4日目~3
僕は旦那様の部屋へと逃げ込んだ。
扉の向こうから、アンのものだろう甲高い笑い声が聞こえてくる。
どうやら僕を探しているらしい。
だが、彼女が嫌いだというこの部屋に隠れているとは、思っていないようだった。
「――え……この部屋……」
ランプを掲げ、辺りを見回して息をのむ。
そこは旦那様の部屋と呼ぶには、あまりにも殺風景な場所だった。
夫人の部屋とは真逆で、ソファもテーブルも、ベッドさえ置かれていない。
さらに驚いたのは、この部屋には窓さえないことだ。
そのせいか、他の部屋とは違う、錆びた鉄を舐めたような臭いが鼻を突く。
もしかして部屋を間違えたのかと焦ったが、探索していない部屋は、残すところ二階奥の左側通路にあったこの一室のみ。
つまり、ここが旦那様の部屋であることは間違いなかった。
綺麗に板がはめ込まれた窓は、まるでびくともせず、外れそうにない。
となれば脱出方法は、このままやり過ごし、機会をうかがって玄関から出るしかない。
「……それしかないよな」
上手く脱出できたら、もうこんな屋敷には一分一秒もいたくない。
歩いてでも町に帰って、この恐ろしい依頼をすぐに断り、道具も返そう。
そして、あったことすべて忘れてしまいたい……。
「……本当に、それでいいのかな……?」
もし僕がこの屋敷から逃げ出したら、彼女は再び、この屋敷で独りぼっちになってしまうんじゃないか。
正体が何者であろうと、奇妙な出会いでできた、僕の“友だち”だったはずなのに。
僕は再び、夫人の日記を思い出した。
『それと万が一の事態が起きた場合のために、あの子との決別する方法――あの子を成仏させられる方法を書き残しておく』
アンを成仏させる方法が、救う方法がある。
だとしたら僕は、どうすればいいんだ――。
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・早く町に帰って全て忘れたい―――4日目~5へと続きます。
・悪霊になっているアンを祓う―――4日目~5へと続きます。
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