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Sound of Magic ~カエルが鳴くから歌いましょっ!~  作者: ブルー・タン
第2章 3歳児お披露目珍道中編
10/124

10 爆誕!ヌイグルミ王子!(改稿版)

お気に入り件数が10件を超えました。

とても嬉しいです。o(^▽^)o

これからも頑張ります。


6/14 母親の口調を含め一部改稿しました。

6/29 一部、文章を追加しました。

9/23 表現や口調・矛盾点等について改稿いたしました。

昨日の夜はお袋に用意してもらった魔石で色々試してみた。

結果、まず一つ目の使い方として保存が一回しかできないICレコーダーにする方法。

音声の記録については魔石の質に左右されるようで、お袋が用意してくれた魔石の中で最も質が良い物で、およそ30分程度の記録が可能で、一番質の悪い魔石だと1分が限度だった。

あとは、俺が魔力を込める時のぬる~んの感触の長さでザックリとだが録音時間の長短くらいはわかることも判明した。

二つ目の使い方として、脳内タイトルを付けて整理した音声を魔石にコピーする方法。

こちらもコピーできる音声の長さは魔石の質によるが、音声をコピーする方が1.5倍ほど長い音声が記録できることがわかった。

それから、脳内記録をコピーしようとするときに、その音声が全部コピーできない場合は全くコピーできず、一回出ようとしたぬる~んが手の中に留まっているような最悪の感触だった。

昨日の夜に判明した魔石の使い方はこの2つ。

魔石を使うことによって常時起動してる録音と脳内保存してる大量の音声の使い道が大分広がったと思う。

まぁ、何かの役に立てるとかじゃなくて楽しく遊ぶ方法だけどさ。

ただし、全く違う方向から音をだしてびっくりさせる遊びについては、俺が以前やって屋敷の使用人に恐怖を振りまく大騒ぎになってるので却下。

なので、それ以外の遊び方を考えてみることにした。

夜のうちにお袋と相談した結果、音魔法で遊ぼう第1弾はお袋と役割分担してルーナのためのオモチャを作ってみることにした。

そのための準備として、俺はまず朝食が済んでから家の庭にいるピンクフロッグの音声をサンプリングしに行く。

ピンクフロッグの見た目はその名のとおりピンクの蛙。

蛙がピンク色だからピンクフロッグってのは、あまりにも安直すぎるネーミングセンスだが、解りにくいよりずっと良いと思うのであえて突っ込まない。

分類上はモンスターと言うことになってるらしいんだが、サイズが大人の親指ほどしかなく、持ってる魔石も極小サイズで家畜以下、毒すら持ってなくて全く無害なため、モンスターなのに殺す必要も価値も無い。

だいたい腕白な男の子が紐に結んで振り回したり、ちょっと家で桶に入れて飼ってみたりする程度の存在だ。

そのため、気候が温暖な地域で、近くに水がある場所を探せばすぐに見つかるくらいどこにでもいる。

エントシーでは雪解け以降の雨日だと探す必要が無いくらいその辺をピョンピョンと跳んでる。

鳴き声は意外に大きく、かわいい感じで「キョロロロロロ~」と鳴くのが特徴だ。

俺がピンクフロッグの鳴き声を記録するため、に庭を探している間、お袋が何をやってるかと言うと、ピンクの布地を使って小っちゃい子が抱きしめられるくらいのサイズのヌイグルミを作るよう頼んでおいた。

因みに、お袋はこの世界の上流階級の女性の例にもれず、刺繍やレース編みが趣味でとても上手い。

だが、ヌイグルミ作成をお願いする段階でちょっと問題が発生した。

この世界、どうやら女の子が遊ぶためのオモチャとして、人を象った布の人形はあるのに動物を象ったものが無かったのだ。

おかげで蛙を探しに行く前に、お袋に理解してもらえるよう説明するのに意外と手間取った。

どうにかヌイグルミがどんなものかと言うものを理解してもらい、見た目が蛙っぽく、かつ手触りが良いように、光沢のある絹のような布地で作ってもらうことになった。

刺繍した布を使ってクッションを作ったりもするらしいし、よっぽど俺とお袋の認識に齟齬が生じてなければ問題ないだろう。


 ・

 ・

 ・


で、今はフーをお供にピンクフロッグ捜索隊として庭を探検中だ。


「庭に出るとよく蛙の声が聴こえてくるのに、いざ探すとなると意外と見つからないもんだな」

「本当にピンクフロッグを探すのですか?わざわざあんな気持ちの悪い生き物を見たいだなんて……」


どうやらフーはピンクフロッグが苦手なようだ。

前の世界でも大半の女性は両生類が苦手だったし、世界が変わっても両生類に対する女性の感覚は似たようなものらしい。

意外なところで前の世界との共通点を見つけてしまった。


「どうしても直接見てみたいんだ。早く探せば早く屋敷に戻れるんだから、もうちょっとやる気を出してよ」

「……右手の木をよけた藪の奥から声が聞こえます……」


なんだ、場所はわかってたのか。

よっぽど近寄りたくないみたいだし、フーにはちょっと悪いことしたかな。


「なんで蛙が嫌いなの?」

「子供のころホーが私をからかうために蛙をたくさん桶に入れて、私に向かってぶちまけたんです。……それ以来、私は蛙だけはどうしても苦手なのです」


……なんでそんなのアレな男と結婚したんだ?

大人になって良いところも出てきたってことなのか?

そんな大人の事情について考察をしていたら、フーが俺の肩を掴んで止めて耳元でささやいてきた。


「そこにの藪のすぐ向こうに居ます。声を立てると逃げますよ」


言われて耳を澄ますと確かに蛙の声が聞こえてくる。


“キュロロロロロ~   キュロロロロロ~   キュロロロロロ~”


だが、目の前の俺より遥かに背丈のある藪に邪魔されて姿も見えないし音もちょっと遠くかんじる。


「出来るだけ近くで見たいんだけど、もうちょっと近づけないかな?」

「そこの草を揺らさないように右に迂回すれば姿が見えると思います」


フーに言われた通りのルートを忍び足でゆっくり移動すると、確かに藪の横から蛙の姿が見え始めた。

俺は近づきすぎないように細心の注意を払いながらうまく場所を確保し、早速、音声のサンプリングを開始。

と、言っても今もずーっと録音してるから、戻ってから一番よく聞こえてる部分を抜き出すだけだけどね。

フーにピンクフロッグを直接見たいと言って連れ出した手前、一応は実物を観察してみる。

フーのおかげでかなり近づけたので、ピンクの背中に白い線が3本走ってるのが良く見える。

黒い目がくるっとしてて結構可愛い。

前の世界のアマガエルをピンク色にして少し大きくしたような感じだな。

あ、鳴き声に誘われて別の蛙が近寄って行った。

……残念ながら交尾を開始したところでフーが俺を持ち上げて、小脇に抱えて移動し始めた。


「もう十分でしょう。お屋敷に戻りますよ」

「はーい」


フーがすっごいマズイものを食べたような顔をしてる。

おそらく俺が魔石に魔法を移してる時もあんな表情なのに違いない。

さすがにフーも3歳児の教育上と本人の精神衛生上、このまま見物しているのは非常によろしくないと判断し、俺を小脇に抱えて撤収すると言う英断を下したに違いない。

残念ながらピンクフロッグ捜索隊は一定以上の成果は上げたもののこれにて終了。

フーに抱えられたまま屋敷に連れ戻されてしまったので、残りの時間は百科事典の音読をして過ごすことにした。

折角なのでピンクフロッグの項目を読んでもらおうと思ったが拒否られてしまった。


 ・

 ・

 ・


夜、さっそくお袋の部屋に行くと、日中に作っておいたであろうヌイグルミを見せてくれた。

ピンク色をした丸い楕円形のクッションにひょろーんと俺の指くらいの太さの紐が手足として生えてる。

目は黒い糸で刺繍したんだろうか、あのくりっとした目ではなく、チョット人間に近い感じの形状をしてる。

背中の三本の線は白い糸で再現されててそこは悪くない。

……ギリッギリでピンクフロッグと呼べなくもないが、形状としては雨の日に道路で車に潰されたような形状をしつつ目がチョットホラーだ。

ギリギリ可愛いと言えなくもないが、どっちかと言えばキモ可愛いと言う表現をしたくなる。

この世界における最初のヌイグルミだし多くを望むまい。

作った本人もやはり出来に多少の不満があるようだがどこが悪かったのかわかってないようだ。

ただ、ヌイグルミ作り自体は思いのほか楽しかったようでまた作るつもりでいる。

次回作もホラー的要素を含められてはチョット精神が不安定になりそうな気がしたので、今度は紙に簡単な絵をかいてでもデザインは俺がすべきだろう。

お袋も俺の前で色々と試行錯誤案を話してくれるんだが、ちょっと見当違いなことを呟いてる。


「……では母上、魔石を貸してください」

「ピンクフロッグの鳴き声だけなら時間も短いし、家畜から取れた魔石でよかったのよね~?本来ならそのまま捨てるような役に立たない魔石なんだけど~」

「はい、その質の魔石で全く問題ありません。では音を移しますね」


脳内保存したピンクフロッグの声を魔石に移す作業を開始する。

どうにもチキン肌がスタンドアップするのを止められない“ぬる~ん”とした気持ち悪い感触を残して音声は魔石へと移った。

ピンクフロッグの声を再生する魔石が何の問題も無く完成する。


「では、これをヌイグルミの中に縫い込んでください」

「ちょいちょいちょい~のちょい~。はいできたわ~」


流石、普段から刺繍とかして過ごしてるだけあって作業が早い。


「では、その状態で魔石に魔力を向けてみてください」

「いくわよ~」


『キュロロロロロ~   キュロロロロロ~   キュロロロロロ~』


……成功だっ!

「これはなかなかいいわね~。声も可愛らしいし女の子が好きそうだわ~」

「早速、ルーナに見せてあげましょう!」


この世界で初めての作られたヌイグルミは、魔力を通すと鳴き声を発すると言う機能を備え、今まさに産声を上げたのだ!

後の話だが、魔力を通すと鳴き声を上げるヌイグルミは世界的に大ブレイク。

その勢いはこの国だけに留まらず、船に乗って別の大陸まで進出することとなる。

それによってライト家の収入はさらに増え、その売り上げの半分はロックの貯金として蓄えられることとなった。

ロックが巷で【ヌイグルミ王子】と呼ばれ始めるのは、ヌイグルミ誕生から何年か後の話。


次の話は明日の10時に更新します。

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