召喚士、地球での初戦闘
ゲートを潜って着いた先は誰も居ない海岸の白い教会だった。
誰も居ないとはいえ、人でない何者かの気配は存在するので、正也は早速優月を召喚する事にした。
「さてっと、先ずはこの世界があちらとどれだけ魔素の濃度が違うかだなよね。場合に由れば、魔素の集積回路を開発しなくちゃいけないし。・・まあ、先ずはカードだね。」
そう言ってから、正也は自分の心臓部に手を当て目を瞑ると。
「カードオープン!」
そして、目の前に表示されるカードを見て、絶句する。
「何でこんなに固定最大魔力量が少ないの!?これじゃー、優月を呼び出して於くのが精一杯じゃないか。自然回復量もファンシールの一割に満たない程度なんて・・。・・・取りあえず呼ぼうか、召喚『佐藤優月』。」
正也は目の前に表示された液晶画面を指でタッチしながら目的の召喚対象を呼んだ。
すると、目の前に色々な情報が流れてきて漸く止まった先に有ったのは一人の黒髪の美少女の裸の映像だった。前髪は目の辺りで整えられ、後ろ髪は背中までストレートに伸ばしており、古臭いいい方だが、大和撫子と言ういい方がしっくりくる美少女だ。体型はスレンダーに近いが・・・。その横に服装が数種類保存されており、前もって聞いていた通りに制服を選択する。・・そして、OKの文字をタッチ。・・・・すると・・・。
目の前が急に輝きだし光の粒子が集まって、収まった後には先ほどの黒髪の美少女が清楚な佇まいで手を腹の辺りに添えて楚々として待機していた。その彼女に正也は語りかける。
「優月さん、おはようございます。一応前もって聞いていた所には出られたようだけど、ここで合ってるか確認してくれる?」
正也が語りかけると、優月と呼ばれた美少女は微笑を浮かべながら頷くと
「おはようございます、マスタ「ああ、一応僕が君の主ではあるんだけど、ここがどういう基準の世界に成ってるかはあまり分からないから、今の所は他人の耳を気にしてさん付けでいこう。」解かりました、正也さん。・・・では、少し見てきますね?」
優月がそういって右手に填めたグローブに唇をチュッと付けると、目の前に一本の日本刀が現れた。そして、その刀を右手で掴むと・・・
「『モードヴァルキリア』『属性:毒』」
そう呟き、一瞬にして目の前に一見すると白銀の所々に紫の模様が浮かび上がった機械的な戦闘衣に身を包んだ優月が立っていた。頭には羽飾りの付いた兜、背中には六枚の機械的な翼。正也の居た時代の戦乙女そのまんまの衣装だ。(正也の好みでデザインされた物だから、当然と言えば当然だが)
「お願いね。・・・あ、聞き忘れてた。」
「なんでしょう?」
そう聞かれて正也は先程のカードに示された数値について聞く。すると、優月は苦笑しながら理由を語った。
「それは、正也さんや私の召喚されていた世界が魔素に満ちていて、唯その場にいるだけで吸収が出来ていたからですよ。正也さんの居た頃は存じ上げませんが、私のいた頃からここの空気は少量の魔素と大量の空気で構成されていたので、私のはこれが普通です。・・あ、安心してください。この世界は過去の地盤変動で地下に大空洞と呼ばれる洞窟が出来て、そこに自然発生する魔物、ここでは【クリーチャー】と呼ばれていますが、その魔物を倒すことによって飛び散る魔素は私が判断する限りファンシールと同じ物です。なので、魔力に不安があるなら、そこでクリーチャーを討伐していれば自然と魔力も大きくなりますよ。ある程度大きくなって来れば、護衛の召喚対象を他にもこちらに呼べるのですから、気にしないでください。」
優月はそう言ってから教会の外に出た。
そこは召喚される前と変わりない砂浜だった。目の前には毒の海が広がり、毒に耐性のある特殊なスーツに身を包んでいなければ人に渡ることを許さない境界線。そのスーツと、特殊技術で開発されたサイエンスシップやレビテートシップ、特殊フィールドに配置された転移用ゲートを使用できる鍵を持つ一部の金持ちと傭兵集団、そして全世界に展開されている魔法学校の卒業生の【資格者】だけが、この世界の端から端を見て回る権利を得る。
優月はその学校に入る前の中学1年の冬休みに突然この砂浜で魔法陣によって召喚された。しかも着いた先のファンシールでは、既に正也によって魔王が服従されており、召喚したのはその事を聞かされてない王族の早とちりの結果だったらしい。
その事で、正也たちに聞いてみれば、『そんな事言われても、装備代を一式分渡されただけで放り出された後に、指名手配されたら誰でも報告の義務なんて果たそうと思わないでしょ?』という物。
確かにその状況であれば優月自身もそういう態度を取るだろうと思い、深くは聞かなかった。
それに、自分には自身の世界で家庭環境による鍛練で培ってきた魔法の才能と、身体能力。そして、膨大な魔力量がある。魔法の才能に関しては基本4属性は勿論、雷、闇の魔法を使えるという稀な才能だ。この世界の大半の者は基本属性4つしか使えない。しかも、それぞれ得意分野も存在する。努力して使えるようになるのは身体強化関連の無属性のみ。他は天性の才能による。魔力量に至っては人の数千倍。大人の傭兵として世界各国を飛び回るようなベテランの人たちの物と比較しても数倍にのぼる。あちらに行って、召喚された特典でも新たに光の属性と毒が加わった。更に、正也と出会った事による恩恵がある。条件的にはかなりの恥ずかしさが有ったが、得られる能力は凄すぎるの一言。しかも、あれ以上の行為をすれば一時的にせよ更なる能力の向上が有るらしい。・・・流石に今以上の経験は恥ずかしいので遠慮して貰っているが・・。
そして、こんな事を思い出している時に毒の海からクリーチャーが出てきたので、教会に入っている正也を呼ぶことにした。
「正也さーん。魔物が出てきたので、護衛はしますから出て来て下さーい。正也さんも魔素の吸収を行っておきたいでしょうー?」
優月が叫ぶと、いかにも億劫そうに正也が出てきた。 しかも、その顔には毒の海による倦怠感が現れていた。その様子に苦笑しながら、優月は対処法を教える。
「正也さん、毒ガスマスクを付けていればフィルターによって毒が無効化されますよ?確かご自分の特殊マスクを持ってましたよね?付ければ違いますよ?」
「ああ、忘れてたよ。ありがと。」
優月に言われて思い出した正也は懐からお手製のマスクを取り出し、掛けた。するとさっきまでの倦怠感が嘘のように晴れ、辺りを普通に見渡せるようになった。
「・・・ふぅ~、助かった~。それにしても凄いトコだね。魔物も大きいし、って来たよ?僕も少しなら戦えるから、加勢しようか?」
「ふふ、良いですよ。その辺で見ててください、直ぐに終わりますから。貴方に与えられている恩恵を考えれば、これ位のクリーチャーは私が倒しますよ。」
「そう?なら、お言葉に甘えようかな。ハッキリいって僕は単体じゃあ、それ程強くないからね、特に今の状況だと。」
「ええ、その為の私のような召喚生命体の存在なのですから、存分に活用して下さい。」
この優月の発言に正也は少しニヤッと笑うと。
「それはあっちの方でも活用して良いって事?もうそのかく・・あ、来たよ?!」
「ガアアア!」
正也が言う通り、海から如何にもな感じの魔物が唸り声を上げながら這い出てきた。
一見するとタコの様だが、その吸盤に当たるところには魔法の排出口が有り、その先から幾つもの魔法陣が浮かんでいた。だが、優月はその数重にも渡る数の魔法陣にも少しの怯えも見せず、自身の白銀の起動魔操兵器と正也が呼ぶ戦闘衣を使ってタコ型の魔物へと跳躍した。
「はい!・・・覇!」
「グウウウウ・・・・」
優月の気合の一閃により、威嚇の咆哮も空しく呆気なく魔素に戻って行くクリーチャー。そして、その戻った魔素を全身に浴びて魔力の回復を図る正也。
「あ~、魔素による魔力回復がこれほど気持ちいい物だったとは・・・、これは癖になりそうだね。・・・っと、カードで確認をっと。」
そうして、再びカードを呼び出す。
「カードオープン!」
そして、カードを見た結果・・・
「へ~、あの一体で優月を召喚した魔力の凡そ1パーセントが回復した事になるのか。・・ああ、そう言えば優月?」
「はい?なんでしょう。」
「今のこの世界って最大回復量を超えた場合は魔素はどうなるの?」
「その場合は余分な魔素が体内に蓄積され、ある一定の段階を超えると最大魔力量が増加します。これは一般に壁を越えたとか、一皮むけたとか、言った物ですね。しかし、その一定の量が分からないので、皆危ない橋を渡るより、鍛練によって魔力量を少しずつ伸ばすやり方を取ります。普通の鍛練でも本当に僅かですが、魔力量は伸びますから。・・・また来ましたね。では、・・・覇!」
そうして、またしても一太刀の元に魔物を斬り伏せる優月。・・・すると・・・。
パチパチパチ・・・
何処からか拍手が聞こえる。なので、発生源を見てみると・・・、優月とは違うタイプの美少女がいた。青髪に碧眼で、髪は短めに揃えられ、口にはマスクをしているので詳しくは分からないが、目元を見るだけでもボーイッシュな同性に人気が有りそうな顔だ。
その少女が話しかけてきた。
「やあ、そこの女の子、君は大したものだね?ココのクリーチャーは毒の海の影響もあってなかなかにしぶといんだが、ああもアッサリ退治できるとは・・。その魔甲衣のお蔭かな?ああ、そこの君?さっきの様に吸収をしたらいい。待ってて上げるよ。」
「・・・ああ、すみません。少々お待ちを・・・」
そう言って、一言断りを入れてから、魔素の吸収を図る。その光景を見ていた少女が自己紹介を始めたので、黙った聞くことにする二人。
「初めまして、私はこの先の【クリーチャー討伐者魔法機甲戦闘員育成学園】、通称魔甲学園の生徒で、2年の戦闘科に属している者だ。名を水島あかねと言う。君らは見たとこ同じか少し年下の様だが、名前を聞かせて貰っても良いかな?もし、15歳以下なら、中等部3年からの編入になるが16歳なら、二日後が丁度高等部の入学式だから、良ければ説明させて貰うが?」
少女が言った内容に優月が少し思案して、尋ねる。
「あのー、この近くで佐藤家という刀術の大家が有る筈ですが、知りませんか?」
「佐藤家?・・・あ!もしかして、君は佐藤源内さんの行方不明になっていた娘さんか?・・・一応名前を聞こうか?・・ああ、勘違いするなよ?これは少し特殊な事情があってな、佐藤家の娘を名乗る物が現れた時に、その財力を掠め取る輩の可能性を考慮した結果、詳しい娘の詳細を明かしてなのだ。先ずは名前、歳居なくなった時の年齢。良く遊んでいた場所。属性と刀術の階級。それらを正確に答えられた者を娘であると認めると言う源内さんの言葉だ。・・流石に今頃聞くとは思わなかったがな?」
イキナリ苦笑したあかねは少し言いよどんだ。その様子を不審に思ったのは魔素の吸収を終えた正也だ。正也は優月の家族が何かしらのトラブルに巻き込まれたのかと危惧し、率直に聞く。
「今のはどういう意味ですか?・・ああ、僕は天野正也。残念ながら親は既にいません。特殊な事情により今はこの・・・僕から言って良いのか解かりませんが、佐藤優月さんに護衛をして貰いながら各地を放浪してます。後、護衛とは言いましたが、僕自身も多少は魔法が使えますから、念の為ですね?僕の本業はこういった道具を創る事ですから。」
そう言いながら、正也はお手製の魔法筒を出して、魔力を篭めた。・・・すると、筒から水の固形化された物が出てきた。
「この様に、僕は魔力を物に通すことによって現象を操る物を作ることが出来ます。まだ知識が少ないので勉強が必要ですが、この世界の現象をより深く理解できれば、より良い物が作れますよ。」
正也は言い終ると、筒をポケットに仕舞ってからあかねの言葉を待った。
そして、正也の言葉に嬉しそうな顔になったあかねは、早速交渉に入った。
「それはいい、今の魔甲学園は物作りがメインに出来る者は少ないんだ。何故か皆実力を優先する様になってしまって、武器のありがたみを忘れてしまっている。クリーチャーが居る事から仕方ない事ではあるがな?だから、君らさえよければ私の通っている魔甲学園の開発科に入ってくれ。変な事を云う奴が居れば、私の名を出せば多くの者は口を閉ざすだろう。」
「そのいい方だと、反発する奴も居るってこと?僕は優月さんと一緒に行動出来るなら良いですけど、それまで何か言われると困りますよ?」
正也はあかねの言い方に疑問を感じ、率直に聞いた。そして、あかねの答えは・・・
「ああ、学園側に理由を話せば大丈夫だ。そんなに学園から離れていない寮か、ある条件を満たせる実力者にのみ配られる個人邸宅のカギを渡して貰える。今みた限りでは、優月君は十分にその条件を満たしているようだ。・・後は実際に学園長に話せばいいだろう。」
そこまで言うと、あかねは思い出したかのように最初の話題を切り出した。
「それでは、優月君の名前は有ってるし、他の事柄を聞こうか?もし本当に源内さんの娘なら、直ぐにでも源内さんに会わせて上げたい。」
「ええ、それは構いません。それに私も、もし父が未だ生きているなら挨拶位はしておかないといけませんから。・・・では、お話しましょう。」
それから、属性や刀術の階級を話していくうちにあかねも嬉しげな顔を浮かべだした。・・・それから、一つ頷き顔を真面目な物に変えてから
「よし、完璧な解答だ。殆ど知られていない家の遊び場まで答えられては疑う余地もない。それでは、ここから陸路を通ってでは少し遠いから、一旦地下の大空洞に入って学園の生徒会長に佐藤家の直通転移用ゲートを開いてもらってから、源内さんを訪ねよう。・・あ、そう言えば」
あかねがまた言い忘れたと言った顔になった。
「今の佐藤家は主にこの関東全域の大空洞内の覇権を二分する立場にいるから、当然場所も大空洞内だ。しかも、セキュリティーポリスも配置されているから、家族に会うのも簡単な方法では会えない。その上君が行方不明になってからは源内さんが道場などの戦闘員育成機関、小母さんが研究機関を仕切るようになったから、その関連は全ての面でそれぞれに指揮権が移っている。そのお蔭で、関東のみでいうならこの東京都の大空洞の研究機関が一番良い物を作っているというのもあるがな?特に凄いのは、佐藤家が関わっている刀関連の物だな。・・そうだ、これを見せようか。」
そういって、あかねが正也の出した物とは違う、指輪式の道具を見せる。
「これは佐藤家のSMA開発所が開発した、魔力を流すことで光の刀身が現れ、魔力の強弱で自在に長さが変わる物だ。今の刀剣売買関連の業者はこれを全国展開している程の売れ筋商品だ。まあ、その所為で開発部が有頂天になっている節もあるがな?とはいえ、私もその恩恵に預かっている身の上としては文句も言えんのが実情だ。」
そのあかねの答えを聞いた正也は、先ほどの話と辻褄が合わないと説明を求めた。
「ああ、だから・だよ。クリーチャー自体を倒せるのは自分なのだから、その武器を作っている者は、自分が居なければ意味は無い奴らだと、過激な思想を持つ者もいてな?先ほどの覇権を二分すると言った、もう片方は、自らの実力を頼りに戦う者たちの大家で、主に魔法陣の開発、研究を行っている所だ。名前は海藤家。私の通う、君たちも通う事になると思う、魔甲学園のオカルト研究室の部長が、その海藤家の長男で海藤信二。一つ下で、私と同級生の副部長が長女の海藤環。・・・さて、後の説明は向こうで、という事で先ずは大空洞に入る階段のある、教会を見つけようか?捜索中に戦闘に成ってもいけないから、正也君と優月君でペア。私は一人で捜索する。・・もともと、この辺りに空間の歪が発生したと言う情報を受けて、ここらの家の者で予定の無かった私が調査に来てたんだ。だから、私は一人で十分だ。先ほど言った個人の邸宅を持てる者に私も含まれていてな?ここらが私の家の近くなんだ。・・じゃあ、行こうか。」
あかねの長い説明も終わりという事で、三人はそれぞれに分かれて捜索に行った。・・・が。
「そう言えば、どんな教会かも連絡手段も聞いて無いな・・どうする?優月。このままどっか行って楽しいことしようか?」
「・・嬉しい申し出ですけど、誰が見ているか分からない所でするのは遠慮します。・・流石に恥ずかしいです。それに、ほら、何か変なクリーチャーが来ましたよ?・・・早速狩ってきますから、後で来て下さいね?」
「了解~」
正也がそう言ったのを確認して、優月は己の靴に風の属性を纏わせ、ゆっくりと上昇すると、一直線に鳥形のクリーチャーの方へ向かった。
それから正也が着くと、既にクリーチャーは倒せれていて、魔素に還っている最中だった。
正也が到着したのを気付いた優月は、申し訳なさそうにして
「すみません、正也さんの力になれると思うと張り切り過ぎちゃって・・・。つい正也さんが到着する前に倒しちゃいました。・・・ささ、どうぞ。」
「はは・・そんなに慌てなくてもいいよ。どうせもう少しでこの魔素の性質も掴める所だから。後は魔力の吸収回路をどうするかと、さっきのあかねさんの魔甲衣って言う戦闘衣の事だね。優月に与えているその起動魔操兵器の事を見ても驚かなかったって事は、同じような戦闘衣が存在するって事だよ。もし、それが存在し、魔力の吸収回路を組み込めれば、クリーチャー?相手にも一般人が戦えるようになると思う。・・・まあ、これからの研究次第だけどね?」
そう言いながらも、着々と魔素を吸収し、その魔力を蓄積していく正也。
その様子を、教会を見つけてから正也たちを探し当て、遠くから見ていたあかねが姿を見せる。
「やあ、君らも運が悪いのかいいのか分からんな?普通なら、幾ら地上でもここまで頻繁に襲われるのは珍しいぞ?君らの魔力が異様に高いのが理由かな?そこの優月君も相当だが、正也君に至っては私の魔力測定眼鏡で測定し切れん位にある。それだけの魔力が有りながら、優月君に護衛をして貰う理由が私は気になるがね?」
あかねはそう言って、正也を値踏みするように見つめた。
流石に正也も自らの特殊な魔法に関係する重要な事は隠したうえで、納得のいく説明をすることにした。
「僕は詳しくは言えませんが、特殊な魔法の所為で自身が自由に使える魔法が無属性の物しかないのです。あ、勘違いしないで欲しいのは、先ほど見せた僕がMBIや魔道具と呼んでいる物を使えば、それぞれに違った効果を得られるので、問題は有りません。これらを使うのに必要なのは魔力のみですから。・・あ、勿論優月も使っていますが、彼女は自身でも魔法陣を使っての戦闘も可能ですよ?ただし、魔道具を使った方が威力が段違いだって話なだけです。・・ね?」
「ええ。私の属性はあかねさんも聞いてるみたいですが、ある事情により、更に光と毒が加わってます。なので、並のクリーチャーなら、魔道具は要らないのですが、念には念をというのと、正也さんに魔道具を使っての戦闘をなるべくして、研究に使わせてくれと言われているので、普段からも魔道具を使ってます。・・これ位でしょうか?」
話を終えた優月が正也に確認を取り
「だね。」
と、賛同する正也。その様子にあかねも話を切り替える。
「研究と言うのは気になるな。場合によっては小母さんに研究機関の一つを譲って貰えるように優月君が強請ればいいのじゃないか?行方不明になって、一番心配していたのも小母さんだったからな。心配の気持ちを抑えるように研究に没頭して産まれたのが今の魔法機甲の原型だ。その研究の成果は今では毒の海を越え、海外の学園でも使われて、大空洞での世界大戦が行われるくらいだ。その大会の景品が、新作の売買権や値段の交渉権とかがあるから、もっぱらの競争は学園間や企業間だ。・・っと、また話が長くなったな。こんな事は学園長や小母さんに説明して貰えばより多くの情報が得られるから、私では役不足だった。では、行くか。教会はこっちだ。」
そうして、あかねの案内に従ってさびれた教会を訪れる正也たちであった。