、冗談じゃ。そう剥れるでない」


プイスッ!

……別に剥れてないし。


「ありゃ~、完全に臍を曲げてしまったようじゃのう。ディーンよ、どうすればよいかのう?」

「いや……こういう状態も珍しいもので……」

「ミアスはわからんかのう?」

「ふふふっ。きっとお爺ちゃんに甘えてるのよ~。私たちにもこんな態度とらないもの~」


……別に甘えてないし。

(そん)なんじゃないし。


「まぁしょうがないかのう。ディーン、ロックの魔法について儂が知っとくべきことはこんなものかのう?」

「そうですな。ロックも話すことがまだあるのであればこんな態度はとりますまい。ここからは私が話を進めましょう。まず最初は先日、お披露目の際に献上したヌイグルミがからむ話になります」

「最初と言うことは他にも案件が有るって事じゃな。転生者であり稀有な魔法の持ち主であれば問題が尽きぬのは仕方のないことじゃな」


プイスッ!

別に俺はトラブルメーカーでもホイホイでもないし。


「しかし、ヌイグルミのう。あれは面白いものじゃな。昨日は一日中いろんな場所から蛙の声が聞こえてきてのう。娘達が仲のいい女中や貴族の娘なんぞに自慢してたようじゃ。今は良いがそのうち苦情が出そうではあるがの」

「それについて、ロックがリセムの町より王都入りする組が同一であったため同道したシェイド家の娘と友誼を得ました。その際に、お披露目での献上後、同じ品を記念として贈る旨約束をし、昨日、シェード家の家族で当家の館へお越しいただいた際に渡しました」

「特に問題が無いように聞こえるのじゃが?」

「魔石に記録した音が、先日のお披露目の際にロックたちの披露した蛙の歌になっており、使用している魔石も必要に応じて多少質の良い物になっています」

「ああ、王家への献上品より質が良いことを気にしたか。王家への献上以前に流通はしておらんのじゃろ?」

「は。その通りです」


あ、やっぱりそこは気にすべき部分なのか。

一昨日、王家へ献上して、翌日には良い物が別の者の手にあるってのは確かに問題あるよな。


「ロックたちの歌声が入ってると言うことはじゃ。どちらかと言えば商売物と言うよりは特別な記念品と言う認識でよいか?」

「おっしゃる通り」

「今後は蛙以外のヌイグルミも作るのじゃろ?」

「はい」

「であれば、そこに文句を付けては儂自らヌイグルミがより良い物への発展することを阻害することになるということじゃな?」

「そうなりますか」

「そうなるのう。まぁ、もとよりロックのすることに全く文句なぞないんじゃがな」

「そう仰ってくださると思っておりました」


あ、問題なしなんだ。

いくらプイスッ!状態でもここはちゃんと頭を下げておかないとな。

前の世界では一応、ジャパニーズビジネスマンだったせいで、嫌でも頭を下げる癖がついてるともいうが。


「ただし、本題はここからです」

「ほほう?」

「ロックから場で歌った子ども達5人がお披露目の記念として同じヌイグルミを1つずつ持つことについて提案がありました」

「フムフム。流れ的にはそうなるじゃろうな」

「ムルスイ家とその家臣のシャスタリア家については渡しても問題なしと考えます」

「問題が有るのはモックロー家だというのじゃな?」

「王への忠誠を疑うものではありませんが、他国への情報の流出を懸念しております」

「ロックの安全を考えればそうじゃろうな」

「一応、私の認識としてはエルフの国である大森林はドラ王国からかなり遠く、間にいくつかの国を挟んでいるため、直接戦争になることは無いと考えております」

「まぁ同盟国からの要請が有っても、水軍が半数を占めるライト家が派遣されることはあまり考えられんのう」


へぇ。

ライト家の水軍ってそんなに多かったんだ。

船は結構いっぱい持ってると思ってたけど、いざと言う時には軍船として運用できる作りなのかもしれないな。


「大森林は常に拡張を考えており、情報を得るために常に各国に草を放っているため、他国との関係はあまりよくないのが現状です。その関係が悪化した際には、ドラ王国に対する同盟国から出兵要請の可能性は否定できません。ですが、王の仰る通り水軍・海軍が主戦力のライト家が出兵する事は無いと考えております」

「場合によっては大森林までの船は用意してもらうかもしれんがのう。大森林相手ではライト家は相性が悪いじゃろう」


大森林との間に別の国が有るとはいえ、そこまで徒歩で行くくらいなら途中まで命の川を遡上した方が戦力を温存できるって事か。

兵士の体力も無限じゃないし、徒歩での行軍の方が途中で亡くなる人が増えるってことだよな。


「にも関わらず、特殊な薬草の類を中心に大森林でしか産出しない物資も多いゆえ、国交を断つわけにもいかん」

「仮想敵国とまでは言いませんが、友好国ではない大森林との情報や物流を手掛けているモックロー家へ献上品以上の質の品を渡していいものかと」

「そうじゃなぁ。排他的に過ぎる大森林との物流はモックロー家の様にエルフの血が流れている者が間に入らなければ見向きもされんしのう。王国としてもモックロー家は切るに切れん状態ということじゃな」


テンプレ的なエルフって排他的なイメージが確かにあるけど、この世界のエルフってそこまでエルフ以外を排除する種族なのか。


「大森林との物流の間に入ることで財を成しているモックロー家に情報を与えることを考えると、シェード家を特殊事情として他の家にも送るべきではないと考えるのですが」

「そうじゃな。モローならば説明せずとも察しているであろうから取り扱いにも気を付けるじゃろう。ロック、お前の提案は実に素敵な物じゃが、国の事情と言うものもあってのう。情報なんていつかは漏れるものじゃし、友達に特別なヌイグルミを記念品としてやることについては、今すぐではない方がいいじゃろうな」


まぁ、個人の自己満足と国の事情じゃ比べるべくもないわな。


「わかったよ爺さん。その辺の判断は任せるから、あげてもいいタイミングになったら教えてくれ」

「おお、機嫌は直ったようじゃな」


……プイスッ!

別に機嫌とか直ってないし。

って言うか別に機嫌悪くなんてしてないし。


「モックローと大森林については国の事じゃし、儂がどうにかせねばならんのう。約束は出来んが早くプレゼントできるよう努力するとだけは言っておくのじゃ」


爺ってのはなんでこう孫に甘い生物なのかね。

まぁ、この爺さんは自分の子供にも甘いように見えるけどな。

更新設定を間違ってるのに今日気が付き、あわててアップしなおしました。

申し訳ありません。

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