84 勝手に立っていく予定
8/16 誤字等の指摘がありましたので修正しました。
楽師のアガンさんに解放された段階で既に帰路に着いた家も多く、残っていた人数も半数位まで減っていた。
俺も既に腹はいっぱいだし、頼まれてた演奏も終了したし、両親と合流することにした。
「親父殿、カヤヨ男爵とイーマス男爵にばれました」
「うむ。2家は爵位はそれほど高くないものの王家の初代と深いかかわりがある由緒ある家だ。何らかの言い伝え等あるのかもしれんな」
やっぱそういう認識なんだな。
「念の為、口止めしておきましたが大丈夫でしょうか?」
「あの2家は性格の違いは有れど、根本的な部分では求道的な者がほとんどだ」
「求道的?」
「カヤヨ家、特にザル殿は基本的に料理以外に興味が無いゆえに、お前の前の世界の料理に関する知識以外には全く興味あるまい。自分の料理に必要だと思う行為以外は一切しない人間だから特に問題ない」
ほう。
「イーマス家は新たな楽器や音楽を求めてエントシーに人を派遣してくる。今日、お前に音楽の新たな可能性を見出したであろうから、アガンはむしろお前の味方と言って良い。多少口は軽いが、話すべきでないことを口に出さないだけの頭は回る者だから安心しろ」
あ、やっぱり口は軽めなんだ。
滑らかだとも言うか。
「ザルさんが王様にもばれてるって言ってましたが」
「うむ。そうであろうな。だが、現王は国に敵対しない限り心配しなくていい」
「わかりました」
親父殿が言うなら王様にばれてるのもほぼ確定か。
「先に言っておくが、別件で王に会う予定がある。その際に話をしておくが問題ないな?」
「もうばれているのに今更ですか?」
「うむ。現状では露見しているのは転生者と言うことのみだろう。謁見の間でも述べたとおり魔法の属性等については報告するよう求められているゆえ、王にはその話はせずばなるまい」
あ、そっか。
転生者であることがばれるのと、俺の属性がばれるのはイコールじゃないのか。
なんでか、全バレしてるつもりでいたわ。
「王都滞在中、お前は王の外戚でもあるゆえ一度は王に謁見することとなる。また、ザル殿とアガン殿が日参する可能性が高い。何か問題はあるか?」
「あの、シェイナちゃんにヌイグルミをプレゼントする予定なんですが……」
なんせ、俺の初めての同世代の人間の友達だから大事にしないとね。
別に将来性を見込んでの青田買いとかでは決してない。
「それについては、モロー殿に館にお越しいただくようお願いしておいた」
「爵位が上の人を自分の館に呼びつけて、対外的に問題ないんでしょうか?」
「今日の事もあるゆえ、周りの貴族は勝手にお前の警護体制を強化していると思い込むから問題ない」
「そんなものですか?」
「うむ。今日のお披露目参加者を中心にヌイグルミについても打診があろうが、それについてはこちらで適当にさばいておく。現在、手元にあるヌイグルミについてはシェード家へ渡すもの以外は売っても問題ないか?」
「あ、出来ればルーナの分を一個、取っておいてください」
「うむ、そうしよう。明日からも忙しくなるであろうから覚悟だけはしておけ」
「最近は緊張の連続でしたし、領地に戻ればあの兄達も居るので、王都に居る間だけでもゆっくりしたいのですが……」
「うむ。リセムでの滞在を1日伸ばしてゆっくりしよう。王都に居る間は諦めよ」
親父殿、俺は精神はともかく肉体的には紛うことなき3歳児なのです。
3歳児を働かせすぎだと思います。
「人もはけてきた。ミアス、そろそろ帰るぞ」
「はい、旦那様~」
お披露目参加者でやっと終わったとか思ってるのは俺だけなんだろうな~。
「ロック~、さっきお父様が、私たちが王都に居る間に初孫とゆっくり会いたいから、一度は会いに来なさいって~」
「え?僕って初孫だったんですか?」
「そうよ~。闇属性じゃなかったから王位継承権はなかったけど、私が最初の子供で第一王女よ~」
またしても新たなる新事実が発覚してしまったよ。
だから王様もお袋にあまいのかな?
でも、またしても王都に居る間の予定がまた増えてしまったよ。
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館に帰ってから、俺が王都に居る間に誰とどこで何時会わなきゃいけないか親父殿と再度確認した。
1 シェード侯爵親子 ライト家の館にて 2日後の午前中に来て昼食を一緒に取ると親父が決めてきた
2 ドラ王様 王城にて 2日後の午後から会って夕食を一緒に食べるとお袋が決めてきた
3 カヤヨ男爵 ライト家の館か王城 日時は未定、後程打診がある
4 イーマス男爵 ライト家の館 日時は未定、後程打診がある
以上の4組が合うのが確定してる相手。
2日後は丸一日忙しい感じだ。
けど、いくら自分の祖父とは言え王様が強烈なプレッシャーだが、ひとまず初孫としてめでてもらえばいいのか?
でも、カヤヨさんの話だと王様には俺が転生者だとばれてるみたいだし、親父殿と話す内容を軽く打ち合わせておいた方がいいかもしれんな。
それ以外に、おそらくヌイグルミやサジックスが欲しいと打診があった場合、話の状況によっては俺も一緒に合わなきゃいけない可能性があるな。
「親父殿、出来れば既に会う約束をしてしまったカヤヨさんとイーマスさんを優先してもらいたいんですけど」
「うむ、そうだな。その2人はよっぽどのことが無ければお前に仇なすことはなかろう。より良い関係を築いておくべきだな」
「できれば、前の世界の料理をまた食べたいんですが、カヤヨ男爵にお願いできませんか?」
「うむ。2日後に王城へ赴いた際に、お前からの情報提供の対価として頼んでみよう。カヤヨ男爵も気難しい男だが、実際に前の世界で料理を食べていたお前の評価は気になるところであろう。そういった線で話を進めてみるがあまり期待するな」
「わかりました」
料理の内容は大衆居酒屋的だったけど、味は超美味かったからね。
どんな理由をつけられようとあの料理が食えるなら問題ないと思うな。
予定に関する仕事あるある的なこと。
なんで全く接点のない取引先の人が、ほぼ同じ時間帯に打ち合わせの話を入れてきたうえで、その日以外無理ですとか言いだしたりするんでしょうね?
で、無理やり時間を調整して打ち合わせを開始すると、先に入れた打合せが滅茶苦茶伸びて、準備時間2時間入れててもギリギリになったりするのです。
次回の更新は8月7日(木)10:00を予定しています。




