学園内の出来事
正也ら4人は魔操兵器や魔甲衣を解除し、あかねのIDのお蔭で無事に学園の入園チェックを済ませ、一路生徒会室へ向かおうとしたのだが・・・。
「あかねちゃーん、大丈夫だった~?」
突然の声に背後を見ると、あかねと同じようなラフな服装(ジーンズにTシャツ)に身を包んだ赤眼赤毛の小柄な生徒だった。
その生徒を見たあかねは微笑ながら、自分の魔甲衣のMBIであるブレスレットを渡しながら
「私は大丈夫だ。魔甲衣も起動はさせたが実際には使ってない、・・が、一応のメンテナンスは頼む。」
「うん、分かったよ。・・で、そっちの子達は?見たこと無いけど?」
「ああ、彼らは地上で拾って来た優秀な生徒の卵だ。順調に行けばそこの黒髪の可愛い彼女が私と同じ戦闘専門で、男の子と銀髪の女の子がお前と同じ開発者志望だ。名前は戦闘の子が佐藤優月、男の子が天野正也、銀髪の子がアイリス・ミルバだ。とは言っても、まだ入学すらしてない者だから、分からないことだらけの筈だから、優しくな?」
「そこんとこは任せなさい!・・って言うか、教えるのは先生でしょ!?私の魔甲研に入るって言うなら優しく教えるけど、入らないって言う心配はないの?あかねちゃん。」
「・・恐らくは入らんな・・」
「あかねちゃーん?!」
二人の漫才を見ていた正也らは話を戻すべくあかねに話しかける。
「あのー、未だ僕らはそちらの方の紹介をして貰ってないんですが?・・それは無視ですか?」
「ああ、これはウッカリだ。まあ、説明なしでも問題は無いがな?「ちょっ!あかねちゃん?!」冗談だ。「・・・」彼女は先ほども言ったように、魔甲衣の開発を専門にしている開発科の生徒だ。名は片桐美晴。彼女自身で言った事だが、彼女は自らの趣味を全開にした魔甲研・・・まあ、その名の通り魔甲研究部というオカルト研究室と似たような部活の副部長だ。・・・部長は居ないがな?」
部長が居ないの言葉に不思議に思う正也らは当然の疑問を口にした。・・が、返って来たのはアホらしい理由。
「部長になったら自分の研究時間が減ると言ったアホらしい理由だ。まあ、魔甲衣一つ作るのに莫大な予算と素材(特殊な金属と非金属、魔素を伝達する魔道金属など)が必要になるからな。それを部長に名前だけでも先生方の名前を借りれば、出来上がった新作の発表権は先生に移るが、予算や素材は先生の名で学園側が支給してくれるシステムだ。このシステムを利用している開発関係の部活は意外と多い、・・成果がある部活は少ないがな?」
「成果がない部活でもずっと続けられるんですか?」
当然の正也の疑問に首を横に振るあかね
「当然の事ながら期限は有る。一年間何も成果が無い場合は先生が部長を降りる。そして、当然予算や素材の支給も無くなるから廃部、だな。私の知る限りでも去年発足した開発関連の部活が、今年になって早速廃部になった物が3つある。寧ろ続けられている美晴の魔甲研の方が珍しい方だ。」
あかねの説明に少し考えてから、通信魔法にて優月と会話をする正也
「(ねえ、優月。もし、予算や素材の問題が優月の家の援助でどうにかなるとしたら、良い隠れ蓑に成ると思わない?)」
「(奇遇ですね。今私もそれを考えて居た所です。素材や予算がどの程度なのか分かりませんが、研究成果を小出しにすれば、先生も文句は言わないでしょう。私の家の環境がどのような物か解かりませんが、利用できる研究所は一つでも多い方が良いでしょう。)」
「(なら、少し聞いてみようか。)」
「(ですね。)」
通信を切って考えを纏めた正也は、素材の入手方を聞くことにした。
「ねえ、あかねさん?」
「なんだ?」
「その魔甲衣?の素材はどんな物なの?それと入手経路も合わせてお願い。」
「・・・まさか、自分らで調達する気か?」
正也の言葉で考えを読むあかねだが、簡単に口を割る正也ではない。
「まさか、どんな危険があるか分からない物に手を出す事はしませんよ。ただ・・・」
「ただ?」
「簡単な素材の調達経路を教えて貰えれば、僕の知識との相違点を修正して、新たな戦闘衣を作り出す事も可能・・・という事です。・・具体的なことは分からないので、ハッキリは言えませんがね?」
「・・・実際に見ている君の作品の技術力なら可能な気もするな・・。分かった、っというか、その事も含めて優月君の両親に相談したらいいじゃないか。勿論生徒会や学園長には言ってみるが、ハッキリ言ってここで力のある魔甲衣の専門の家は優月君の佐藤家だぞ?」
「佐藤家!?なんでもっと早くそれを言わないの!あかねちゃん!!」
「あ、しまった・・・」
思わぬ口の失態に気まずくなるあかねは、顔を逸らせて言わなかったことにして、生徒会室に行こうとする。
「・・そう言う事で、詳しくは生徒会室で話し合おう。」
「あかねちゃん!?」
「美晴はメンテナンスよろしくな?・・では行こうか?」
「・・良いんですか?」と正也
「ああ、構わんさ。」
「良くないよ?!」と美晴
「美晴も、しつこい女は嫌われるぞ?」
「・う・・分かったよ・・。実習の時に詳しく聞くからね?」
「ああ、分かったよ。・・応えられる範囲ならな?」
という事で、再び来た道をあかねのMBIを持って引き返す美晴と生徒会室に向かう4人に分かれることになった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~魔甲学園生徒会室~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「・・で?これが問題の映像ね・・・。確かにこの弾丸から放たれる魔力濃度はこの地下の物と比べても比較にならん位の濃度ね。・・しかも、この生徒は高等部の生徒でも無い様じゃないの?」
そう発したのは一人の女性。
今生徒会室では5人の人物による緊急会議が開かれていた。
会議の議題は7体のクリーチャーを一発で葬った弾丸の詳細。
その映像を偶然学園の監視モニターが捉えており、詳細を当人に聞く前に大体の憶測をしておこうと言う物。
会議に出ている5人の内2人は学園の教師。二人は生徒会の会長と副会長。一人は偶然近くにクリーチャー討伐に赴いていた世界に名を轟かす傭兵団【暁の旅団】の副長。
学園の教師の一人は、実技の講師であると共にこの関東を支配する佐藤家の主、佐藤源内の親友にして、炎を使った戦闘に於いて並ぶ者なしとまで言われている炎の属性の名家、水島カイジ。
もう一人は学園長である田島崇斗。
一見見る者が見なければ、このメンバーに学生が含まれているのを怪訝に思うのだが、この生徒会長と副会長の女性二人が曲者。それぞれが外国からの留学生でしかも高等部からの新入生。しかも、各国の代表に既に選ばれている者なのだ。
代表とは、世界の魔甲学園の優秀生徒を決める大会の国家の代表生の事。
その代表に選ばれるのは、即ち向こうに居る中学生の時には既にその力が有ったと言う証。
現に去年の世界大会は日本人に於いて屈辱的な他国の生徒による代表選手の選出となった。
しかし、その結果が実力主義の学園の生徒会長である世界チャンプのフランス人、キリア・ローレン。
金髪碧眼の長身である彼女は髪も腰くらい間で伸ばした長髪なのだが、戦闘時はおろか、訓練時でも邪魔になっていないようだ。
副会長は日本の大会に於いてキリアに破れていた物の、当時の三年生を一年の生徒が完膚なきまでに魔甲衣を破壊しての勝利というオマケつきの準優勝者、ドイツ人のメリー・マイヤ。
こちらは銀髪の隻眼で右目が魔石を使用した義眼。左目が赤眼の義眼が黒いオッドアイだ。しかし、その義眼のお蔭で、大気中の魔素の流れを感知でき、生身でも魔甲衣を使用した実践でも魔法の有効運用が出来る実力者。
しかもこの二人、共に自らの魔甲衣のメンテナンスは自分でやると言う優秀者ぶり。その為誰一人の反対も無く、会長と副会長に就任したのだ。
その内の一人、生徒会長のキリアが映像から推測を述べる。
「この魔弾の性質は見たことが有りますね。確か、風と雷の融合魔法の嵐の属性と同じな筈です。・・あの魔法に耐えられる魔弾用の素材が有ったのは知りませんでしたが・・・?」
「それはワシも同じじゃ。というよりもな?魔弾の素材となるニクロム合金は殆ど中華連邦の山奥の龍種か、南アルプスの方の山奥に生息する幻獣種を討伐せにゃ成らんのだぞ?しかも上手い事素材を剥いだ状態でじゃ。その様な危険な真似を幾ら傭兵とはいえ、させることなど無理じゃろ?言えばやってくれるか?【暁の旅団】の副長、リーナ・アンデルセン嬢?」
「無理ね。その様な無謀な依頼は団員に受けさせる心算は無いわ。寧ろこっちが素材の収集を頼みたい位よ。」
キリアの質問に学園長が応え、その依頼に傭兵団の副長が拒否をする。
そして、次に言ったカイジの一言が更なる動揺を生んだ。
「それにしても、この魔弾を放った子の近くの生徒は俺の娘で間違いないが、この本人も何処かで見た事ある顔なんだよな~?魔素の影響で少し画像が荒いから、ハッキリとは言えんが。」
「なに?!それは本当か?水島君。何処じゃ?何処で見たのじゃ?」
水島と呼んだ男性の肩をガクガクと揺らしながら、問い詰める学園長、田島。
その様子を面白そうに見つめるメリー。その口から思わぬ発言が飛び出した。
「彼女、水島あかねさんは私の知る中でも優秀な生徒ですから、キチンと当人を連れてきてくれるでしょう。何故かは知りませんが、最初は彼女がクリーチャーの相手をしようとしたようですからね。」
「ほ~、俺の娘は君の覚えが良いようだが、親の言う事ではないが・・・そんなに優秀か?」
「ええ・・・お家の方には帰ってないのですか?一応注意はしてますわよ?」
「・・・内の娘は、他人の指示を素直に聞くほど可愛げがあったのかね?」
「・・・ないですわね・・」
「・・・・」
一瞬の沈黙のあと、監視カメラに映った人影に生徒会長が会議の中断と当人たちの出迎えを提案した。
「では、当人たちが来たようですので、詳しいお話は当人に聞いてみましょう。」
「そうじゃな。・・では、皆も、向こうの言葉をしっかり聞いて於くのじゃ。良いな?」
「「「ええ。(ああ。)」」
こうして、それぞれに思惑の混じった話し合いの様相になるのだった。
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4人が生徒会室に着いた時、丁度生徒会室のドアが開き、あかね以外の三人は少々戸惑った。
監視カメラが回っているなど思わないのだから、当然ではあるのだが。
「さあ、どうやら我々は待って貰っているようだから、さっさと入ろうか。」
「そうですね。優月とアイリスも、そんなに警戒しなくても大丈夫だと思うよ?ねえ、あかねさん。」
「ああ、中の魔力反応を見る限り、中の一人は親父だ。よもや親父に攻撃される事もあるまい。」
「そうなんですか?」
「ああ、恥ずかしい事にな?」
あかねの発言に流石の正也も驚いた。
中の魔力の質で、知り合いらしい事は感じる事は出来たが、まさか親だとは思わなかった。
そして、皆の驚きが収まるころ・・
「では、入ろうか。」
そう言うと
「2年戦闘科所属水島あかね、出頭要請に応じ出頭しました」
と言ってから「よし、入れ!」の声を聴き
「失礼します!」
というあかねを先頭に生徒会室に入って行った。
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「失礼します。」
「失礼なのは何時もの事です。話が聞きたいので呼んだのですから、早くこちらに来なさい。・・・そちらの方も、学園生ではない様ですが、あかねさんの知り合いなら歓迎しますわよ?早く入りなさいな。」
何故かあかねに対しては厳しく、他には甘くなる口調の女性に困惑しながらも、正也らは4人とも中に入って行った。
そして、あかねの知る限りで中のお偉い人代表の学園長が、自己紹介を始める。
「先ずは自己紹介かの?ワシはこの学園の学園長をしておる、田島崇斗と言う。あかね君は去年の大会といい度々顔を合わせておるから、説明は入らんかの?」
そう言って来たのだが、他の面々は少々呆れていた。その呆れた代表格の生徒会長が説明を進める。
「良い訳ないでしょう、学園長。水島さん以外初対面での顔合わせ、幾ら存在が薄いとは言ってもこの学園の主がその態度では困ります。・・・と、いう事なので、これが学園長です。大きな大会とかのスピーチや素材関係の調達には重宝しますよ?・・以上ですね。」
そこまで言った生徒会長は序にという事で自己紹介を始めた。
「序に、私が生徒会長のキリア・ローレンです。そこの水島さんも知ってるとおり現在の世界の学生内での世界チャンピオンです。・・フランス人ではありますがね?詳しくはこれから嫌というほど耳にするでしょうから要らないでしょう、続いて先ほどの女性の紹介ですね。あかねさんの友人でもあるドイツ人のメリー・マイヤさん。」
イキナリ紹介されたメリーが、慌てて三人相手に会釈で挨拶する。
更に紹介を続けようとする生徒会長だが、あかねが止める。
「あ、待ってください。彼らには少し用事が有るので、手短にお願いします。場合によっては私の方から説明しておきますので。」
「・・・おい、水島君。君の娘は年上の説明好きを笑って受け流す事も出来んほど偉いのかの?」
それはイキナリだった。笑っていたはずの学園長の魔力が溢れ出し、辺りをかき乱し始めた。その様子を微笑みながら見つめるキリア、メリー、カイジ、後の一人も余裕で微笑んでいる。
そして、その威圧のような殺気に腰を抜かしたのがアイリスだ。
「あうううう・・」 ドテッ・・
そして、これ以上は無意味だと思った学園長が魔力の発生を止めようとした時、正也が一瞬のみ学園長の数倍に渡る魔力を立ち昇らせた。
「ひっ!」
「「「くっ!」」」
「なぬ!?」
と言う呟きを出した大人のメンバーは、その発生源を突き止めようと視線を移したが・・・、もう収めた後だった。
「・・ほう~、どうやら若いのに優秀な生徒がいるようね。一瞬だったけど、今の放出量は我が団の団長に匹敵するわ。」
そういってから、まだ自己紹介をしてないと思いリーナが自己紹介を始めた。
「私はそちらのあかねさん?も知らない筈だから紹介させて貰うわね?傭兵団【暁の旅団】の副長を務めるリーナ・アンデルセンよ?よろしくね?」
そう言って4人にウインクしてきた。
女性としては背が高い175ほどのキリアよりも更に一回り高い180。その高身長の割にバランスの良いボディーライン。ハッキリ言ってモデルではないかと疑うレベルだ。
青髪の黒目。傭兵団と名乗ったにも拘らず、色白の肌が特徴的な女性だ。
「私は世界を飛び周ってる関係上、色々と話せることが有るから、今聞いて於くのがお得よ?しばらくは日本に居るけど、何時までかは未定だから、聞けるときに聞きなさい。いい?」
そのリーナの発言で正也が食指を伸ばす。
「あのー、二、三質問良いですか?」
「君は?自己紹介からどうぞ?」
「ああ、少し理由が有って詳しくは言えませんが天野正也です。ここにいる佐藤優月さんに護衛して貰って少々各地を放浪してます。「佐藤優月だと?!」・・・え・・っと、もしかして知り合い?優月。」
イキナリの発言に戸惑う正也と誰だったか思い出そうとする優月。
しかし、この世界を離れて三年の筈なのに何故か思い出せない。
「いえ・・頭の端にひっかかっては居るのですが、思い出せませんね・・。すみませんが誰でしょう?」
思い出せないのは仕方ないので、諦めて聞くことにした様だ。
そして、先ほどの声の主が自己紹介を始めた。
「・・仕方ないか、私は君の父親である佐藤源内の友人、水島カイジだ。そこのあかねの父親だ。あかねから少しは君の両親の事情を聞いてるだろう?・・・だが・・」
「だが?」
「私も、先ほどから何故か君の名を聞くまで君の顔を思い出せなかった。今も記憶がぼやけている、こんな事は初めてだ。それで・・あかねが共に連れてきたという事は、全ての条件が当てはまったのだな?」
「ああ、遊んだ場所までバッチリだった。疑う余地は無い。」
「よし、ならこの話が済み次第ゲートを使って家に帰りなさい。学園の入学手続きは源内にさせればいいだろう。・・・で、話は戻るが。君はどういった経緯で優月ちゃんと?場合に由れば佐藤家と戦争に成るぞ?」
と言って正也を脅すカイジだが・・、正也は笑って言った。
「ああ、それなら心配ないです。少しクリーチャーの魔素を吸収すればこの世界の者に負けるとは思えませんから、優月は僕の味方ですし。場合に由れば一年後くらいには僕らこの世界を支配できますよ?僕の魔力が正常に戻りさえすれば・・・ね?」
この発言で室内の全員に動揺が走った。しかし、先ほどの映像と魔力の放出がこの少年の物なら、可能かもしれないという事も同時に悟る面々。
「まあ、詳しくは源内が聞いてくれるだろうから、私からは聞かんよ。・・で?何が聞きたいのだ?」
改めて話を戻すカイジ。そして、正也の発言でまたしても皆に動揺が走る。
「では、この世界に魔素を溜め込む魔素吸収回路が有るのかが一点。皆さんが魔甲衣と呼ぶ戦闘衣の素材の調達法が一点。クリーチャーからの素材調達法が一点です。この三つを教えてください。・・・どうでしょう?」
この発言に戸惑う教師関係者二人と傭兵団の一人。
それもそのはず、今言った条件は皆自らが一から魔甲衣を創ろうとしている証拠。
この見た目中学生の子供がやろうとすることではない。
その疑問を解消すべく、キリアが聞く。彼女も自らの魔甲衣を自らでメンテナンスから設計開発までしている開発者の卵だ。
「少し尋ねますよ?天野君。」
「はい、なんでしょう?」
「君が知っている魔甲衣の特徴を簡潔に述べよ。」
「魔甲衣と言うのが僕の知っている物とほぼ同じなら、簡単です。魔甲衣とは、魔素を吸収しやすい、或いは先ほど言った魔素吸収回路が埋め込まれた魔道具に科学技術の電子回路を掛け合わせ、コンピューター制御をして魔法陣なしで魔法を使う事の出来る戦闘衣です。」
「よろしい。パーフェクトです。」
「ありがとうございます。」
「しかし、今君が言った事で、君の聞いてきた物の調達に必要なのに既に失われた技術が有るのを知ってますか?」
「なにがでしょう?」
「まさに、魔素吸収回路です。今では佐藤さんのお母さんが研究によりクリーチャーの素材から材料を調達出来てますが、これは既存の技術を応用した物に過ぎないのです。」
「というと?」
「佐藤さんのお母さんの発表では過去の文献を調べた結果、魔素からの魔力放出を利用した魔法放出技術を開発したと有りました。そして、その文献には確かに魔素自体を吸収できる回路が存在していたとも。・・なので、その吸収回路を自分で作ろうとすること、それはクリーチャーの素材に頼らず魔甲衣を作る事と同義です。そしてそれは今まで誰も出来てない事。それを貴方は出来ると言うのですか?もし出来るなら世界からの称賛をその身に受けられるでしょうね。」
質問していながら全然信じていない話し方だった。
しかし、正也は既にある程度の回路の仕組みの構想は出来ている。後はその実践に耐えられる素材だけだ。
「お話は分かりました。では、クリーチャーからの素材の調達法をお願いします。」
「それは口で言うのは簡単ですが、難しいですよ?生きたクリーチャーを殺さず、そのままの状態で体の皮を剥ぐだけなのですから。しかし、言うは易し・・・です。取りあえずこれ位でしょうか?」
「成るほど、知りたいことはある程度分かりました。では、面白くなりそうなので、優月の件が丸く収まれば入学させて貰います。・・ああ、先ほどのクリーチャーの件は簡単ですよ?僕の特殊支援魔法による
属性弾を使用しただけです。特別な弾丸でも無ければ、技術でも有りません。魔力を圧縮した弾丸なだけですから。・・では、ゲートをお願いできますか?」
「ええ、此方も聞きたいことは聞けました。少々君の規格外が分かってしまっただけです。」
「それは良かった。」
「「・・・」」(良くないだろ!)と突っ込みたい他の面々。
「じゃあ、水島君が案内をしてくれるか?あかね君だけでは危ないかもしれんからの?」
「そうですね・・・」
そういって、哀れな子羊を見るように正也を見る二人。
しかし、そんな視線を気にするでもない正也は
「さあ、さっさと用件を済ませて魔素吸収回路の研究に入りましょうか!」
「え?もしかして、ですが、正也さん?もう回路の構想は出来たんですか?」
余りの驚きに通信魔法も使い忘れた優月が素で行ってしまった。
その事に苦笑しながらも、正也は平然と・・・
「構想は数度の魔素吸収で固めてますよ。あの感じからすれば、魔素吸収回路はあっち(・・)の魔法陣を刻んだ物が効率面では最適です。恐らく文献から再現できなかったのは、文献の文字が分からなかったから解釈が出来なかったんでしょう。・・キリアさん・・でしたっけ?」
「なんですか?」
「その文献のコピーか何かは有りますか?」
「いえ、残念ながら持ちだし禁止の文献ですので・・」
「それは残念。・・では、行きましょうか?」
「はい。」
「・・分かった、色々言いたいこともあるがまた今度にしよう。・・こっちだ。」
そう促され、隣部屋に案内されてきた3人。アイリスは入学手続きは済ませているが、寮の空きが無いという事で、例外ではあるが、個人邸宅の案内を受けていた。
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そして、現在転移用ゲートの部屋。
ここから、世界中の登録してあるゲートに転移する事が出来、素材調達もし易く成るのだとか。
しかし、今は佐藤家の家に行くことのみ。
その為、準備も早かった。
「よし、これでOKだ。では、魔法陣に乗ってくれ。これが起動キーだ。まだ君らは実力が明かされてない以上、これを貰う権利は無い。・・・って正也君?何をしているんだ?」
ふとカイジが正也が魔法陣内に居ないのに気づくと、正也は壁に何かしらの模様を刻んでいた。
「いえ、何でもありません。では、お願いします。」
「うむ。では、・・起動!」
そういって、カイジが起動キーをゲートの魔法陣に差し込むと、途端に魔法陣が光だし、一瞬にしてその場から全員が消えた。
あとに残ったのは、正也が壁に残した模様のみであった。