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114 美の将来的な巨人

一部に人買いの為の日本の古い表現があります。

嫌いな方はご注意ください。


9/23 114話の最後の辺りの次話へつながる部分を一部改稿しました。

アクオンとおしゃべりできなかったのは残念だが、今回は帰りも船を送ってエントシーに戻ってきてくれるって言うし、こっちについてはそれを楽しみにしておくことにしよう。

問題はアルだ。

何やかやと理由をつけて屋敷に連れ込んで治療は済ませたが、お互いの立ち位置が微妙だ。

最終手段としては、サジックスを中心に置いた前の世界の音楽関係の相談役として給料を出すこともできるが、本人の意思も聞かずに決めることではない。

しばらくは色々と話をしてみるしかないか。


「将来的には按摩で食ってく予定だったの?」

「【生】属性の魔力を載せて按摩をすれば普通に按摩をするより効果が高くなるのを狙っての職業選択です。こちらの世界の按摩をそれなりに効果がありますが、やはりお金を出せる層はわざわざ按摩を呼ぶより魔法で直してしまうのがメインですから、医療自体があまり発展してません。前世で医者でもやってれば医療チートを狙えたんですけど」

「それを言ったら、俺も前世で音楽の勉強してれば音程がずれてるなんて指摘も受けなかっただろうな」


そのあたりは神の思惑があるのかもしれないがままならんな。

むしろ、素人が学生時代の記憶を頼りに適当に音を作ってたんだから正しい音が作れる方がおかしいんだよ。

……って開き直るところじゃないな。


「でも、【生】属性事態が希少なんだから、魔石に魔術を込めればそれで生活できないか?ライト家なんてそれが半分稼業になってるし」


多少属性の強さや魔力容量が少なくても、希少性の高い属性の魔術を込めた魔石はそれなりに売れるものだ。

しかも、【生】属性なんて言ったら回復系の属性としては一番癖が無く即効性が高い属性だから、怪我や病気が隣り合わせのこの世界で売れないわけがない。


「無理ですね。産婆になれない男子は弟子入りが出来ないため呪文自体を教えてもらうことができません。それに、そういった魔石は産婆達の副業となっています。彼女達の収入を奪う形になれば下手をすれば報復を受けかねません」

「言い方は悪いが所詮体を鍛えたことのない女性だろ?」

「でも、彼女等が居なければ死産の確立が跳ね上がるんですよ?下手をしたら領主すら敵にまわりかねませんよ」


なるほど、ごもっともだ。

ジャパネスクでも産院が整備されて産婆が廃れるまでは、村で産婆に頭が上がらないなんて普通の事だったらしいし。

そりゃ、近所のバアチャンが顔を合わせるたびに自分を取り上げたなんて話をされてたら足向けて寝られんわな。

だが、俺は魔力を込めれば録音の魔石になるんだが。


「魔力を込めて回復の魔石とかにならないの?」

「なりません。属性の強さにもよりますが、【生】属性の魔力だけを込めた場合、ちょっと疲労が取れるとか、二日酔いがちょっと緩和される程度です。按摩の師匠に弟子入りしたのも、視力がほぼないこともありましたが、魔力自体を使用した疲労回復と按摩の相乗効果を狙ってですから」


ただの魔力だけだと効果が微妙なのか。

光属性みたいに光が出るとか、俺みたいに録音できますってんならわかりやすいが、使用して疲労が少し回復しますじゃ効果が分かりづらくて買う奴も居ないってことか。

それなりの金額に結び付けようとしたらしっかり呪文を学んでる必要があるってことか。


「【生】属性の呪文ってどんな種類があるか知ってる?」

「産婆を職業としてるだけにメインは陣痛を和らげたり産道が開きやすくなったりとお産の補助になる呪文が多いそうですが、単純な体力回復や傷の治療などもあるそうですよ」

「なんで?」

「出産に立ち会ったことないですか?人死にが出るほど体力使いますし、狭い産道を通ってくるので結構血みどろですよ?」


残念ながら俺のプレヴィアスライフに結婚した記憶は無い。

まぁ、記憶自体が歯抜けだから本当は結婚してたのかもしれないが、出産に立ち会った記憶もないから現状ではあまり意味がない。


「自分で呪文が開発するのもまずいんだよな?」

「そうですねぇ、全く新しい機能であったり、魔石化して産婆達の収入に影響を与えなければ問題ないかもしれません。が、そもそも視力が無いので学問を修めるのも難しいですし、呪文学を学べるような裕福な家庭ではありませんけど」


ふむ。

俺にはフォルテって言う呪文学会最強の伝手もあるし、新規に呪文を開発する余地はあるのか。

場合によっては完全に取り込んだうえで俺が呪文開発を依頼してもいいな。

なんせ、疲労回復の効果がある魔石と言うだけで、俺が抱えてる事業の一つをさらに発展させることが可能だからだ。


俺は披露目の旅行から戻った5年の間に、フォルテを主軸に置いた魔道具開発チームによりいくつかの魔道具を作成した。

その中でも最大の成果が【超音波美顔器】だ。

超音波の共振により微細振動する金属のプレートを肌にあてることにより、毛穴の油汚れや化粧汚れを浮き上がらせ、細胞を活性化させ血行もよくなり、肌の張り艶が非常によくなるという美容に気を遣う女性垂涎の一品だ。

肌に当たる部分には常に暖かい温度を保つ性質のあるアポイタカラを使用、そのまま使用したのでは振動で痛みを感じるため、ローションとしてスライムの体液を数百倍に希釈した溶液に海藻から取れたトロミの成分を追加したものを主成分として使用している。

開発に3年の歳月を費やし、その間の被験者としてお袋やフーに試してもらっていたが、最初のうちは振動が強すぎて痛いだけだったり、ローションが良くなくて肌が荒れちゃったりと紆余曲折を経たため、完成した時の嬉しさはひとしおだった。

ただ、完成した超音波美顔器、大きな問題が二つあったため販売することが出来なくなってしまった。

一つ目は、肌に使用する部分は人の手で持って楽に取り回しができる重さにしなければいけなかったため、本体を別に作成したことでかなり大型化してしまったこと。

二つ目は、希少金属をかなり使用しているため、音の魔道具であることも併せて、国内で購入できるほどの財力があるのは王家のほかに2・3家しかないこと。

他にも細かい問題があり、普通の貴族家では購入も使用もできないものになってしまった。

ただ、効果はお袋のお墨付きをもらっているし、3年も費やした魔道具をお蔵入りするのは非常に忍びなかった。

そして、問題を解決するために魔道具本体を売るのではなく超音波美顔器によるサービスを売ると言うブレイクスルーにより、ビューティーサロンを開業することにした。

まぁ、一番の売りは超音波美顔器とはいえ、リラックス効果を期待した音が流れるサウナとか超音波風呂とか、【音】属性をメインにして作れる設備を追加してから開業した。

お袋がお茶会の席等で事前宣伝してくれてたらしく、ライト領に1号店を出店して以来大盛況となり、現在では3か月先まで予約でいっぱいなるほどだ。

客層のメインはドラ王国の貴族だが、他国の大使夫人からの予約すら入るほど評判が広まってる。

そんな状況のため、【超音波美顔器】2号機の作成に着手し完成を急ぎ、予約待ちの状況緩和を図るつもりだった。

が、王家からの横やりと言うか身内の我儘というか、半分ゴリ押しにより2号機完成とともにその【超音波美顔器】をメインにした2号店を王都に出店するはめになった。

現在は3号機以降の作成に着手しているものの、アポイタカラの加工はドワーフの王国に依頼しなければならないため、最も重要な部品の製造速度が非常に遅い。

アポイタカラの加工ができる職人の派遣を依頼したこともあったが、無下に断られてしまった。

恐らく技術や特殊属性が流出するのを嫌がったのだろうから仕方ない。


話が盛大にずれたが、俺は巷では【ヌイグルミ王子】と呼ばれているが、それは収入のごく一部でしかなく、ライト領と王都で出店しているビューティーサロンは現在の俺の収入の何割かを占める事業だ。

そこに、【生】属性持ちのアルの按摩をサービスとして追加すれば、さらなる収入が得られるに違いない。


「アル、提案がある。音楽関係のアドバイザー兼、ビューティーサロンのマッサージ師として俺に雇われないか?」

「【超音波美顔器】で有名な店ですか?音楽関係の方はともかく、按摩師としては修行を始めたばかりですから、最低限の修行が終わるまでは難しいですね。でも、将来の就職先が決まってるのはかなり助かりますからこちらからもお願いしたいです」

「よし。親はアルを売りかねん相手らしいが、未練はあるか?なければひとまず俺の屋敷の別棟に住まないか?あと、マッサージ師が一人じゃ話にならないから、アルの師匠にもそれなりの待遇にするからって声をかけたいんだが」

「貴族の言うそれなりの待遇がどれだけの物かわかりませんが、師匠は問題ないと思いますよ?」

「じゃぁ……」

「親には未練はないですが……妹が一人います。残して来れば女衒に売られかねないので連れてきたいんですが、それでもいいですか?」

「構わんよ。アルって言う人材を確保しておけるならその程度は全く問題ない。将来独り立ちするときに大店の商家や男爵家の侍女に推薦できるくらいはできるように教育もしよう。だが、親は文句を言ってこないのか?」

「この間、近い将来に女衒を呼ぶ話をしてましたから、幾何いくばくかの手切れ金を渡せば問題ないでしょう。手切れ金については将来の働きから返します。今日あったばかりに金の無心をするのも何ですが、投資と思って貸してもらえませんか?」

「そうか。早速サジックスの為に音の魔石を調律して正しい音階の基準を作りたいから、その報酬を前払いする。って言っても手切れ金っていくらくらい必要なんだ?」

「多すぎればまた金の無心に来るでしょう」


えーっと、時代小説かなんかで明治時代の女衒の相場を現代の金額に換算すると大体500万位みたいなのを読んだことがあるな。

だいたい一般のサラリーマンの年収だから、騎士爵の年金が銀貨50枚だし仮にそれと同じくらいと仮定して、それに支度金としてプラスアルファを追加して……


「銀貨で100枚あれば準備できるか?」

「ひゃっ!?」


あれ?計算間違ったか?

俺って実はかなり金銭感覚がマヒしてるのかもしれないな。

かなりの金額を稼いでる俺がそのあたりの金額をケチってその噂が流れるよりはずっといいか。

ひとまず、最近家令として雇ったサムに指示する。


「サム、誰かアルに付けて家から妹を引き取ってきてくれ。後腐れがあると面倒だから適当に契約書と領収書を作って持って行けよ。文字が読めないなら爪印でも構わん。それから他の誰かをアルの師匠のもとにやって、一度、別棟にご足労いただけ。アル、師匠も視力が弱いのか?」

「そうですね。左目は全く見えませんし、右目も人が判別できるほどは見えてません」

「アルの師匠を馬車で迎えに……いや、挨拶も兼ねて俺が直接言った方がいいか。今すぐに俺の馬車を館の前に回せ。その上でサムは俺に同行だ」

「早速手配します」

「その場で契約を行うことはまずないと思うが、念のために無地の箔紙を何枚かと、契約用のインク類を馬車に積んでおけ。アル、師匠は今日はどこにいらっしゃる?」

「この時間でしたら十中八九、診療所でしょう」

「そうか、診療所の場所を教えてくれないか?」

「……ロック様、私はほとんど目が見えませんので、道案内の類はちょっと出来かねますが……」

「そうだった、すまんな。サム、馬車の手配に行く前に、アルの師匠の診療所がどの地区か大まかに確認したうえで、仲介人テンバイヤーに繋ぎを付けて場所を確認させろ」


これでアルの師匠の診療所の場所についても馬車に乗り込む頃には判明してこちらに情報を流しに来るだろう。

さて、忙しくなるな。

最近、暇なことの方が少ないんだけどな。


あとがき1

ロックは騎士爵の年金が雇い人などの給与も含まれることを完全に失念してます。

実際は半分でも多すぎる金額だということに気が付いてません。


あとがき2

最後に登場したサム君は今後チョイチョイ出てくる予定。

そのうち文中で人物紹介します。


あとがき3

ビューティーサロンの店名が決まりません。

どなたかロマンチックかつ厨二心を震わせるシャレオツな店名をご提案いただけないものでしょうか?


あとがき4

ようやくヒロインになりそうなキャラが出せそうな感じです。

作者的にはシェイナちゃんも捨てがたいんですがね。

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