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Sound of Magic ~カエルが鳴くから歌いましょっ!~  作者: ブルー・タン
第2章 3歳児お披露目珍道中編
12/124

12 でぃす ぷれいす いず あうぇー(改稿版)

ちょっと短いです。


4/24 誤字を修正しました。

9/23 表現や口調・矛盾点等について改稿いたしました。

前の世界の知識がある俺にとっては、複雑怪奇すぎる服をフーに手伝ってもらってやっとこさ着用して食堂へ向かうと、食堂に居るべき他の一族は既に全員そろっていた。


扉を入って正面には当然であるが当主である父のディーンが座り、その左側に正妻のミアス、つまり俺のお袋が座っている。

向かって左サイドには幼児用の座面が高く落下防止のついた椅子に妹のルーナが。

右サイドには俺にとって何名か居る異母兄姉の内、光属性を持って生まれた3名が座ってこっちを睨みつけている。

ここに居る異母兄姉は年長者から、

フール、男、13歳

ムイ、男、10歳

ダイナ、女、7歳

となっており、俺が座るべき席は左サイドに座っている妹の右側だ。


「ロック。早く座りなさい」

「遅くなって申しわけありません」


親父に促されて席に向かって歩きつつ、食事の時間に遅れたことに対する謝辞を入れ、俺はルーナの隣の席に座った。


「うむ。そろったな。では食事を始めよう」


親父の言葉を合図に朝食が始まった。

だが、はっきり言ってこの食堂における俺のアウェー感が著しく、食欲がわかないほどひどいのだ。

なにせ、この部屋に居るのは使用人を除けば俺以外は全員光属性持ち。

俺がこの食堂に席を与えられている理由は、正妻の息子でこの正館に住んでいると言うだけだ。

他に事情が有るのかもしれないが俺は聞かされていないし、わかる範囲ではそれ以外に理由が無い。

だが、前の世界では一番上でも中学生にしかならない子供が事情を考慮するわけがなく、この家でそれなりの地位を得るにはまず光属性を持っていることが前提だと言う決まりをそのまま主張してくる。

姉のダイナはまだ年端もいかない子供なのでその辺りの事情が良くわかってないようだが、もうすぐ成人のフールはライト家の権力構造も既に弁えているし、ムイはフールの腰巾着的立ち位置だ。

俺がなにが言いたいかって言うと……


「父上。光属性を持たないにも関わらず食卓に着席している者がいるようです。非常に不愉快なので当主である父上から退席するよう指示していただけませんか?」

「母が違うとはいえお前の弟だ。わきまえろ」


実はこのあからさまに俺をディスってくる会話、朝食開始時に必ず行われる恒例行事だ。

フールのミドルネームは現在4。

現在ミドルネーム3は俺の伯父ユーディーであり親父の同母兄にあたる人だ。

この伯父とは何度か話したことがあるが、親父殿の兄とは思えない裏表のない明るい性格の人で、そもそも権力欲があまりなく、自分の子どもも俺の兄弟も分け隔てなく可愛がってくれる人だ。

ちなみに、この人は親父が何らかの理由で明日にでも死なない限り、年齢的に当主としての在任期間が短くなってしまうため当主になる目は無いが、本人は全く気にしてないようだ。

成人前から既に4とかなり早い番号がミドルネームが付く程なので、フールも生まれたときから通常に比べれば遥かに多い魔力量を持って生まれた。

その魔力量は相当なもので、現在のミドルネーム5であるムイの魔力量を追随を許さない程大きく引き離している。

ルーナが生まれるまでは影に日向に次期当主と言われ、親父以外の一族や使用人たちにそのように扱われて育ったようだ。

ちなみに現在のフールの魔力量や強さは父のおよそ7割程度、妹の三分の一にも満たないらしい。

で、さっきの茶番劇は、ルーナによってその地位を一気に引きずりおろされた事を憤りつつも、本人を攻撃する理由が無いため鬱屈した思いを格好の標的として光属性を持ってない俺にぶつけてるわけだ。

公明正大な嫌味は毎食ごとに必ず行われ、不完全とはいえ前の人生の記憶がある俺にしてみれば、ガキの戯言と解ってはいるんだが、あからさまな敵意を受けると食欲を大幅に削られている。

まぁ、ちゃんと食べておかないと後でおなかがすくだけなので、出された食事は無理やり胃に押し込むんだけど。


「しかし父上、ロックも今日から3歳です。分別をもって同じ食卓に着かない程度の気遣いくらいできないものでしょうか?」


いちいちチクチク煩いガキだな。

ここで飯を食えないんだったら俺はどこで食事をとればいいんだよ。

使用人用の食堂か?それはそれでフー達と一緒に食事するのも楽しそうだけど。

って言うか親父に提案して今度からマジでそうさせて貰おうかな。

毎食ごとにこのクソガキの嫌味を聞きながらいけ好かない面を拝むのも飽き飽きしてることだし。


「私のロックと一緒に食事をするのが嫌なら~、貴方が別の部屋で食事をすればいいのよ~?」


お袋のエアリーディングスキル0レベルのフォローも毎度のことだ。


「いえ。僕は彼と食事をすること自体が嫌だなんて一言も言ってませんよ?それに、そろそろ分別のつく年齢になった彼の成長を喜んでいるのです」


スゲーよフール。

俺にはさっきのセリフをどう縦読みしたらそんな理論にたどり着けるのか全く理解できない。

ぜひ一度頭蓋骨を開いて中身を見せてほしい。

俺がげっそりしながら周りの人間の顔色を窺ってると、これまたいつも通り、親父がただでさえ上向きな眉毛をさらに跳ね上げてデカイ声を出した。


「フール!弁えよと言っている!」


フールが親父の物理的圧力が有りそうな強烈な眼光に睨まれてようやく黙って飯を食い始める。

最後には親父に睨まれるのがわかってるのに、絶対に俺に対する嫌味を言うのを辞めないフールの根性と度胸だけは称賛に値すると思う。

ま、蛮勇だと思うけど。


「ロック。食事が終わったら私の執務室へ来なさい」


おや?親父が俺を呼び出すとか珍しいな。

俺ってば親父に呼び出されるような悪いことは何もしてないはずなんだが。


「わかりましたお父様」


その後、食卓には会話が一切無く、砂をかむような思いで朝食を無理やり詰め込んみ、全員が食事を済ませてから部屋を出た。


次の話は明日の10時に更新します。

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