79 緊張感が無いと心置きなく飲み食いができます
王城に戻ってきました。
晩餐会と銘打っているが、主役である子ども達の事を考えて日が沈む前に開始されるので、一回館に帰って着替えて戻ってくると、少し休憩を取っただけでギリギリの時間になってしまう。
入城後、一応は待機室に入ったが、既に晩餐会会場への入室は随時始まっており、ゆっくりしている時間は無いようだ。
会場への入室は本人と家族の3名のみで、お付の人や護衛は入れないので、フーやホーはこの部屋で終了時まで待機してることになる。
でも、護衛って護衛対象が外出中は飯を食う暇もないし、トイレも交代だし、睡眠は後に寝て先に起きるし、本当に大変な仕事だよな。
ライト家はホーが護衛隊長で何人もの部下でやりくりしてるけど、こういう式典の時は見栄え的に猫族の護衛が居ればその人を連れてくるものらしい。
まぁ、今回はフーが俺の乳母件護衛だから式典にはフーが謁見の間に一緒に入ったんだけど。
現在は係員の人たちが会場の入室状況を見ながら呼び込みをしてくれるそうなので、呼び込み待ちの状態である。
ちなみに、会場へ行く順番はお披露目の時の入室順と一緒だ。
「ところで親父殿、お披露目は献上品として物品を持ち込むのはわかるんですが、晩餐会の会場にも自分たちで楽器を持込むんですか?」
「うむ?いや、我々が持ち込むわけにはいかん。お前が予想より早く修繕したので、館に戻る前に係員に預けてある」
「あ、そうなんですか」
会場へは呼び込みで入るし、付き人はついてこれないし、親父殿が持って入るのも変だなと思ってたけど、既に引き渡し済みでしたか。
「何時ごろ演奏すればいいですか?」
「子ども達が有る程度食事を済ませてからだな。王城の晩餐でしか食せない料理も多々ある。子どもたちの食事自体は早めに終わるだろう」
「楽師とかが演奏してるんですよね?」
「うむ。係員には事前に椅子と楽器を子ども達の居るスペースに設置しておくよう話してある。お前が演奏の準備を始めれば目立つゆえ、王城の楽師であれば演奏開始まで間を持たせた上で上手く切り上げるだろう」
その辺りの空気も読めてこそ王城の楽師か。
「何にせよ、レシピが王城の厨房でのみ伝わっている門外不出の料理が幾つもある。まずは食事を楽しめ」
「了解」
トントン
「男爵家までの入室が完了しております。ライト家から順に晩餐会会場へ移動してください」
お、ようやく移動か。
どんな飯が食えるのか今から楽しみだわ~。
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「ライト伯爵夫妻及びロック様」
男性係員の美しいバリトンの呼び込みで晩餐会会場へ入室した。
食事自体は立食形式と聞いていたが、入室すると会場は人が大勢いて各テーブルや飲料のカウンター付近に幾人かでグループを作り談笑している人たちが目に入ってきた。
晩餐会で立食?とも思ったがこの人数をテーブルに座らせてスムーズに食事を提供するのは無理だわ。
それぞれが談笑しながら好きな料理をカウンターに取りに行く方法じゃないと全員に食事なんてさせられない。
食事の提供はまだ始まっていないが、飲料を提供する人たちが銀のお盆を掲げて人の間を縫うように移動し、ウェルカムドリンクを飲み終わってしまった人に声をかけて動き回ってる。
入口を入ると、親父殿とお袋はグラスを、俺は子ども用の葦の様な植物をストローにした蓋付きの木のコップを渡された。
「これって、もう飲んでも良いんですか?」
「うむ。足りなければ樽を下げて歩いている係員に声をかければ子ども用の飲料を注いでくれる」
周りを見ると、ちょうど小さな樽を右手に持ち、左手に綺麗な白い布を持った人が子どものコップの蓋を開けて中身を注いで、蓋を閉めなおしているのが見えた。
早速、ストローに口をつけて一口含んでみると、仄かに花の様な香りのする飲み物が口に入ってきた。
呑みこんでみると、かんきつ類の果汁を薄めた様なほんのりと甘酸っぱい味で、甘味が口に残らないスッキリとした飲料だ。
例えるなら水で薄めたスポーツドリンクに花の香りを付けたような味。
……言葉にすると何だかまずそうなイメージにしかならないが、そもそも砂糖が高価で甘味と言えば果物がメインの世界において、これだけの甘味がついた飲み物が飲み放題なら子ども達は大喜びだろう。
「これより王が入室します。静粛に」
飲み物一口で感動してたらいつの間にか他の伯爵家やシェード家の入室も終わっていたようだ。
周りを見ると、別の入口の付近に王家の人たちが整列して待機していた。
「ドラ王及び王妃、入場」
スポーツをしてた頃は、スポーツドリンクを倍以上に薄めてガンガン飲んでました。
いまだにその頃の味覚が抜けず、そのまま飲むと味が濃くて逆にのどが渇きます。
作者的には500ccのスポーツドリンクを2000ccの水で割るくらいの薄さがちょうどいいと思っています。
次回の更新は7月18日(金)の10:00を予定しています。




