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大変遅くなりました。

ボチボチと再開していこうと思います。

久しぶりなので短いですがお付き合いください。

「うぁっ!」

「え?」


弾き飛ばされた人影から聞こえた声はやけに幼い声だった。


「子供じゃないか!?フー!護衛されてる俺が言うのもなんだが、相手くらい確認したらどうだ!」

「……」


最近は注意すれば拗ねやがって始末におえんよ。

とりあえず飛ばされた子供へ駆け寄る。

この町では親父殿以上の権力者なんていないとはいえ、怪我でもされてたら事だ。

相手は子供だし俺の名前で親に見舞金くらい出さないとまずいかもしれん。


「大丈夫か?怪我はないか?」

「う……あ……」


どうやら地面に落下した時の衝撃で息を詰まらせてるようだ。

ショックからか顔色も真っ青だ。


「フー!黙ってみてないで馬車へ運べ!いや、その前に息を回復してやれ!」

「……はい」


フーは渋々ながら子供に近づき、一旦抱えて地面に長座にさせると、後ろから抱きかかえるようにして両手で胸を強めにさするように何度も上下させた。

次第に息が整ってきたのか、顔色もよくなってきた。

落ち着いてその子供を見ると、白かった。

比喩的な意味ではなく、本当に真っ白だったのだ。

長さだけそろえたようなザンバラ髪も、地面に転がったせいで土の着いた肌も、まつ毛さえも真っ白で粗末な着衣がより一層白さを際立たせていた。

そして……涙を浮かべた目は血を透かしたような薄いピンク色だった。


アルビノ。


おそらく盲目なのだろう。

今の衝撃で折れてしまったようだが、その手には子供でも苦も無く持って歩けそうな細い杖を持っていた。


「目が見えてないのか?」


聴いてから、思わず舌打ちをしそうになった。

そんなもの聞かずとも明らかだからだ。


「……光、くらいは、感じられます……」

「杖が折れてしまったようだ。すまん」

「そのあたりで拾った枝ですから」


目が見えなければその枝を探すことも大変だろう。


「怪我もしてるようだ。一度、屋敷に一緒に来てくれないか?親御さんが心配するようなら住まいを教えてくれればこちらで連絡を入れておく」

「やめておいた方がいいですよ。親に集られるのがオチですし、別に心配なんかしてませんから」

「どこかへ向かっていたのか?」

「按摩の師匠の下へ伺うところでした」


おー?

OEDOの座頭的な感じか?

按摩のほかにも弦楽器を教えてたりして。


「フー。そちらにも人をやって話を通しておいてくれ。では屋敷へ向かうか」

「お屋敷とはどちらの?」

「ライト家だ」

「っ!?りょ、領主様……」

「それは父上だ。俺は息子のロックだ」

「ぬ、ヌイグルミ王子!?」


は?


「なんだそりゃ」

「巷ではライト家のロック様と言えばヌイグルミ王子として有名ですが……ご存じないんでしょうか?」

「……知らなかった」


そりゃ、確かに魔力を通すと鳴き声のするヌイグルミを作って売ってる。

最近は身近な動物ではマンネリ化してしまい、種類を増やすために冒険者ギルドへ綺麗な鳴き声の動物や魔物の声をスケッチとともに納品するよう依頼を出したりしてる。

この間納品された大森林にしか生息しない虹色の羽をもつ鳥の鳴き声は本当に美しかったおかげで、それを使って造ったヌイグルミも飛ぶように売れた。


「申し訳ありません!領主様のご子息とは知らず、大変な無礼を!」

「いや、無礼なんて言ってるのは俺の護衛だけで、俺はなんとも思ってない。それだけ喋れるならもう大丈夫だろう。屋敷へ向かおう」

「ご、ご勘弁を……」


なんかこの子、ずいぶんと敬語がしっかりしてるな。

怪我を理由に相手に集ると言う親の子とはとても思えない。

しかし、ご勘弁って。


「何を言ってるんだ?怪我をしてるんだからちゃんと治療しないと膿んだりしたら後々大変だぞ?」

「領主様の館だなんて恐れ多い……」


あ、そうか。

親父が伯爵で爺さんが王様だから感覚がマヒしてたが、普通の庶民的感覚であればそんなもんか。


「心配するな。父上が執務を行ってる本館へ行くわけじゃない。詫びもしなければならないし、俺の顔を立てると思ってきてくれないか?」

「……わかりました。ご一緒させていただきます」

「そういえば、まだ名前を聞いてなかったな。なんていうんだ?」

「アルブスと言います」


そういえばこの世界で姓を持ってるのは貴族と聖職者と一部の大商人くらいか。


「アルブスか。アルって呼んでいいか?」

「もちろんですロック様」

「あ~。似たような年頃だし様付けは勘弁してくれ」

「そうなんですか?では、ヌイグルミ王子と」


こいつ面白い。

突き飛ばされたばっかりなのにそんなこと言えるなんて度胸もある。

視力がほぼないからフーが睨んでるのに気が付かないってのも理由の一つなんだろうけど。


「それは勘弁してくれ。ロックと呼び捨てで良いから」

「わかりました。ロック」

「敬語もどうにかならんか?」

「これは、もともとこういうしゃべり方ですから」

「そうか」


そうこうしてる間に、親父殿の家臣の誰かが気を利かせてくれたんだろう。

サジックスをしまうために向かってた馬車がこちらへ向かってきていた。


「アクオン!すまんがおしゃべりはまた今度でいいか?」

『うむ。もう会えぬわけでもないし問題ない。せっかくだから帰りの船について戻ってくるかの』

「わかった。楽しみにしてる」


あ、アクオンの声にアルが震え上がってる。


「ロックは竜としゃべれるのですか?」

「ああ。アクオンとは俺がお披露目で王都へ向かってる道中で出会って以来の付き合いだ」

「そうですか。羨ましいですね」


羨ましがられる類の能力なのか?

竜と話ができる以外になんのメリットも無い能力だけどな。


「馬車も来た。乗るのが難しいなら手を引いてやろうか?」

「ありがとうございます。お礼に一つ良いことをお教えしますから耳をお貸しください」


お、内緒話か?

子どもって内緒話が好きだよな。


「なんだ?」

「“レ”と“ラ”の音が25セントほど低いです。ほかの音も微妙に違いますね」


何!?


アルブス → ラテン語で【白】

アルプスではないです。

フーは超過保護


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