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半年ほどの憂鬱。
消えていった影。
すべては、何事もなかったように動いている。
あの日、電話を受け取った僕は、自分の匂いの染みついた布団にただくるまっていた。
それから、おもむろに起きあがると、同級生の彼女の家に出掛け、一万円を渡して立ち去った。
何も変わらない、と彼女は言った。
確かにそうなのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。ただ、ぼおっとした頭で彼女を励ます。
そして、静かに列車は故郷へ帰っていった。
「結婚なんてしたくねぇなぁ」
京都の町に雪が降る。
「そう?」
ちょっと淋しそうに彼女はつぶやく。
誰かのため、と考えれば生きる意味だってあるに違いない。
交差点からふと見上げると、双ヶ岡にはそれでも緑が残っていた。




